オープニング企画:フォーラム推薦作品

11月22日 「オープニング企画:フォーラム推薦作品」 (やまばとホール)

スーパーの女
1996年/伊丹プロダクション/2時間1分
 
監督・脚本=伊丹十三
撮影=前田米造
音楽=本多俊之
美術=川口直次
編集=鈴木洸
出演=宮本信子、津川雅彦、矢野宣、六平直政
 
[ストーリー]
 スーパー「正直屋」の店長・五郎(律川)は、このところ頭を悩ましていた。ライパルのスーバー「安売り大魔王」が近くにオーブンして、客をとられてしまっていたのだ。このままでは「安売り大魔王」に店を乗っ取られてしまうかもしれない。親族会議で1年だけ待って欲しいと頼み込む五郎。しかし、彼にもどうやって店を再建すれぱいいのか見当がつかなかった。そんなとき五郎は幼馴染み花子(宮本)と再会する。花子は長年の主婦の経験から、良いスーパーと悪いスーパーを見分ける眼を持ち合わせていた。彼女なら「正直屋」をなんとか出来るかもしれない。五郎は花子に店を手伝ってくれるように頼む。「スーパーの女」花子の大活躍が、今始まったのだ!
 
[コメント]
 不振にあえぐ日本映画界にあって、伊丹十三は確実にヒットを飛ばし続ける稀有な存在である。今回の『スーパーの女』も、スーパーという主婦にとって大きな関心事である題材をいつもながらの綿密な取材によって、スーバーの世界の表と裏を巧みに観客に見せていく手腕はさすがである。最近のヒット作では『マディソン郡の橋』しかり『Shall weダンス?』しかり、今まで映画館に足を運ぱなかったような中年層に受けて大ヒットを飛ぱしたが、その先鞭をつけたのが、『お葬式』に始まる一連の“伊丹映画”であることは疑いようのない事実である。「日本映画に客は来ない」と嘆くより、「何故伊丹映画はヒットしているのか」という分析をすることも重要なのではないだろうか。事実、周防正行監督の『シコふんじゃった。』や『Shall weダンス?』には、題材の選び方といい、物語の展開のさせかたといい、随所に伊丹映画の影響が見られる。(あまり知られていないかもしれないが、周防監督は以前『マルサの女』のメイキングビデオを制作している。これは傑作なので、周防ファンの人は近くのレンタルビデオ店で借りてみてください。次はどんな題材で観客を楽しませてくれるのだろうか、今から楽しみである。 (鬼)

陽のあたる教室
MR. HOLLAND'S OPUS
1995年/アメリカ/ポリグラム・フィルムドエンターティンメント提供/日本ヘラルド配給/2時間24分
 
監督=スティーブン・ヘレク
脚本=パトリック・シェーン・ダンカン
撮影=オリバー・ウッド
音楽=マイケル・ケイメン
音楽監修=シャロン・ポイル
美術=デピッド・ニコルス
編集=トゥルーディ・シップ
音楽=マイケル・ケイメン
出演=リチャード・ドレイファス、グレン・ヘドリー、ジェイ・トーマス
 
[ストーリー]
 1965年、グレン・ホランド(R・ドレイファス)は高校の音楽教師に就職する。作曲家への夢を捨てることができない彼にとって、教師は生活の手段と割り切った仕事だった。だが実際の教壇に立ってみると生徒にやる気はなく、オ−ケストラの授業もパラパラの状態。しかし一人の生従へのレッスンをきっかけに、生徒たちに音樂に興味をもたせようと次第に熱中していく。67年に息子が生まれ。ジョン・コルトレーンにちなんでコールと名付けた。しかし彼は先天的に聴覚障害があり、意志の疎通もままならぬグレンは家庭を省みず、仕事に没頭する。息子のコールは、父親が聾唖の自分には音楽がわかるまいと思っていることを激しく非難し、グレンはショックを受ける。80年、ジョン・レノン暗殺……。聾唖者のためのコンサートで、彼は息子のためにジョン・レノンの“Beautiful Boy”を手話付きで歌う。95年、教育予算制限で音楽授業がカットされ、グレンは引退を余儀なくされる。引退当日、さぴしく教壇を去ろうとしたホランド先生を過去30年間の教え子たちが焦まって……。
 
[コメント]
 ジョン・レノンの「イマジン」や「ビューティフル・ボーイ」。レイ・チャールズ、スティービー・ワンダー、etc……。この30年問に耳にし、親しんだ数々の名曲が流れる。65年〜95年の問の各時代を彩った曲の数々。一人の音楽教師の半生が、これらの曲をパックに描かれる。しかし、熱血教帥ものではなく、教室ものでもない。教育問題、障害児問題を背負いながら、親として教師として30年の教師生活を送ったホランドという一人の高校教師の人生を淡々と描く。数々の生徒との出会いと別れ、息子の反発と家族の絆の修復、ヴェトナム戦争、ジョン・レノン暗殺といった時代の社会的背景を織り込み、最後は教育予算の制限という現実のなかで退職を余儀なくされ、寂しく去っていく一人の教師が最後に勝ち得たもの……。それは音楽と生徒を相手に格闘した30年の時の流れがうみだした作品だった。原題は「ホランド先生の作品」。主演のリチャード・ドレイファスの演技に注目。 (水)