開催日:2014年11月22日(土)
会場:パルテノン多摩 大ホール
授賞式上映作品(上映順):
『晴天の霹靂』『ぼくたちの家族』『野のなななのか』

授賞式には、大林宣彦監督、石井裕也監督、妻夫木聡さん、大泉洋さん、池脇千鶴さん、劇団ひとり監督、坂本あゆみ監督、菅田将暉さん、太賀さん、能年玲奈さん、門脇麦さん、蔦哲一朗監督、武田玲奈さんが登壇。二階堂ふみさんはビデオメッセージで参加し、別日のプログラムに登壇されました。

第6回TAMA映画賞授賞式を、受賞者のコメントから振り返りましょう。大林宣彦監督は、「市民映画が、市民の皆さんに支えられたこのTAMA映画祭で最優秀賞をいただいた。里と里とが結びつくということを本当に嬉しく思う」と、映画を支える芦別と多摩のボランティアに触れ、「政治や経済は競争社会だから戦争に結びつき易い。しかし、芸術はどんなに違っていても共存する。芸術が政治・経済と三位一体となって、日本の平和にお役に立ちたい」との想いを語りました。

石井裕也監督は、キャスティングについて「最初から家族に見えたし、4人の芝居を見ているのが本当に楽しかった」と振り返りました。

大泉洋さんと妻夫木聡さんに、劇団ひとり監督も加わっての絶妙なやりとりも。大泉洋さんが「コメディー俳優へと階段を駆け上がった」という受賞理由について「コメディー俳優として固まったつもりはなかったんですけれど……」とコメントすると、劇団ひとり監督が「最優秀男優賞のわりには軽いあいさつですね。そりゃコメディー俳優って言われますよ」とカットイン。直後に登壇した妻夫木聡さんは「大泉さんの後はやりづらいですね」と苦笑。『清須会議』『ジャッジ!』で魅せたコメディーセンスが話題になると、「コメディーとしては大泉さんにはかないません」と発言。それを聞いて頭を抱える大泉洋さんの姿に、客席から大歓声が上がりました。

池脇千鶴さんが少数精鋭の製作陣をねぎらうと、菅田将暉さんは撮影現場での池脇さんについて「スタッフ、キャストみんなのボス」と話し、おんぶさせられたというエピソードを暴露。苦笑いの池脇さんも「いい舎弟です」切り返し、会場も沸きました。

太賀さんは「ただやみくもにやって来たなかでこの賞を頂けたのは本当に嬉しい」とコメント。菅田将暉さんは「(プライベートでも仲のよい)太賀が受賞して本当に嬉しい」と話すと、会場から大きな拍手が起こりました。門脇麦さんは、「『愛の渦』で役が自分に務まるのか、お正月はずっと悩んでいました」と当時の心境を振り返り、能年玲奈さんは「みなさんが観てくださったおかげで、私がこうして賞をいただけた」と感謝を述べました。

坂本あゆみ監督は、「どんな映画祭にも引っかからずに落ち込んだ時期もあったが、(かつて『蝶々』という別作品がTAMA NEW WAVE ある視点部門にて上映されるなどして)素晴らしい作品だと言ってもらえたことが、映画を諦めそうになった時にも励みになりました」としみじみ語りました。蔦哲一朗監督は、「自主製作のこの映画を選んでいただいた多摩のみなさんが物好きでよかった」と会場を和ませました。

TAMA映画賞らしいフレッシュな方々にご登壇いただき、大盛況のうちに幕を閉じた第6回TAMA映画賞授賞式でした。

ギャラリー
受賞者・受賞理由

最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『野のなななのか』
大林宣彦監督、及びスタッフ・キャスト一同

3.11以後、社会が軋みをたてて揺れ動くなか、戦争とそれに翻弄された人々を通して、平和への強い願いと時空を超えた美しい愛の物語をスクリーンに刻み込むような手法で描き、確固とした決意をもって未来への道を示したことに敬意を表して。

『ぼくたちの家族』
石井裕也監督、及びスタッフ・キャスト一同

一見、平穏で幸せそうな家庭に内在する不協和音や愛だけでは解決し得ない問題など、想像だにしなかった現実の苦さに直面し、それでもなお家族がそれを乗り越えていくなかで生まれた強い絆が、暗闇の中の希望として強く胸に響いた。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

妻夫木聡
『ぼくたちの家族』『清須会議』『ジャッジ!』『小さいおうち』『渇き。』『STAND BY ME ドラえもん』『舞妓はレディ』

『ぼくたちの家族』において、この家族の長男のごとく周囲の登場人物の役割・存在を受け止め、それを際立たせ輝かせるとともに、困難に愚直に立ち向かいながら成長していく姿を体温を持って演じ、作品に厚みを与えた。

大泉洋
『青天の霹靂』『清須会議』

『青天の霹靂』では屈折した性格でありながらも誰もが親しみを覚える主人公を、『清須会議』では天下人の野望を抱く天性のひとたらし秀吉を演じきり、幅のある役柄のなかで人情喜劇を演じる当代きってのコメディ俳優へと階段を駆け上がった。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

二階堂ふみ
『私の男』『ほとりの朔子』『渇き。』『四十九日のレシピ』

ある時は瑞々しい少女、ある時は危うげで魅惑的な女性へと変貌し、女性の持つさまざまな側面を表現する自在な演技力とスクリーンでの存在感に圧倒させられた。

池脇千鶴
『そこのみにて光輝く』『潔く柔く』『くじけないで』『神様のカルテ2』

『そこのみにて光輝く』において、自分のおかれた環境から生じる絶望感や倦怠感を背中で物言うように発散させながらも、時として無性に甘くそして優しい、情愛の深い女性像を見事に体現した。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

劇団ひとり監督
『青天の霹靂』

お笑い芸人出身ならではの笑いをはさみつつ、大泉洋がノーカットで披露したマジックの鮮やかさなど、画面の隅々までこだわる監督のあくなき探求が、誰もが感情移入できるウェルメイドの人情劇を誕生させた。次回作を観たいと思わせる魅力に溢れている。

坂本あゆみ監督
『FORMA』

誰もが起こし得る些細な罪悪や人間の性を描き出す繊細な表現力と、独創的な手法で想像力をかき立て観客を惹き付ける手腕は、世界に通じる力強い作家性を感じさせる。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

菅田将暉
『そこのみにて光輝く』『男子高校生の日常』『陽だまりの彼女』『闇金ウシジマくん Part2』

どの役を演じるときも、生い立ちや生活感、長所・短所や生き様までも丸ごと飲み込んだように全身全霊で立ち向かい、鮮烈に演じきる実力と勢いに目を見張らされた。

太賀
『ほとりの朔子』『男子高校生の日常』『人狼ゲーム』『MONSTERZ モンスターズ』『私の男』『スイートプールサイド』

内面から役を作りこむことにより役の振れ幅をきめ細かく演じ分け、周囲の俳優と化学反応を起こしながら作品の空気感を醸成できる資質は、若くして名優の佇まいを感じさせる。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

能年玲奈
『ホットロード』

純粋さ、切なさ、切実さといった少女の心情を黒い瞳の奥の輝きで表現し、80年代の古典的なラブストーリーを現代に甦らせた圧倒的な存在感は、新たな時代の映画女優誕生を感じさせる。

門脇麦
『愛の渦』『闇金ウシジマくん Part2』

おとなしくおどおどしている女性像が相応しいのかと思いきや、一転してみせる肝の据わった攻めの演技が鮮やかで、これまでにないタイプの女優としてどのようなスタイルを構築していくのか今後の活躍が楽しみでならない。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

『祖谷物語 ~おくのひと~』において、四季折々の祖谷の大自然に真っ向から挑み、重厚な人間ドラマを構築させた映画にかける情熱に対して
蔦哲一朗監督、及びスタッフ・キャスト一同

日本三大秘境といわれる祖谷の厳しい大自然のなかで営む生活を、1年間かけて撮影したその情熱と真に迫る映像の迫力は、都会の便利な生活に慣れきってしまった現代人に、人間としての生き方を考え直す機会を与えてくれた。