●「出口のない海」試写会感想
「半落ち」の原作横山秀夫と監督佐々部清が再び組んで製作した最新作。
脚本では山田洋次も参加しています。
脇を固めるのは香川照之のようなベテランから伊勢谷友介、上野樹里、塩谷瞬など豪華な顔ぶれ。
そんな中、主演は映画初出演・主演となる市川海老蔵。
オープニングから息詰る潜水艦での消耗戦が展開される。
舞台は1945年夏。
太平洋戦争末期の海−−。
敵艦に囲まれて浮上することができず、少ない酸素で酸欠となり、温度上昇の中ひたすら耐えるしかない海兵たち・・・。
並木浩二(市川海老蔵)は甲子園優勝投手であり、明治大学でエースを務めて魔球の完成に向けて努力する野球バカだった。
戦時中とはいえ戦争そっちのけで野球時興じる彼ら。
しかし、時代はそんな彼らも戦争へと巻き込んでゆく。
それも、「回天」と呼ばれる最終兵器の人員として・・・。
恋人とも別れを告げ自ら海兵に志願する並木。
難しい訓練を受け、生きて帰ることを「恥」とされ、人間魚雷として華々しく散って「軍神」なることだけを望まれる若者たち。
そんな彼らも苦悩し、自ら志願したとは言え、出陣の時には声も手も震えまともに機械を操作することもできない。
訓練ですらまともにこなすことができないのだ。
戦争は狂気だ。
野球に全てをかけ愛する人もいた彼が、その全てを捨てて死んでゆくことを選ぶその姿。
彼の周りの仲間たちも、死ぬのは怖い。
しかし、死ぬことでしか生きていることを証明できないかのごとく死に急ぐ若者たち。
そんな、狂気の時代を生きた人々の姿をヒューマニズムたっぷりに描いたこの映画は素晴らしい。
とにかく役者たちの演技が光っている。
香川照之のように安定した演技を見せてくれる役者も、今回は若手の役者たちの好演には負けていた。
主演の市川海老蔵は難しい役柄を映画初主演とは思えない大胆さで演じきっている。
普段は弱々しい印象のある伊勢谷友介の力強い演技が光る。
戦場で並木の心を支える若い整備士の演技も素晴らしい。
「それでは無駄死にじゃないですか!」
と言われ、並木は答える。
「俺は、この回天というものがあったのだということを後世に語り伝えるために死のう」と。
彼は単に時代の波に飲み込まれているだけではなかった、というあたりに救いが感じられる・・・。
重たい内容の映画ではあるが、役者たちの迫真の演技を見ているうちに引き込まれいってしまう。
いかにもなわざとらしい部分もあるが、それはそれで許せてしまう。