アドベンチャ−&ファンタジー(夢と冒険)

10月9日 「アドベンチャ−&ファンタジー(夢と冒険)」 (やまばとホール)

ルパン三世カリオストロの城
1979年/東京ムービー新社/1時間40分
 
監督=宮崎駿
原作=モンキー・パンチ
脚本=宮崎駿、山崎晴哉
作画監督=大塚康生
音楽=大野雄二
美術=小林七郎
声の出演=山田康雄、島本須美、石田太郎
 
[ストーリー]
 ヨーロッパの小国・カリオストロ公国は、古くから大公家と伯爵家が実権を争ってきた。しかし、大公家の夫妻が大火事で亡くなってからカリオストロ伯爵(石田)が全権を収めた。貪欲なカリオストロ伯爵は、代々伝えられる財宝を手に入れるために大公家の娘クラリス(島本)との結婚をもくろみ、拒むクラリスをお城の塔に監禁する。カリオストロ公国の財源がニセ札造りであることを知っていたルパンはカリオストロの城に乗り込み、そこで幼い娘時代を知っているクラリスと再会する。結婚式当日、カリオストロ伯爵の野望を阻むため、ルパンは大司教になりすまして2人を待ち受ける。
 
[コメント]
 映画館を出る時、日常生活をすっかり忘れて、見終わった映画の余韻に酔いながらボーっと歩いていく。こういった幸福感を観客に与えられる監督はそう多くはいない。宮崎駿監督は、その中の貴重な一人だ。この映画のラストシーン、去っていくルパンを寂しそうに見送るクラリス。その傍らで、「ルパンは大変なものを盗んでいきました。……それはあなたの心です。」と今まで数々の名画で美男、美女によって言い尽くされたこの台詞を銭形警部が言う配役の妙。最後に国際警察で活躍しているはずの銭形警部のパトカーに埼玉県警と書かれているオチまでついて、見終わった後明日への活力が湧いてくる、愛すべき映画である。 (淳)

セロ弾きのゴーシュ
1982年/オープロダクション/1時間3分
 
監督・脚本=高畑勲
原作=宮沢賢治
撮影=岡芹利明
音楽=間宮芳生
美術=椋尾篁
声の出演=佐々木秀樹、雨森雅司、白石冬美
 
[ストーリー]
 市民楽団、「金星音楽団」でチェロを弾くゴーシュ(佐々木)はなかなかチェロの腕があがらず、いらいらしていた。しかし、今度の「市民音楽会」で、ゴーシュが最も尊敬するベートーヴェンの曲を演奏することになり、家での練習にも一層力が入る。そんな折り、ドアをノックする音がし、ドアを開けるとそこにはいつも野菜畑を荒らしているネコ(白石)がいた。気がたっているゴーシュは直ちにネコを追い返すが、不思議なことにこの日を境に次々とゴーシュの家に動物が訪れるようになる。
 
[コメント]
 この作品の苦楽には、メインとなるベートーヴェンの『田園』に他に間宮芳生作曲の『インドの虎狩り』、『愉快な馬車屋』が使われている。『インドの虎狩り』は不可解な現代音楽であり、かたや『愉快な馬車屋』は題名どおりの愉快な合奏曲である。
 この作品の特徴は、制作者であるオープロ・スタッフが作者宮沢賢治の想定した『田園』を使った作品作りよりも、むしろ間宮氏の曲を子供達が聴いてどう感じるかということを重視している点にある。『心より出る——再び——心に至らんことを』とは、この『田園』作曲者ベートーヴェンの言葉であるが、まさにこの言葉どおりの作品ではないか。私はこの作品を観てそう思った。 (鴨)

水の旅人 侍KIDS
1993年/フジテレビ、オフィス・トゥー・ワン、東宝/1時間46分
 
監督=大林宣彦
原作・脚本=末谷真澄
撮影=阪本善尚
音楽=久石譲
美術=竹中和雄
出演=山崎努、青田亮、原田知世、岸郡一徳
 
[ストーリー]
 小学2年生の悟(吉田)はふとした事から川を流れて来た17センチの侍・墨江少名彦(山崎)と出会う。少名彦の重みのある言動に惹かれ、次第に尊敬の念さえ覚えるようになる悟。その交流の中で、自然の大切さや勇気、礼節といったものを学んでいく。一方、少名彦は水の精としての天寿を全うすべく、大海へと旅立たねばならない。生きるべき時空の異なる2人に宿命的な別れの時が近づいていた。そんなある日、様子のおかしな少名彦を救おうと、悟は美しい水を汲みに水源へ向かった。陽は沈み、暗雲が広がる。悟の危険を察知した少名彦は弱った体に鞭打って救出に向かうのだったが……。
 
[コメント]
 「時」というものの理解を人は「時計」という尺度に従い、人々は慌ただしく生活を送る。少名彦は自然を慈しみ、日常を確実に捕らえ、自らの尺度で「時」を刻む。そんな少名彦に観客も惹かれていくだろう。パラパラと絵本をめくる様にテンポよく、時に激しく、時に優しく、そして奥底にしっとりとテーマを通わせる。雄大な川の流れのように……。表向き「SFXファンタジー大作」とうたわれているが、大袈裟に見せる特撮でなく、良い意味で大作らしからず、監督の大きく、豊かな人柄が反映されるが如く、映画として、映像表現として、魅力に満ち溢れた一作である。ゆったりと腰を据え、既成概念にとらわれず、何気ない場面の一つ一つを、豊かな映像の積み重ねを、そこはかとなく漂う趣を、素直に受け止めてほしい。その素直さの数だけ感動が得られるのだから……。 (学)

ジャイアント・ベビー
HONEY, I BLEW UP THE KID
1992年/アメリカ/ウォルト・ディズニー・ピクチヤーズ/ブ工ナビスタインターナショナルジャパン配給/1時間29分
 
監督=ランダル・クレイザー
脚本=トーム・工バハードット、ピーター・工ルブリング、ゲーリー・グッドロウ
撮影=ジョン・ホーラ
音楽=ブルース・ブロートン
美術=レスリー・ディレイ
出演=リック・モラニス、マーシヤ・ストラスマン、ダニ工ル & ジョシュア・シャリカー(双子)
 
[ストーリー]
 『ミクロキッズ』でうっかりわが子を6mmに縮めてしまったサリンスキー博士(R.モラニス)が、今度は2歳の子供を34mの巨人にしてしまう……。
 サリンスキー博士は電磁物体拡大機の研究に没頭していたが、うっかり2歳になったばかりの3人目の子供アダムちゃん(D&J・シャリカー)に電磁物体拡大機のビーム光線を浴びせてしまう。強力な電気を受けるたびにムクムク体が大きくなり、34mの巨人になったアダムちやんのいたずらで、ラスベガスの街は大パニックに。
 
[コメント]
 色とりどりの、形もさまざまの光るオモチャ(ネオン)が点在する小さな街。そこでは車も生きている人形も自由自在に遊べる。もし、その街が本物のラスヴェガスだったら? いつのまにか大人になってしまった私たちのなかにも、子供の心は残っている。そんな子供の心が紡ぎだした夢の世界が『ジャイアント・ベビー』だ。高層ビルの立ち並ぶ新宿副都心を歩くたび、蟻の視点ではなく、ウルトラマンやゴジラのように手づかみで高層ビルをポキリと折り取ってみたいと夢見た瞬間はなかったか。自分の身体がグングン巨大になって、実物の街を思うまま遊び道具にできたら——と考えると胸が躍る。それを2歳の赤ちゃんがやってのけるから無邪気なファンタジーになる。家族愛、友情、探求心といったデイズニー映画に込められているメッセージを気持ちよく織り込んで、誰でもが楽しめる。 (奈)