CMから飛び出した作家たち

11月20日 「CMから飛び出した作家たち」(パルテノン多摩小ホール)

●Time Table●
12:30ー14:30
14:50ー17:13
17:30ー19:12
SURVIVE STYLE5+
茶の味
下妻物語

SURVIVE STYLE5+
2004年/電通、東北新社、日本テレビ、TUGBOAT製作/東宝配給/2時間
 
監督=関口現
企画・原案・脚本=多田琢
撮影=シグママコト
音楽=JAMES SHIMOJI
美術=山口修
出演=浅野忠信、橋本麗香、小泉今日子、阿部寛、荒川良々、ヴィニー・ジョーンズ、千葉真一
 
SURVIVE STYLE5+
 
[ストーリー]
 何度殺しても凶暴になって蘇る妻を持つ夫、催眠術をかけられたままの男とその家族、その催眠術師の恋人でCMプランナーの女、空き巣で暮らす奇妙な3人組、同時通訳を連れたロンドンから来た殺し屋……、交わるはずのない5つの物語が不思議に絡み合い、ラストは予想外の展開に……。
 
[コメント]
 CMのやり方で映画を撮った! そう豪語する業界一有名なCMプランナー多田琢とCMディレクター関口現、2人の最強コンビが映画を作った。佐藤可士和や石井克人など広告業界の人脈を駆使しまくった奇跡のコラボレーション。この人たち全員にまとめて広告頼んだらいったい幾らになるのやら……なんて贅沢な映画なんだ!?
 ストーリーは、B級ホラー→アクション→コメディ→ラブとすごい回転の速さでたたみ掛けてくる2時間の超贅沢なCMを観た感じだが、通常のCMのようにすぐに消化してしまう結末じゃなくちゃんと予想外のオチがあり、最後は涙あり(?)の感動をちゃんと届けてくれる。
 出演陣も豪華! 特にロンドンから来た殺し屋役のヴィニー・ジョーンズ出演には驚き! 同時通訳(英語は話せない)を演じる荒川良々(モデルはサッカー日本代表トルシエ監督の通訳ダバディらしい(笑))と2人のコンビはツボにはまること間違いなし。やりたいことすべてやっちゃいました!って感じの映画体験。コレを面白がれるか、けしからん! と憤慨するかはあなた次第……。 (おざ)

茶の味
2003年/「茶の味」製作委員会製作/クロックワークス、レントラックジャパン配給/2時間23分
 
原作・脚本・監督・編集=石井克人
撮影=松島孝助
美術=都築雄二
音楽=リトルテンポ
出演=坂野真弥、佐藤貴広、浅野忠信、手塚理美、我修院達也、三浦友和、中嶋朋子
 
茶の味
 
[ストーリー]
 山間の小さな町に住む春野一家。高校生の長男・ハジメ(佐藤)は片思いの女の子が転校してしまい、ショックを受けていた。一方、小学生の長女・幸子(坂野)は、時折姿を現し、自分のことを見つめる“巨大な分身”に翻弄されきっていて……。ちょっとヘンな“悩める人々”の優しくてユーモアあふれる物語。
 
[コメント]
 片思い、幼少期特有の幻想や空想、捨てきれない夢……。春野一家の人々がそれぞれに抱えている悩みは、誰もが一度は経験したことがあるような小さな悩み。どうにも不思議なこの家族に妙なリアリティを感じ、引き込まれてしまうのはきっとそのせいでしょう。
 ハジメ役の佐藤貴広はみずみずしい演技で恋の悩みを抱える少年役を演じ、“巨大な分身”に悩む幸子役の坂野真弥は少ないセリフのなか、小さなつぶやきや表情だけでその葛藤を見事に体現しています。アヤノ役の浅野忠信のぼそぼそとした喋り方がとても味があって、和久井映見の優しく温かなナレーションは美しい田園風景とうまくマッチしています。そしてなんといっても我修院達也が演じるオジイの強烈なキャラクター! そう! この作品、『茶の味』というタイトルから連想されるしみじみとしたイメージだけの作品かと思いきや、お笑いネタ満載のコメディでもあるのです!
 笑って笑って最後にはほのぼのとした優しい気持ちで満たしてくれる、そんな作品です。 (崇)

下妻物語
2004年/アミューズ・TBS・小学館・東宝・TOKYO FM・ホリプロ・博報堂DYメディアパートナーズ・パルコ・小倉事務所製作/東宝配給/1時間42分
 
監督・脚本=中島哲也
原作=嶽本野ばら
撮影=安部正一
音楽=管野よう子
出演=深田恭子、土屋アンナ、宮迫博之、篠原涼子、樹木希林
 
下妻物語
 
[ストーリー]
 田んぼだらけの栃木県下妻から代官山まで通うロリータファッション命の少女・桃子(深田)。お洋服購入のため、ついに海外ブランドのバッタもんを売ることに。それを買いに現れたのはヤンキー娘・イチゴ(土屋)。どう見ても住む世界が違う2人。だが、勝手に押しかけてくるイチゴのペースにクールな桃子も次第に巻き込まれて……。
 
[コメント]
 桃子は、見た目から甘えん坊で少しおばかな感じなのかと思えば、実は反対にクールで、独自の世界観を持っていて、友達はいなくても全然平気。一方、特攻服と原チャリで爆走するイチゴ。わが道を行く、相容れない個性の2人のやりとりは爆笑もの! だけど、そのなかに好きなもの、初めての恋、敬愛する人があって、ほんのり切ない気持ちにさせる。やがて2人のあいだに芽生えてくる感情。イチゴのピンチに桃子は……。この友情には老若男女もグッとくるはず。
 “乙女派”嶽本野ばらの原作を、CM界の名手中島哲也が細部にもさりげなくCGを駆使して作った、笑いあり涙ありの青春(?)のエンターテインメント映画です。周りを囲む大人たちも、ヘンな人ばかり。下妻の牛もキャベツもジャスコもイイ味だしてます。観終わって元気になって帰れること請け合い! 女の子だったら、ロリータ少女服が着たくなっている……かもしれない(笑)。 (柴)