バリアフリー 介護新時代新たなる第1歩

11月23日 「バリアフリー 介護新時代新たなる第1歩」 (ベルブホール)

●Time Table●
11:00−12:33
13:10−14:50
15:10−16:00
16:20−17:44
まひるのほし
えんとこ
講演 伊勢真一監督
青葉のころ よいお年を2

まひるのほし
1998年/シグロ/16mm/1時間33分
 
製作=山上徹二郎、庄幸四郎
監督=佐藤真
撮影監督=田島征三
撮影=大津幸四郎
録音=久保田幸夫
出演=舛次崇、西尾繁、伊藤喜彦
 
[コメント]
 ドキュメンタリーとフィクションのボーダーレス化が言われて久しい。こうした傾向は、フィクションにもドキュメンタリーにも、思いがけず豊かな実りをもたらした。ドキュメンタリーに作家性を刻印するという意味で、そのボーダーレス化による豊穰を体現した一例が、この『まひるのほし』だろう。知的障害を持つ7人のアーティストを追っていくうちに、監督である佐藤真は彼らの創造性に拮抗するかのようにアートセンスを引き出されていく。そのぶつかり合いがあたかもアートバトルの様相を呈して、スクリーンにほとばしる! 知的障害を持つ彼らの心の奥底に潜むカオスからストレートに(!)表出される、その絵画や陶芸などの驚くべき迫力。あたかも私たちの心のなかで渦巻いている何かを、才能に恵まれた彼らが独自の形で表現しているように思えてならない。「芸術」や「障害者芸術」といったラベル=規制の価値に捕らわれることなく、人間の命の紡ぎだす不可思議な表現行動の魅力を余すことなくみせてくれる希有な映画である。

えんとこ
1999年/『えんとこ』製作委員会、一隅社、クロスフィット/16mm/1時間40分
 
製作=山上徹二郎、庄幸四郎
監督=佐藤真
撮影監督=田島征三
撮影=大津幸四郎
録音=久保田幸夫
出演=舛次崇、西尾繁、伊藤喜彦
 
[コメント]
 えんとこ——不思議な言葉である。実はこれ、主人公の重度障害者である遠藤滋さんの生きている場所、つまり「遠藤さんの居るところ」であると同時に、「縁のある場所」ということで「えんとこ」なのである。遠藤さんは脳性まひの障害を持って生まれたが、手でも足でも使えるものは何でも使って、あらゆることに積極的に取り組み、大学時代はデモにも参加、卒業後は養護学校の教壇に立つ(東京都で採用された初めての重度障害者の職員である)。そのかたわら福祉の充実を求めてさまざまな活動を行なっていたが、障害が次第に重くなり、ついに寝たきりの状態になってしまう。それでも施設には入らず自立した生活を送りたいと願い、1日24時間、三交代での介護ネットワークを自ら組織してしまうのだ。なんという行動力、なんという精神力だろうか。そんな遠藤さんに接する介護ネットワークの若者たちは延べ1000人を超えるという。切実な介護の必要のもと、えんとこに集う若者たちは何をみつけたのだろう。……どうにも彼らは皆、とても楽しそうなのだ。秘密は遠藤さんにある。「自らのありのままの命を祝福すると決めて生きる。たとえそれがどんな姿をしていようとも。

青葉のころ よいお年を2
1999年/大宮映像製作所/16mm/1時間24分
 
監督=宮崎政記
企画・製作=大宮浩一
脚本=北里宇一郎
撮影=松尾研一
録音=近藤洋之
音楽=石垣哲
 
[コメント]
 1996年、無認可の民間福祉施設「元気な亀さん」を1年にわたって追いかけたドキュメンタリー『よいお年を』の続編である本作は、「元気な亀さん」で働く20代のヘルパーたちが主人公だ。核家族のなかで育った若者たちが痴呆性老人と出会い、共に暮らすなかで何を発見し何を学んでいくのか、丹念なインタビューとともにみつめ、介護の現場に生きる彼らの肖像を明らかにしようとする。また、やむにやまれぬ思いから、痴呆性老人と乳幼児、障害のある若者が共に暮らす施設を始めた瀧本さん夫妻の生の声は、福祉の現場が現在どのような状況にあるのかをも教えてくれる。日常的に子供たちと接することで老人が明るさを取り戻し、自閉症気味だった子供たちがお年寄りに心を開く……そうした現実から生まれた施設でありながら、現行の福祉行政の枠から大きくはずれているがために公的な援助はいっさいないという。まさしく「日々これ格闘」と言っても過言ではない。
 人は皆どこかで、誰かの役に立ちたいと願っている。私たちは誰もが1人では生きていけないのだから——。共に生きることの大切さをあらためて考させてくれるとともに、私たち1人1人が声を上げていかなければ介護にかかわる行政システムは改善されないという事実に切実な思いを抱かせられる。
 ちなみに、住民が福祉行政に本格的に参加した新潟県鷹巣町の足跡を追ったドキュメンタリー『問題は これから です』(羽田澄子監督)は、行政システムをどのように機能させていくかの希有なケーススタディとして必見の作品と言えよう。