おすぎの特選映画シアター

11月23日 「おすぎの特選映画シアター」 (やまばとホール)

レオン
LEON
1994年/アメリカ/ゴーモン=レ・フィルム・テユ・ドーファン・プロダクション/日本ヘラルド映画配給/1時間51分
 
脚本・監督=リュック・ベッソン
撮影=ティエリー・アルポガスト
音楽=エリック・セラ
出演=ジャン・レノ、ゲイリー・オールドマン、ナクリー・ポートマン、ダニー・アイエロ
 
[ストーリー]
 レオン(J・レノ)は、レストランの主人トニーから仕事の依頼をうけて殺しを遂行する、NY一番の“掃除屋”。感情を排し、1日2パックの牛乳とトレーニングを欠かさず、鉢植えの観葉植物に水を与えることを楽しみにする孤独な男である。こんな完全無欠な“プロフエッショナル”のもとに、家族を虐殺された12歳の少女マチルダ(N・ポートマン)が助けを求めて逃げ込んでくる。復讐を誓い、「殺し方を教えて」と懇願するマチルダとレオンの奇妙な共同生活が始まる。いつしか父親とも恋人のそれともつかない新しい感情が芽生えてきた二人だつたが、マチルダの仇、スタンスフィールド(G・オールドマン)の魔の手が迫ってくる…。
 
[コメント]
 「ニキータ」の掃除人からイメージを膨らませていったという主人公レオン。ジャン・レノ演じる彼は冷酷非情な殺し屋の顔を持ちながら、素顔の彼は狐独と哀愁を背負い、母性本能がくすくられそうな“弱さ”すら感じられる。「ミルク」を飲み、口を半開きにして映画を観ながら、目を輝かせている彼は、まるで少年だ。そして、2000人の候補者の中から選ばれたナタリー・ポートマン演じるマチルダの生意気で、可愛いことといったら……。この二人の純粋さとその純愛に、観客の誰もが心を奪われる。ああ、成長したマチルダを前にしてドキドキするレオンが見たかった。しかし、ゲイリー・オールドマンのイカれた演技とはちゃめちゃなアクション(何で警察があんな覆面するんだ?)も面白い。そしてレストランのトニーは、いい人だという説もあるが、絶対に金を使いこんでますよね。$100はひどい。結局また独り、取り残されたマチルダは大きくなってきっと【ニキータ】みたいな殺し屋になつちゃうんだろうな……。 (真)

太陽に灼かれて
SOLEIL TROMPEUR (OUTOMLIONNYE SOLNTSEM)
1994年/ロシア・フランス合作/スタジオ・トリート+カメラ・ワン/ヘラルド・エース、日本ヘラルド映画配給/2時間16分
 
脚本・監督=ニキータ・ミハルコフ
脚本=ルスタム・イブラギムベコフ
撮影=ヴイレン・カルータ
音楽=エドワルド・アルテミエフ
出演=ニキータ・ミハルコフ、オレグ・メンシコフ、ナージャ・ミハルコフ
 
[ストーリー]
 1936年、モスクワ郊外の美しい村。ロシア革命の英雄コトフ大佐(ニキータ)は、若く美しい妻マルーシャと娘のナージャ(ナージャ)、そしてその家族らと、平和な日々を送っていた。が、ある夏の日、彼らの前に一人の男が現れ、家族に波紋を起こす。男の名はドミトリ(0・メンシコフ)。かつてマルーシヤと恋仲にあつた彼の突然の帰還に、平静を装いながらも動揺を隠せないマルーシヤ、そしてコトフ大佐。そんな彼らの思惑を知ってか知らずか、ドミトリはナージャを手懐け、一家の中核に取り入つてゆく。果たして彼の目的はマルーシャとの絆を取り戻すことなのか、それとも…。やがて夏の終わりと共に、意外な結末が訪れる。
 
[コメント]
 久しぶりに舞台を祖国ロシア、しかもスターリン圧政時代に求めたミハルコフの遅すぎた野心作。革命の英雄コトフ大佐とその一家の牧歌的ふれあいを縦糸に、コトフ大佐、そしてその妻マルーシャとそれぞれ因果関係を持つ男ドミトリの復讐劇を横糸に構成された緻密なシナリオはもとより、真夏の田園風景を見事にとらえたキャメラが、時代に翻弄される人々の悲劇をより際立たせている。
 ミハルコフは俳優としての実績が幾分あるとはいえ、今回は主役のコトフ大佐を自ら演じる熱の入れようで、しかもこの無骨な軍人役が意外にもハマっている。シュワルツェネッガーの敵役でもやれそうな、そのマッチヨぶりには驚かされるが、ときおりのぞかせるユーモアと知性が、映画作家としての繊細さを感じさせるのはご愛矯だ。彼の妻を演じるのは「恋愛小説」での清楚さが記憶に新しいインゲボルガ・ダプコウナイテで、本作でも華奢な若妻ぶりがミハルコフと絶妙のコントラストを描いている。が、何と言ってもこの作品の成功を決定づけたのは、コトフ大佐の一人娘に扮するミハルコフの実の愛娘ナージャの、天使のような愛らしさだろう。アカデミー授賞式の壇上にも娘を抱えて登場するほどのミハルコフの親バカぶりは、劇中でも娘と戯れる幾多のシーンにいかんなく発揮されているが、この実の弟子の情愛こそがラストシーンの非情さを印象深いものにしている。ミハルコフの最高傑作と呼んで差しつかえないであろうメロドラマの逸品である。 (箕)

ショーシャンクの空に
THE SHAWSHANK REDEMPTION
1994年/アメリカ/キャッスル・ロック・エンターティンメント/松竹富士配給/2時間23分
 
監督・脚本=フランク・ダラボン
原作=スティーヴン・キング
撮影=ロジャー・ティーキンス
音楽=トーマス・ニューマン
出演=ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン、ウイリアム・サドラー
 
[ストーリー]
 無実の罪を着せられ、無期懲役刑となってショーシャンク刑務所に服役するハメになつてしまつた主人公(T・ロビンス)。囚人らしからぬ行動をとる彼は、囚人、看守、刑務所長から様々な意味で注目を浴びるようになつていく…。
 
[コメント]
 世の中には手違いというものが必ずある。よくあるのが、友達数人でラーメン屋等に行って他の皆はラーメンをたのみ、自分だけチャーシューメンをたのむ。すると、他の皆はもう来たのにチャーシューメンだけこない。後から入って来た客の方が早く出て来る始末だったりする。そこで、店員に「ちょっと、チャーシューメンまだ来てないよ。」と、言わない限りチャーシューメンにはありつけない。人間生きているとまさにこういうことの連続で、上記のように一言言わなければ自分の食事の運命が他人に操られてしまう。「そんなこと、大袈裟だよ。」と、思われる方も居るかもしれないが、「あの時ああすれば(言えば)良かった。」と考えたことが無い人は、まず皆無だろう。“チャーシューメン”程度のことであれば“一言”も言い易いだろうが、自分の“将来の夢”なんかに対しては“一言”があったとしても、“行動”にまで至らないことが多いだろう。自分を取り囲む物事には、余りにもしがらみが多すぎる! 大抵の人は途中で妥協して、自分が“思い措いていた夢”からはずれて、ありきたりの人生を歩んでしまう。何? 映画のコメントを書けって? だから、つまり、この映画の主人公は「チャーシューメン来てないよ。」と言つてそれにありつけた男なんです。以上。 (菅)