【D-2】私たちはどこまでも行ける

11月29日(日)
ヴィータホール

チケット料金

一般
前売:1,200円 / 当日:1,400円
子ども(4歳~小学生)
前売:800円 / 当日:900円

e+(イープラス)でチケットを買う

このふたつの作品は、女子高校生達が限られた時間の中でもがきながら、無限と思える一瞬にかけて勢い良く生きているさまを鮮やかに描き出しており、どちらも近年稀に見る青春映画の傑作です。映画と演劇に関わりの深い本広監督と松居監督のトークでは意外な共通点が見いだせるかもしれません。

幕が上がる

  • 2015年/フジテレビジョン、東映、ROBOT、電通、講談社、パルコ製作/ティ・ジョイ配給/1時間59分
  • 監督=本広克行
  • 原作=平田オリザ
  • 脚本=喜安浩平
  • 撮影=佐光朗
  • 音楽=菅野祐悟
  • 出演=百田夏菜子、玉井詩織、高城れに、有安杏果、佐々木彩夏、ムロツヨシ、黒木華

ストーリー

演劇部部長・高橋さおり(百田)は、お姫様キャラ・ユッコ(玉井)、ムードメーカー・がるる(高城)、しっかり者の後輩・明美ちゃん(佐々木)らとともに、高校生活最後の大会に臨もうとしていた。学生演劇の女王だった新任教師・吉岡先生(黒木)に触発され、強豪校からの転校生・中西さん(有安)も加わり、全国大会を目指し稽古に打ち込むようになる。

コメント

ももクロってあのうるさい女の子たちでしょ、『幕が上がる』を観る前はそう思っていた。2時間後、僕は彼女たちの実際の名前と色と役名を必死に一致させようとしていた。モノノフ(ももいろクローバーZのファン)の道を歩み始めた。

劇中の彼女たちは人並みに日々に苛立ち悩む普通の高校生だ。しかし、仲間を信頼し支え合い、次第に自立し目標を見出していく姿は清々しく気力に満ち溢れ、観るものを勇気づける。実際のももクロとの共通点も多い。圧巻の演技力で演劇部員を魅了し鍛える吉岡先生は、彼女たちをこれまで導いてきた大人たちであり、目標だ。不思議に思えるキャスティングも彼女たちが全力で走ってきた道のりを彩っている。

映画を褒めているのか、ももクロを褒めているのか。

ときに理不尽で目を背けたくなる現実も、劇中劇「銀河鉄道の夜」のジョバンニが、『幕が上がる』の演劇部員が、そして、ももクロがそうしてきたように受け入れ、乗り越えることで人は成長できるということを教えてくれる映画だ。(遠)

私たちのハァハァ

  • 2015年/SPACE SHOWER NETWORKS INC製作/SPOTTED PRODUCTIONS配給/1時間31分
  • 監督・脚本・編集=松居大悟
  • 脚本=舘そらみ
  • 撮影=塩谷大樹
  • 音楽=クリープハイプ
  • 出演=井上苑子、大関れいか、真山朔、三浦透子、クリープハイプ、武田京香、中村映里子、池松壮亮

ストーリー

福岡県北九州市の田舎町に暮らす女子高生4人組は、ロックバンド「クリープハイプ」が大好き。福岡のライブを観に行き出待ちした際、「東京のライブにも来て」と言われたことから東京に行くと決める。こうして高校生活ラストの夏休みに、自転車で東京を目指す彼女たちの旅がスタートし……。

コメント

『私たちのハァハァ』を観終わったとき、今まで何かに思いっきり夢中になっていたことのある人にはわかるであろうあの甘酸っぱい感覚が、久し振りに体中を駆け巡った感じがした。

女子高生という無敵感。高校最後の夏休み。経験したことのない旅。憧れのクリープハイプ。楽しいこと。ドキドキすること。ちょっと背伸びしてみたい時。「好き!」がその時のすべてで、ただただ真っ直ぐにしか「好き!」に向かって進むことが出来ない時間。でも実は、わりと見えている現実や将来。旅のなかでの、4人が揃った時のテンションの高さと、個々で話をしている時のトーンの差が、東京に近付くにつれてどんどん変化していく感じがとてもリアルで、心がキューーーっとなった。

4人ははじめから、それぞれ見ているものが違っていたのかもしれない。けれど、ソレが明確になり、爆発するシーンは、痛々しくも清々しく、そこからのバス内でのLINEの会話、クライマックスのライブシーンへの流れがとにかくもう、素晴らしかった。。。

ドキュメンタリーのように瑞々しくリアルな時間を捉え、「今」を見つめて、「今」に寄り添い、「今」を切り取って、「今」の主演4人と「今」の松居監督だから撮ることが出来た傑作青春作品。(矢)

ゲストプロフィール

本広 克行 監督

1965年生まれ。香川県出身。CM、深夜番組、情報バラ エティ、ドラマ、ドキュメンタリー番組の制作や演出を担当後、96年、映画『7月7日、晴れ』にて劇場デビュー。2003年に公開された映画『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』では、日本映画 (実写)興行収入記録歴代1位の座を獲得。その後も『踊る大捜査線シリーズ』『サマータイムマシン・ブルース』『UDON』など、数々の作品を手掛ける。

07年演劇プロジェクトFABRICAを立ち上げ演出を担当。10年平田オリザ原作、岩井秀人脚本、舞台『演劇入門』へ 演出参加。近年はAKB48「Everyday、カチューシャ」PV、アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』総監督、『攻殻機動隊ARISE border:less project』プロジェクト・プロデューサー、13年より「さぬき映画祭」ディレクターと活躍は多岐に渡 る。ネスレシアターon YouTube のショートムービー「Regret」は300万回再生を超えている。

松居 大悟 監督

1985年生まれ、福岡県出身。ゴジゲン主宰、全作品の作・演出・出演を担う。09年、NHK『ふたつのスピカ』でドラマ脚本家デビュー。その後、商業映画初監督作『アフロ田中』(12年)をはじめ、『男子高校生の日常』『自分の事ばかりで情けなくなるよ』(13年)『スイートプールサイド』(14年)と次々に映画が公開。15年は『ワンダフルワールドエンド』『私たちのハァハァ』の2作品が公開されるなど映画監督として意欲的に作品を作り続ける。そのほかミュージックビデオ制作やコラム連載など活動は多岐に渡る。

百田 夏菜子 氏

 

樋口 尚文 氏

1962年生まれ。映画評論家・映画監督。著作に「大島渚のすべて」「黒澤明の映画術」「ロマンポルノと実録やくざ映画」など多数。文化庁芸術祭、芸術選奨、キネマ旬報ベスト・テン、毎日映画コンクール、日本民間放送連盟賞、藤本賞などの審査委員もつとめる。2013年公開の映画『インターミッション』で劇場用映画の監督にも進出。NHK?Eテレ「岩井俊二のMOVIEラボ」などの映画番組にも出演。