おすぎの特選映画シアター

11月19日 「おすぎの特選映画シアター」 (やまばとホール)

トゥルー・ロマンス
TRUE ROMANCE
1993年/アメリカ/デイヴィス・フィルム・プロダクション/松竹富士配給/2時間1分
 
監督=トニー・スコット
脚本=クエンティン・タランティーノ
撮影=ジェフリー・L・キムボール
音楽=ハンス・ズィマー
美術=ペンジャミン・フェルナンデス
出演=クリスチャン・スレーター、パトリシア・アークエット、デニス・ホッパー
 
[ストーリー]
 プレスリーとカンフー映画しか頭にないウォリー(C・スレーター)は、誕生日の夜も場末の映画館でソニー千葉の3本立てを観ていると、アラバマ(P・アークエット)というキュートな女の子に誘われ、夢のような1夜を過ごす。実は彼女はウォリーの上司に雇われた娼婦だったが、息投合したふたりはその日の内に結婚する。アラバマにやくざのヒモがいると聞き、ヒモのもとに乗り込んだウォリーは、勢いあまってヒモとその部下を拳銃で打ち抜いてしまう。アラバマの着替えだと思って持って帰ったスーツケースには麻薬が詰まっていた。
 
[コメント]
 今や、飛ぶ鳥を落とす勢いにあるハリウッドの寵児、Q・タランティーノの脚本処女作。よく、シナリオ学校の先生などが「初めは自分のことを書きなさい」と言われるが、そのセオリー通り、タランティーノはC・スレーター演じる主人公に己の姿を投影したファンタジー・アクションを書き上げた。実生活でもレンタルビデオ屋の店員をしながら、東映のアクション映画を貪るように観ていたらしいが、そのオタクぶりは、主人公の部屋に貼ってある『網走番外地』シリーズとおぼしきポスターからもうかがい知れて微笑ましい。構成の妙や話術のキレは、後の自己監督作に譲るものの、ドギついながらもウェットにとんだ台詞や、脇役に至るまでの強烈なキャラクター造形等、タランティーノ独自の世界が早くも展開されている。いつも大味なT・スコットにしては上出来の部類ではあるが、やはりメガホンもタランティーノで、と思ったのは私ばかりではないだろう。 (箕)

ギルバート・グレイプ
WHAT'S EATING GILBERT GRAPE
1993年/アメリカ/シネセゾン配給/1時間57分
 
監督=ラッセ・ハルストレム
原作・脚本=ピーター・ヘッジス
撮影=スヴェン・ニクヴィスト
音楽=アラン・パーカー、ビョルン・イスファルト
美術=ベルント・カブラ
出演=ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ、ジュリエット・ルイス
 
[ストーリー]
 『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』のスウェーデンの名匠ラッセ・ハルストレム監督が、アメリカに招かれて撮った2本目の作品。アイオワ州エンドラ、ハンディを負った弟(L・ディカプリオ)、父の死後過食症になった母を抱えたギルバート(J・デップ)はこの田舎町から出たことがない。キャンピングカーに乗ってこの町にやってきた少女(J・ルイス)との恋、それまで付き合っていた不倫相手のカーヴァ夫人との別れなどを経て、ギルバートは自分の人生を見つめ直す。
 
[コメント]
 車の故障のため、ギルバートの町に留まっていたベッキー達。しかし、故障していた車の部品が届き、車が直りそうと……と思いきや、やっぱり直らなかったといったシーン。この時のギルバートのほっとしたような笑顔は意味深だ。なぜなら彼はベッキーを自分の町に居させるために、わざと車の修理をミスしたかも知れないからだ。だから後半、ベッキー達の車が直ってしまい、明日にも旅立つという時、こんな映画の展開を思わず想像してしまった……ギルバートは金属バットを持ち、徹底的に車を叩き壊し、ベッキーのこの町での滞在はまたまた延びましたとさ、メデタシ、メデタシ……という感じになると思っていたけど、そこはスウェーデンの監督。アメリカ映画なのにアメリカ映画らしからぬ繊細な展開にしてくれた。そしてラストには素敵な再会を用意し、心地よい余韻をこの映画は残してくれる。愛すべき映画がまた1本増えたことに感謝。 (暢)

リバー・ランズ・スルー・イット
A RlVER RUNS THROUGH IT
1992年/アメリカ/アライド・フィルムメーカーズ/東宝東和配給/2時間4分
 
監督=ロバード・レッドフォード
脚本=リチャード・フリーデンバーク
撮影=フィリップ・ルースロ
音楽=マーク・アイシャム
美術=ジョン・ハットマン
出演=ブラッド・ピット、クレイブ・シェーファー、トム・スケリット
 
[ストーリー]
 牧師の厳格な父(T・スケリット)に育てられた2人の兄弟は、釣りを通して人生を学んでいく。兄のノーマン(C・シェーファー)は父に似て、繊細で真面目な性格、弟のポール(B・ピット)は明朗な性格だが、自己破滅的な面を合わせ持っている。正反対な性格の2人の兄弟は社会に出ても違った道を歩みだすが、ひとたび川に入って釣り竿を握ると、堅い絆を確かめ合うことができた。だが、……。
 
[コメント]
 R・レッドフォード、3本目の監督作品。原作は大学教授、ノーマン・マクリーンの自伝小説で、元々はウイリアム・ハートが映画化を狙っていたが、結局実現せず、紆余曲折の結果、最終的にレッドフォードが映画化の実現にこぎつけた。
 この映画で何よりも素晴らしいのはその撮影の見事さで、映画の重要なモチーフとして使われる川のシーンの(川は家族の絆でもある)光と川が溶けこんだような美しさはまさに出色で(撮影監督のフィリップ・ルースロはこの作品でアカデミー撮影賞を受賞)、この映画の大きな見所となっている。また、弟・ポール役を演じたブラッド・ピットの魅力爆発の1作ともなっていて(この映画でファン激増)、若き日のレッドフォードにも似た若気の至り+繊細な演技で新しい魅力を放っている。 (舟)