ロマンティック・アート・フィルム '99

11月26日 「ロマンティック・アート・フィルム '99」 (やまばとホール)

●Time Table●
14:00−14:10
14:10−16:10
16:15−17:53
18:20−20:14
オープニング
鳩の翼
フェアリーテイル
セレブリティ

鳩の翼
WING OF THE DOVE
1997年/イギリス/ルネッサンス・ピクチャーズ製作/エース・ピクチャーズ配給/1時間41分
 
監督=イアン・ソフトリー
原作=ヘンリー・ジェイムズ
脚色=ホセイン・アミニ
撮影=エドゥアルド・セラ
音楽=エド・ジアーマー
美術=ジョン・バード
出演=ヘレナ・ボナム=カーター、ライナス・ローチ、アリソン・エリオット、シャーロット・ランプリング
 
[ストーリー]
 1910年、ロンドンの地下鉄に一人の若い女が乗り込んだ。若い男が女に席を譲る。赤の他人に見えた男と女は駅のエレベーターで二人になると抱き合った。女の名はケイト・クロイ(H・B・カーター)、男の名はマートン・デンジャー(L・ローチ)。
 母の死後、上流階級の伯母モード(S・ランプリング)に養われ、身分相応の相手と結婚さえすれば生活を保障されるケイトだが、貧しいマートンを愛していた。ロンドンの社交界にニューヨークからミリー・シール(A・エリオット)というアメリカ娘が来た。ミリーは巨万の富を持つ孤児だった。二人はお互いにひかれるものを感じる。伯母のまわりには金持ちの女性との結婚をもくろむ没落貴族のマーク卿がいた。彼はケイトにミリーは重病でもう長くはない彼女と結婚して遺産と手に入れたら、ケイトと結婚しようと企みを持ちかける。ミリーとケイトとマートンはベニスに旅をするこの時、ミリーとマートンの仲にケイトは嫉妬し、マーク卿が企てた計画を自分の計画に置き換えて実行する。
 ケイトはミリーに「私はマートンを愛してない」と告げマートンを残してロンドンに帰る。ミリーは旅先で死ぬ。ケイトとマートンの企みを知りながら、ミリ−はマートンに遺産を分け与えていたのだが……。
 
[コメント]
 人間の純粋な愛はきれいです。お金では買えないものが、人間の心なのです。現在は見えるものへの価値観しか教えられていません。恋愛も、結婚も打算的なものを求めているような気がします。きれいな心の動きに目を止めてみませんか。何か大切な見えてくるかもしれません。
 出演者のしっかりした演技、そして衣裳に感動しました。若い女性にぜひお勧めしたい作品です。 (紀)

フェアリーティル
FAIRY TALE
1998年/イギリス/アイコン・エンタテインメント・インターナショナル製作/パイオニアLDC配給/1時間38分
 
監督=チャールズ・スターリッジ
脚本=アーニー・コントレラス
撮影=マイケル・コールター
音楽=ズビグニエフ・プレイスネル
出演=フロレンス・ハース、エリザベス・アール、ピーター・オトゥール、ハーヴェイ・カイテル
 
[ストーリー]
 第1次大戦下のイギリス。8歳の少女フランシス(E・アール)は父が戦地で行方不明となり、ひとりヨークシャーにある12歳の従姉妹エルシー(F・ハース)の家にやって来る。ある日二人は、秘密の遊び場である小川で、美しく光る妖精を目撃する。「子供の空想だ」として大人たちは取り合わないが、少女たちが撮った写真には本当に妖精が写っていた。やがて写真はコナン・ドイル(P・オトゥール)の手を経て、世界中の注目の的になる。しかし、金儲けを企む大人たちによって、静かだった妖精の森は次第に荒らされてゆき……。
 
[コメント]
 少女たちが撮った妖精の写真により、その真偽が物議を醸し出した“コティングリー妖精事件”がこの映画のベースになっている。本来ならばインチキ臭い、単なる噂として終わりえたのかもしれないが、“名探偵シャーロック・ホームズ”でお馴染みの作者コナン・ドイルが取り上げたことにより、信憑性は否が応にも増し、世界中をも巻き込んだ一大論争となった。第1次世界大戦の暗澹とした喪失感漂わせる時代背景がそうさせたのか、人々は何かしらの希望を以ってこの話に飛びついた。
 『ナルニア国物語』や『指輪物語』といったファンタジー小説。子供の頃よくそれらの本を読んでは空想の世界に思いを馳せていたものだ。本当に妖精とかがいたらどんなにいいだろうかと思いながら。それでもいつかはそんな世界とも決別しなくてはならない時がくる。『ピーターパン』の終わりでも告げるているよう、大人になるために。映画でもフランシスがエルシーに妖精が見られなくなっても大人になりたいかと問うている。「見えなくてもいい。いつまでも忘れないから」。「大人になるって、わかるわ。自分より人の気持ちを思うことなのね」といったそのやりとりは、成長した少女たちの姿が窺える心暖まるものであった。それに対し、情けないことに自分は未だ現実逃避をするかの如く空想の世界に浸ることがある。例えば朝の通勤ラッシュのなか、どらえモンの“どこでもドア”があればもっと寝ていられるのに、とか、くだらないことで。 (齋)

セレブリティ
CELEBRITY
1998年/アメリカ/ジーン・ドゥーマニアン製作/松竹富士配給/1時間54分
 
監督・脚本=ウディ・アレン
撮影=スヴァン・ニクヴェスト
美術=サント・ロクアスト
編集=スーザン・E・モース
出演=ケネス・ブラナー、ジュディ・ディヴィス、レオナルド・ディカプリオ、メラニー・グリフィス、ウィノナ・ライダー
 
[ストーリー]
 高校の同窓会で「生き方を変える」決意をし、妻ロビン(J・デイヴィス)と離婚、自由を謳歌しつつ脚本と小説の売り込みに余念のないリー(K・ブラナー)。
 しかし、その反面セレブリティ(超有名人)たちの華やかな甘い生活のなかで、彼らのワガママに振り回されたり、女性にアプローチしては振られたりとなかなかうだつが上がらない。それでも彼は信念を貫こうと懸命に取り組むのだが……。
 
[コメント]
 〈祝! ウディ・アレン CINEMA FORUMデビュー決定!!〉
 映画祭9回目にして、彼の作品がついに登場です。1ファンとして純粋に「嬉しい」し、永い間恋焦がれてきた人にやっと逢えた時のようなトキメキを感じる。ここまで私を魅了して止まないウディワールドを片鱗でもいい、なるべく多くの人に触れて感じてもらいたい、今回は満を持した絶好のタイミングでの上映です。この機会を是非逃さないで堪能していただきたい。この作品は初めて彼の映画を観る人でも充分に楽しめる要素が満載だから。
 とにかく豪華な出演陣と、誰もが一度は覗いてみたい華やかなセレブリティたちの世界とその裏側を描いたストーリーが「売り」の作品だが、私は個人的に、主人公に扮するケネス・ブラナーの演技を「買う」。「神経質でどこか頼りないインテリ・ニューヨーカー」はウディ映画の定番の主人公で、いつもはウディ本人が演じているのだが、今回の彼の演技はまさに生き写し。観ていて違和感を感じさせない。こんな情けない主人公を通じて、人間の愚かさや優しさ、人生の悲哀や無常観、希望、素晴らしさをユーモラスかつシニカルに伝えてくれるウディ映画独特の世界観、これが私の「売り」です。オールマイティな人より、どこか頼りない危なげな人に愛着を感じる、少なくとも私はその類いの人間ですが……ハイ。そこの貴方はいかがです? (亜)