第31回映画祭TAMA CINEMA FORUM

プログラム紹介

【C-8】90年代以降の新潮流 ―是枝裕和監督・西川美和監督―

11/16[火] ベルブホール

チケット料金

一般
当日のみ 800円 /

幻の光

  • 1995年/テレビマンユニオン製作/シネカノン配給/110分
  • 監督=是枝裕和
  • 原作=宮本輝
  • 脚本=荻田芳久
  • 撮影=中堀正夫
  • 音楽=陳明章
  • 美術=部谷京子
  • 出演=江角マキコ、内藤剛志、浅野忠信、柏山剛毅、渡辺奈臣、木内みどり、柄本明、桜むつ子、赤井英和、寺田農、大杉漣

ストーリー

幼い時に祖母の失踪を防げなかったことを悔いる女性(江角)が、幸せな結婚生活の最中に突然、夫に自殺されてしまう。数年後、幼子を連れて能登の一家に嫁いだ彼女は、新しい家族と平穏で幸福な日々を過ごすが、かつて愛する人に去られた心の傷が彼女の心を苛んでいく……。

コメント

是枝裕和監督の劇場映画デビュー作。

裕福ではないが愛のある生活を送っていた女が、夫の自死により茫然自失となり、何に傷ついているかもわからないまま乳飲み子を抱えてゆるやかな状況の変化に流されていく。あれだけ想いを言葉や行動で伝え合い、わかり合っていたはずなのにどうして突然いなくなってしまったのか。そんな疑問を抱いたまま尼崎から輪島に移り住み、新しい夫と子どもとの生活のなかでありのままの幸せを受け入れられずに過ごしていく様子がとても自然に描かれていた。

序盤で隣家のラジオについて主人公と前夫が話すシーンと、最後の海辺で後夫が「幻の光」について語るシーンが対応しているような気がして印象に残った。そして自分を取り戻していく主人公。そうそう、心の傷は必ずしも時間をかけて少しずつ癒えるものじゃなくて、謎が解けるときみたいにあるタイミングが来たら一気に回復することもあるんだよなあ。(理)

ゆれる

  • 2006年/「ゆれる」製作委員会製作/シネカノン配給/119分
  • 監督・脚本=西川美和
  • 撮影=高瀬比呂志
  • 音楽=カリフラワーズ
  • 美術=三ツ松けいこ
  • 出演=オダギリジョー、香川照之、伊武雅刀、新井浩文、真木よう子、蟹江敬三、木村祐一、ピエール瀧、田口トモロヲ

ストーリー

母の一周忌で故郷の実家に帰った写真家(オダギリ)が、恋人だった幼馴染と兄(香川)の親しい様子を見て、兄に隠れて彼女を誘う。翌日、兄と彼女と一緒に渓谷へ出かけるが、彼女がつり橋から転落し、一緒にいた兄は裁判にかけられる……。事故か事件か、主人公は目撃したのか、真実は何か、多くの疑問に重ねて、兄弟の心理的葛藤が交錯する緊張感に満ちた心理劇。

コメント

今年公開された『すばらしき世界』にて、服役を終えた男がカタギとヤクザの狭間で揺れ動く姿を観て、まず思い浮かべたのが同じ西川美和監督・脚本の『ゆれる』だった。公開当時は素直にオダギリジョー演じる弟の、罪悪感から逃れるために真実から目を背けながら行動する姿に感情移入してげんなりしたものだが(ここだけでも二重構造になっていてすごい!)、あらためて観ると香川照之演じる兄の気持ちが身に染みるほど理解できるようになっていて驚いた。容姿や性格に恵まれず、誰にでもできるような仕事をこなす単調な毎日のなかでふと魔が差す瞬間は確かにある。そして目の前で起きた事件が直視できないほど信じがたい不幸だったとしても、正否や真偽にかかわらず日常の地獄から抜け出す突破口に見えてきてしまう心境の変化も、恐ろしいと思う一方でうなずけてしまう。(理)

プログラム一覧

前田弘二監督、森直人氏(映画評論家)
土井裕泰監督、那須千里氏(映画評論家)
城定秀夫監督、今泉力哉監督、みらん氏(ミュージシャン)、森直人氏(映画評論家)
今泉力哉監督、城定秀夫監督、LIGHTERS(ミュージシャン)、森直人氏(映画評論家)
切通理作氏(文筆家)、橋場万里子氏(多摩市文化振興財団学芸員)、鳥居俊平太氏(たまロケーションサービス副代表)
松本壮史監督、祷キララ氏
小林えみ氏(マルジナリア書店、よはく舎代表)、落合加依子氏(小鳥書房 店主/代表)
日向史有監督
大野大輔監督、早織氏、川上なな実氏、濱正悟氏、西山小雨氏
岨手由貴子監督、山内マリコ氏(作家)、西森路代氏(ライター)
山崎まどか氏(コラムニスト)、児玉美月氏(映画執筆家)、ゆっきゅん氏(歌手)
団地団(大山顕氏、佐藤大氏、稲田豊史氏、速水健朗氏、妹尾朝子氏、山内マリコ氏)