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2006年09月24日

●「地下鉄(メトロ)に乗って」試写会感想

--- あなたは、父になる前の父親を知っていますか?
     あなたが生まれる前の母親に会いたいですか? ---

浅田次郎原作、篠原哲雄監督作品「地下鉄(メトロ)に乗って」の試写会を見てきた。

夜、人気のないの地下鉄の駅ホーム。
衣料品メーカーで営業を務める真次(堤真一)は学生時代に兄を事故で失い、家を顧みない奔放な生活ぶりの父に反発して家を飛び出し母方の姓を名乗って生活している。
そんな彼が構内を歩いていると、死んだはずの兄の姿をふと見かけてしまった。その後を追って階段をあがって行くと、外は昭和39年の街並みだった!
懐かしい風景。そして、取り返しのつかない出来事が起こった時間へのタイムスリップ。
真次が自分の兄を事故で失った、ちょうどその日だった。
真次は昭和39年の兄を見つけ出し、事故にあわないよう家まで連れて帰っていく・・・。

そこで舞台は現代へと戻る。
「結局兄はその後また家を飛び出して事故で亡くなってしまった」という話を勤め先の社長(?)さんに語る。
その社長さんの手にあるのはドストエフスキーの「罪と罰」。これが最後に大きな意味を持ってくるのだが・・・。


真次の父(大沢たかお)は危篤状態に陥っていた。
日本の財界でも首領のひとりと数えられ、ある疑惑でテレビで報道されている。
家の外に愛人を作り、母と家庭を粗末にする父を憎んできた。
しかし、そんな真次も家庭を持ちつつ外に愛人を持っていた。


そんな彼が、その後頻繁にタイムスリップを繰り返し、若き日の父と様々な形で出合うこととなる。
ある時は自分の愛人みちこ(岡本綾)と共に過去へ戻る。
そんな中で真次は父の愛人(常盤貴子)だった女性とも出会うこととなった。

時間軸が交錯し、現実と虚構の区別がつかなくなる複雑なストーリーが展開されてゆく。
そんな中で真次は若き日の父のひたむきさ、純真さを知ることとなる。

そして、みちことの許されざる関係を知ったとき、運命は大きく展開し、時間の流れを狂わせる予想だにしなかったクライマックスを迎える・・・。


ラスト、場内からはすすり泣きが聞こえてきた。
悲しい、あまりに悲しい「罪と罰」の話であり、そして父との心の交流を描く話。

父、母、娘、子。それぞれの時代が複雑に入り混じってひとつの大きなストーリーを形作る大胆な展開。
基本は現代を基点としているのだが、話の展開に沿うかのように何度も過去と現代とを行き来する。
ややもすると「そんなに都合よく何回もタイムスリップして変」と思うのだが、それはまあ大目に見よう。
なにしろこれはファンタジーなのだから。
SFではない。これはファンタジーなのです。


注目するのはやはり自分の知らなかった時代の父の姿であり、母の姿であり、自分のルーツである。
それらを知ったときにそれが悲劇となるのか、それともハッピーエンドとなるのか。
あまりに近い存在だからこそ、他人だった時代の父・母と会うのは怖い。

しかし、ひとりの人間として向き合ったとき、心から素直に真次のような台詞が言えるというのはとても幸せなことなのだと思う。
「幸せでした。あなたのような父親を持って、幸せでした。」と。
自分もそのように言われるような人生を歩んできたか?と背筋を正す思いだった。

余談だが、堤真一はどこで見ても堤真一だなあ。
演技力もあるし素晴らしい役者さんなんだけど。むしろキャスティングが「堤真一」を欲しているようなので、今度は一味違ったキャスティングで見てみたいものだ。
この映画ではどう見ても堤真一にしか見えなかったのが残念。
大沢たかおは熱演だった。
幅広い年齢の役を、ある時はハツラツと、ある時はいかがわしく、ある時は哀愁漂わせて演じきっていた。
素晴らしい!

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