
(C)大宮映像製作所
鉄道がなかなか復旧せず、帰宅困難者が街にあふれた。電話もつながらず、かろうじて使用できたメールとインターネットで安否を確かめ、徒歩で帰路を急いだ……2011年3月11日の首都圏の混乱を思い出してほしい。
テレビでは、大津波に襲われた東北地方沿岸部の映像が繰り返し放映されていた。気仙沼市では夜になって大規模な火災も発生した。その後、東京電力福島第一原発の爆発、急に発表された計画停電、飲料水やインスタント食品、電池などの買い占めなどが次々に起こった。なかでも、目に見えない放射性物質の今後の影響と、土壌や食品などの放射能汚染への不安は今も変わることなく続いている。8月23日時点で死者15,726名、行方不明者4,593名、負傷者5,719名、避難者82,634名(政府発表)。東日本大震災は現在も続く、過去に例をみない大規模複合災害だ。
『無常素描』(大宮浩一監督)は、震災の発生から1 か月あまり後の被災地の様子、そこで生きる人びとを収めた映画である。字幕やナレーションを使用せずに津波の「跡」と「後」をスケッチする試みは、テレビや報道写真が伝えなかった感覚を観る者にあたえる。美しくもみえる映像に入っていくと、風や波の音、鳥の鳴き声、重機の動作音などが自然と感じられる。一方で、インタビューで向き合う人びとの言葉は訛りがあり簡単に理解できない。が、それが、まさに被災地に立ち、そこで出会った人びとと向き合う感覚を呼び起こす。
被災から1 か月あまり経った現場では、まだ震災の意味づけも、復旧・復興のあり方も、上手く言葉にならない。玄侑宗久氏の「無常としかいいようがない」という表現が小さな手がかりを与えるが、それがすべての解というわけでもない。私たちのいのち、生きるということ、ライフスタイルや文明観……さまざまな物事への問いが、浮かんでは消えていく。
東京も今回の震災で少なからぬ影響を受けた。半年が経過しようとしているいま、日常の光景がかなり戻っている。さまざまな怯えや畏れも多少はおさまったかもしれない。そんななか、『無常素描』は映画として、報道とは違うタッチで東日本大震災のことを私たちに刻ませてくれる。いまだからこそ、もう一度しっかり向き合うことが、「街角にビルが建つと忘れてしまう」を繰り返さないために大切だと。 (上映会企画担当:山口渉)
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正直に言うと、スクリーンに映る被災地の光景は、私にとって、“ただの画” にしか過ぎなかった。つまりは、3.11当日、地下鉄の車内で地震に遭い、都内の電車がほぼ動かなくなってしまって帰宅することができず、かろうじて友人の家に泊まらせてもらえたが、そこで水が使えないというだけでわめいてしまった私は、被災地を自分の世界とは切り離された他人事としてしか捉えられなかったのである。
瓦礫が広がり、町は海の水に浸り、それでも人々は強く生きようとしていた。「悲しくなった、でも勇気をもらった」……こう言う人もいるだろう。だが、被災地へ行っていない私は、“素描” された光景をそんなたやすい言葉で表すべきではない。時折挟まれる玄侑宗久さんの言葉が胸を深く突き刺す。安い同情をせず、自らの感想を素直に自覚するため、多くに人に観てもらいたい。私は率直にそう思うのみである。 (上映会企画担当:渡辺瑞帆)

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TAMA映画フォーラム実行委員会/特別上映
『無常素描』(大宮浩一監督)
■開催日・会場
2011年9月3日(土)
会場:ベルブホール(多摩市立永山公民館/ベルブ永山5F)
京王・小田急線永山駅下車徒歩2分
■上映スケジュール
10:30―11:45 第1回上映
13:00―14:15 第2回上映
14:15―15:00 大宮浩一監督トーク・Q&A
15:30―16:45 第3回上映
18:30―19:45 第4回上映
*スケジュールは変更になる場合があります。
*開場は各回上映開始の15分前です。
*大宮浩一監督トーク・Q&Aはチケット(半券含む)提示で入場できます。
*集中混雑時は整理券配布および入場制限を行なう場合があります。
■チケット料金
前売・インターネット予約:おとな1,000円
当日:おとな1,200円 こども500円(こどもは小中学生・当日のみ)
*TAMA映画フォーラム実行委員会・支援会員の方は当日600円です。
■チケット販売
ベルブ永山(休館日・祝日を除く9:00~17:00) [地図]
多摩市役所売店「ひまわり」 [地図]
聖蹟桜ヶ丘ヴィータ7階「喫茶・風」 [地図]
多摩センター「福祉ショップきずな」 [地図]
■インターネット予約
[チケット予約フォーム]
*チケットの予約をしていただいた方は、当日受付で前売券価格にてチケットの受渡し・精算とさせていただきます(全席自由・各回入替制。上映回の指定はできません)。予約は上映会前日までの受付となります。
*お申し込み後、「送信内容のコピーをE-Mailで受信する」をチェックしたのにメールが届かない、または3日以上過ぎても受付連絡がない場合はメールアドレスの誤記などが考えられます。
■作品情報
◎『無常素描』予告編
東日本大震災発生から一か月あまり、被災地にカメラは入った。津波によって何もかもなぎ倒され、瓦礫が山となり、表面が露わになって荒れた土地の、土の色。そこを吹く風や海の音、潮の匂い……。それらを次々に収めていく。
失ったのは、大きくかけがえのないもの。カメラの前で話す人びとが発することばをひとつひとつ受け止めながら、この震災が私たちの社会にもたらすべきものについて、考えずにはいられない。
私たちの生をどう考えるのか? すべてが移ろう時間の経過のなかで、何を大切にして生きていくのか? 私たちは何処へゆくのか?
福島県三春町・福聚寺の住職で小説家の玄侑宗久の語りとともに向き合っていく……。
■ゲスト情報
大宮浩一監督
1958年生まれ。映画監督、企画、プロデューサー。
日本大学芸術学部映画学科在学中より、映像制作に参加。『ゆきゆきて、神軍』(87/原一男監督)などで助監督を務める。その後、フリーの演出家として民族博物館等の展示映像をはじめ、CM、VP、教育映画などを制作。93年、有限会社 大宮映像製作所を設立。主な企画・プロデュース作品に、『よいお年を』(96/宮崎政記監督)、『JUNK FOOD』(98/山本政志監督)、『DOGS』(99/長崎俊一監督)、『青葉のころ よいお年を2』(99/宮崎政記監督)『踊る男 大蔵村』(99/鈴木敏明監督)など。
2010年、ドキュメンタリー映画『ただいま それぞれの居場所』を企画・製作・監督。同作は、介護保険制度導入から10年を経た介護福祉の実状と、自らの理想とする介護を実現するため施設・事業所を立ち上げた若い介護スタッフたちの取り組みを描き、平成22年度文化庁映画賞文化記録映画大賞を受賞。同年、若い介護スタッフたちが主催したトークライブと彼らの日常を記録した『9月11日』を企画・製作・監督。『ただいま〜』の続編が完成間近。

(C)大宮映像製作所
■主催
TAMA映画フォーラム実行委員会
http://www.tamaeiga.org/