新訳 機動戦士Zガンダム

11月26日 「新訳 機動戦士Zガンダム」 (やまばとホール)

●Time Table●
11:00−12:35
13:20−14:58
15:15−16:00
16:15−17:54
機動戦士Zガンダム - 星を継ぐ者 -
機動戦士ZガンダムII - 恋人たち -
トーク 富野由悠季監督×福井晴敏氏(作家)
機動戦士ZガンダムIII - 星の鼓動は愛 -

機動戦士Zガンダム - 星を継ぐ者 -
2005年/日本/サンライズ製作/松竹配給/1時間35分
 
原作・脚本・絵コンテ・総監督=富野由悠季
原案=矢立肇
製作=吉井孝幸
音楽=三枝成彰
キャラクターデザイン=安彦良和
メカニカルデザイン=大河原邦男、藤田一己
主な声の出演=飛田展男、池田秀一、鈴置洋孝、岡本麻弥、勝生真沙子、古谷徹
 
星を継ぐ者
© 創通エージェンシー・サンライズ
 
[ストーリー]
 TV版1〜12話に相当。スペースコロニーに住む少年カミーユが連邦軍の新型MS ガンダムMk-IIを奪取し、反地球連邦組織『エゥーゴ』へ身を投じる過程から、地球連邦軍エリート組織『ティターンズ』の本拠地ジャブローへの降下作戦を描く。ここで、一年戦争の主役であるシャア(=クワトロ)やアムロといったニュータイプ達と出会いがカミーユの運命を変えていく……。

機動戦士ZガンダムII - 恋人たち -
2005年/日本/サンライズ製作/松竹配給/1時間38分
 
原作・脚本・絵コンテ・総監督=富野由悠季
原案=矢立肇
製作=吉井孝幸
音楽=三枝成彰
キャラクターデザイン=安彦良和
メカニカルデザイン=大河原邦男、藤田一己
主な声の出演=池田秀一、飛田展男、古谷徹、ゆかな、池脇千鶴、川村万梨阿
 
恋人たち
© 創通エージェンシー・サンライズ
 
[ストーリー]
 TV版13〜32話に相当。カミーユ達がエゥーゴの支援組織「カラバ」の力を借りて地上から再度宇宙へ還る過程、激しくなる宇宙空間での戦闘とΖガンダムの登場、そして旧ジオン軍の残党『アクシズ』との遭遇までを描く。また敵勢力『ティターンズ』内では、木星帰りのシロッコが勢力を強め、徐々に戦局は混乱していく。本作において、カミーユはフォウとの運命的で刹那な出会いを経験する・・・…。

機動戦士ZガンダムIII - 星の鼓動は愛 -
2006年/日本/サンライズ製作/松竹配給/1時間39分
 
原作・脚本・絵コンテ・総監督=富野由悠季
原案=矢立肇
製作=吉井孝幸
音楽=三枝成彰
キャラクターデザイン=安彦良和
メカニカルデザイン=河原邦男、藤田一己
主な声の出演=飛田展男、池田秀一、榊原良子、島田敏、鈴置洋孝、新井里美
 
星の鼓動は愛
© 創通エージェンシー・サンライズ
 
[ストーリー]
 TV版33〜50話(最終話)に相当。戦局は、『エゥーゴ』の指導者となったクワトロ、その才覚で『ティターンズ』の掌握を図るシロッコ、そしてザビ家の再興を掲げ『アクシズ』を率いるハマーンの三勢力の争いとなる。政略と軍略と感情が渦巻く戦場の中、ニュータイプへと覚醒したカミーユはΖガンダムと共に真に戦うべき相手を見出すべく宇宙を疾走する……。
 
[コメント]
 日本が世界に誇るアニメ作品の金字塔『ガンダム』シリーズ。初代の『機動戦士ガンダム』(1979)から、最新の『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(2004)へとシリーズを重ねる度に新たなファンを巻き込み人気を博している。『機動戦士Zガンダム』(1986)は数多いガンダム関連作品の中でも、最も人気の高い作品の一つである。
 それは、Ζガンダムの初放送当時、一大ブームメントを形成していた『機動戦士ガンダム』の続編であり、内向的な少年から一年戦争の伝説的英雄となったアムロ・レイ、彼の好敵手であり消息不明となっていたシャア・アズナブル(=クワトロ・バジーナ)の登場も挙げられるだろう。しかしながら、カミーユ・ビダンという主人公の存在が最も大きいと考える。彼は、アムロやシャアと同様にニュータイプへと覚醒する運命を負っているが、その前に非常に繊細かつキレやすい少年である。そんな彼はTV版の最終話において、余りにも鋭い感覚により精神崩壊を起こしてしまう。監督である富野氏は著書<※1>の中で「カミーユみたいな若者は今後多発するなという勘はあった」と述べており、当時の視聴者にとって共感できる存在であったことは想像に難くない。
 今回の『新訳 機動戦士Ζガンダム』三部作は、富野氏がTV版を再構成し生み出した映画作品であり、再編集版ではない。TV版ではアニメを見る少年達へ、大人の立場からの警告というメッセージを乗せた結果、鬱屈したイメージの強い作品となってしまった感がある。しかし、本作では陰のある少年として描かれたカミーユをより健やかな青年として描くことで、『Ζガンダム』をよりエンターテイメント性を重視した作品へ生まれ変わらせた。それは、旧作カットのみを用いるのではなく新作カットとデジタル上で織り交ぜる処理を施した点、多くのキャストをTVシリーズから踏襲しつつも作品のイメージを決める主題歌に独自の世界観を持つGackt氏をむかえた点、そして当時余りにも救いがたく衝撃的だったラストをより明るい方向へ導くという点からも本作が「新訳」へと生まれ変わらそうという趣旨が伺える。同時にこの変化は、20年という時がもたらした『Ζガンダム』を受けいれる時代の変化とクリエーターである富野氏の変化として捉えることが出来るだろうし、本作を鑑賞する上で見逃すことは出来ない部分であると考えられる。
※1『富野に訊け!』著者 富野由悠季 徳間書店(2005)

●ゲストの紹介
富野 由悠季(とみの よしゆき)監督

 1941年神奈川県小田原市生まれ。日本アニメ草創期から活躍するアニメーション監督、小説家。64年に日大芸術学部卒業後、虫プロへ入社、テレビアニメ『鉄腕アトム』の脚本・演出を担当。67年に退社後、CM製作を経験、フリーの演出家としてアニメ界に復帰する。以降、多くのテレビアニメを担当し、「絵コンテ千本切りの富野」と呼ばれる(1999年当時、製作に関わったタイトル80以上 製作に関わった絵コンテ数は992本である<※2>ことから、2006年現在1000本切りを悠に達成していると考えられる)。72年に『海のトリトン』は実質的に初の監督を務め、79年に『機動戦士ガンダム』の原作・総監督となる。富野氏は勧善懲悪の単純なアニメストーリー全盛の時分に、社会や戦争の矛盾、善悪の曖昧さを作品に盛込み、視聴者へアニメを通じて思考させるという新たな試みを行った先駆者である。この手法は、初放送当時はあまり世間受けしなかったが、後に多くのファンに支持され、一大ムーブメントとなった。80年に小説『機動戦士ガンダム』を発表、作家としても多彩な執筆活動をしており、『閃光のハサウェイ』『リーンの翼』『オーラバトラー戦記』等多数の著書がある。映画監督としては、81年にTV版の再編集による劇場版『機動戦士ガンダム』でデビュー、また88年に劇場オリジナル作品『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を発表している。最近では、05年から06年にかけて劇場版『機動戦士Ζガンダム 三部作』を発表しており、現在も意欲的に製作に携わっている。
※2 『富野由悠季 全仕事』監修 富野由悠季 キネマ旬報社(1999)
 
福井 晴敏(ふくい はるとし)氏

 1968年東京生まれ。作家。私立千葉商科大学中退。97年、警備会社に勤務する傍ら初めて応募した作品『川の深さは』が、第43回江戸川乱歩賞選考会で大きな話題になり、翌98年『Twelve Y.O.』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。99年、『亡国のイージス』で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞をトリプル受賞。02年には『終戦のローレライ』で吉川英治文学新人賞、日本冒険小説協会大賞を受賞し、こちらも05年『ローレライ』として映画化され公開。同年公開の『戦国自衛隊1549』の原作も手がける。06年、現在の最新作は小説『Op.ローズダスト』。また、SFやガンダム世界にも造詣が深く00年に『ターンエーガンダム〈上・下〉』(01年に『月に繭地には果実』に改題)を発表しており、今冬にも福井原作の新たなガンダムを小説として発表する予定。各方面から注目を集めるガンダム世代代表のクリエーターである。