上映作品

監督・市川崑:日本映画の刷新に挑み続けた才気あふれる名作 ーVol.1ー
-文化庁/東京国立近代美術館フィルムセンター 平成25年度優秀映画鑑賞推進事業-

紫煙のむこうに時代が見える――市川崑
映画にTVにそのジャンルは留まることを知らない映像の魔術師。常に時代に添いながら超越するメタファーを提示し続けた才能を今TAMAで再び。

11月27日(水) ベルブホール 第1部

10:00〜11:44
野火
12:20〜15:09
東京オリンピック

チケット料金

  • 当日のみ800円

野火

  • 1959年/大映製作・配給/1時間45分
  • 監督=市川崑
  • 脚本=和田夏十
  • 原作=大岡昇平
  • 音楽=芥川也寸志
  • 撮影=小林節雄
  • 出演=船越英二、ミッキーカーチス、滝沢修、浜口喜博、石黒達也、稲葉義男

コメント

大岡昇平の原作。フィリピン戦線、レイテ島。米軍の攻撃は日本軍をじりじりと山中に追い込んでいく。補給路を断たれ食糧調達の出来ない病兵の主人公田村(船越)は、すがるべき病院からも追い出され一人荒野に放逐される。生への執着と孤独のなかで彼は神と語らいだす。しかし眼前の光景は……。同胞を殺し、「猿の肉」を食べて生き延びようとする戦友。自らも「猿の肉」を食べようとする田村は……。“この世界は神の怒りの跡なのか”。

米軍砲火の極限下で徐々に人の皮を剥ぎ取られていく兵達を船越英二、ミッキーカーチスたちが、時に飄々と時に鬼気迫りながら演じていく。生きることは罪なのか。眼前に繰り広げられる地獄絵図のなか、越えてはならない境界線を易々と越えていく人間とは。神に答えを求めようと苦悩する田村を冷たく突き放す神とは。原作の神との葛藤を極力廃し、戦場の日常を見る者の判断にまかせよとばかり、市川崑の怜悧な映像が続く。「死」とは、「生」とは、そして命を紡ぐとは。未だ殺戮の時代が続き、戦前の予感さえ漂う「今」を54年前の作品が撃つ。(竹)

東京オリンピック

  • 1965年/東京オリンピック映画協会製作/東宝配給/2時間50分
  • 監督・脚本=市川崑
  • プロデューサー=田口助太郎
  • 企画・製作=オリンピック東京大会組織委員会
  • 脚本=和田夏十、白坂依志夫、谷川俊太郎
  • 撮影=林田重男、宮川一夫、長野重一、中村謹司、田中正
  • 音楽=黛敏郎
  • 演奏=読売日本交響楽団
  • ナレーター=三國一朗

コメント

2020年の夏季五輪の開催地が東京に決定した。国連加盟国数は193ヵ国にのぼり、そのなかの多数の国が五輪開催を切望している。そんななかでの東京再開催はまさしく何十年に一度という非常に稀有な決定である。そして今から49年前の1964年、日本で初めて開催されたオリンピックの記録映画として作られたものが当作品である。

テレビで当時の映像を目にする機会があっても白黒ばかりのなか、この作品は鮮明なカラーで当時の雰囲気を存分に映し出している。それだけでも一見の価値はあろう。また記録映画であるものの単に競技を淡々と流すのみではなく、突然のスローモーションで選手の息遣いや叫び声を、緊張や迫力を、より明確にしてみせる。1600m/m超望遠レンズだからこそ捉えることができた興味深いカット。随所に挟み込まれた様々な仕掛け。観る者を引き付けて止まない。過去のノスタルジーに浸りつつ、7年後に思いを馳せるには最適な作品である。(徳)

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