第1部 世界に駐留するアメリカ軍
第2部 未来はどこだ? 出口はあるのか?

11月20日 (ベルブホール)

●Time Table●
第1部
11:00−12:15
第2部
14:00−15:46
16:00−18:11
18:20−19:00

スタンディング・アーミー

イエローキッド
ケンタとジュンとカヨちゃんの国
トーク ゲスト:大森立嗣監督

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第1部 世界に駐留するアメリカ軍

-- 日本初公開 --
スタンディング・アーミー
2010年/イタリア/1時間15分
 
監督=エンリコ・パレンティ、トーマス・ファツィ
撮影=エンリコ・パレンティ
編集=デジデーリア・ライネル
音楽=ステファノ・ピロ
出演=ゴア・ヴィダル、ノーム・チョムスキー、チャルマーズ・ジョンソン
 
スタンディング・アーミー
© Effendemfilm and Takae Films
 
[ストーリー]
 アメリカは現在約40カ国に700以上の軍事基地を置き、地球上に米軍基地のネットワークを張り巡らせている。なぜドイツやイタリア、日本、韓国といった国々はいまだに米軍基地を受け入れ続けるのか? この作品は有識者と、基地のあるイタリア、沖縄、インド洋の島の住民へのインタビューを通し、その存在への疑問に答えていく。
 
[コメント]
 今年3月にアメリカを訪れた際、乗り継ぎで降りたダラスで迷彩服を着た若者を何人も見かけた。ハブ空港であるダラスから故郷の街に休暇で戻る兵士たちだった。カーキ色の迷彩服が旅行中の老夫婦やビジネスマンのなかに紛れている光景は、今現在戦争をしている国の生々しさがあった。
 「なぜアメリカは戦争を繰り返すのだろう?」ーー帰国後、同じような疑問を持った2人のイタリア人がいることを新聞で知った。彼らがイタリア北部の街で起こった米軍基地の反対運動を元に作ったのが、この映画だった。
 沖縄でも取材をしているこの作品は、日本とアメリカの間だけで起きているように見えた問題を地球規模の視点で捉えている。これは戦争を繰り返すアメリカと、基地を受け入れている国の人々が見るべき映画である。誰もが望む「安心できる暮らし」は、戦争をしないと手に入らないのか? その答えを見つけるのは、政府ではなく、私たち一人一人にかかっているのだから。(三)

●監督紹介
エンリコ・パレンティ監督(Enrico Parenti)

 1978年生まれ。イタリア系アメリカ人。フリーランス映画制作者。イタリア国営放送局(RAI)や独立系プロダクション制作の数々のドキュメンタリーで、カメラマンとして活躍。『スタンディング・アーミー』は長編初監督作品。
 
トーマス・ファツィ監督(Thomas Fazi)

 1982年生まれ。イギリス系イタリア人。研究者兼通訳。イタリアの数々の出版社で政治コンサルタントとして活躍している。『スタンディング・アーミー』は初監督作品。
 
[メッセージ]
Dear friends in Japan,

Although Japan didn't even figure in the initial screenplay, it ended up playing the lion's role in the final version of the film. This is not only because what we saw in Okinawa shocked us way more than anything else we had witnessed during the course of the film's realization, in terms of the political, social and we dare say spiritual impact of the bases. But also, if not primarily, because we were touched and inspired by the people we met there more than anyone else we had met during the making of the film. These included not only Okinawans who had been courageously struggling for years to free their land from an oppressive foreign military presence, never giving up their hopes even in the face of such a stark power asymmetry (many Okinawans see themselves as struggling against two governments: the American and their own). But also many people from the Japanese mainland who had made the struggle of the Okinawan people their own struggle, in some cases dedicating their life to it. These people are in general a testimony of the heights which the human spirit can reach, and in particular of the strength and vision of the Japanese spirit.
They remind us that throughout history men and women like them have, against all odds, overcome injustice and oppression, and that there's no reason why today we shouldn't be able to bring justice to the people of Okinawa and to all the others who bear the weight of our modern empire. We hope this film will inspire others in Japan and elsewhere around the world to follow their example.

With hope and respect,

 親愛なる日本の皆さんへ
 この作品の企画を立てた当初、日本で取材することは考えてもいませんでした。それが、出来上がった作品では日本での撮影部分こそが最も重要なパートとなっていました。
 それは、私たちが沖縄で目にしたことが、政治的、社会的、そして精神的な意味において、この作品の制作過程で目撃した何よりも衝撃的だったことがあります。しかしそれ以上に、沖縄で出会った人々に私たちが強く刺激を受けたからでもありました。彼らの中には、外国によって力ずくで不当に取り上げられた土地を取り返すべく、何年も勇敢に戦い続けている人々や、不平等な力関係(沖縄県民は二つの政府と戦っていると表現しますーアメリカ政府と自分たちの政府と)に直面しながらも決して希望を捨てない人々がいました。そしてもちろん本州にも、自分自身の人生をかけて沖縄県民とともに戦っている人たちがいました。
 彼らはみんな、人間の持つ精神性の頂点を、そして日本人の姿勢と心の強さを見せてくれました。その姿は私たちに、こう告げているように思えます。「このような人々こそが、歴史を通し、困難をものともせず、不正や圧迫に打ち勝ってきたのだ」と。そして、「それならば今、私たちが沖縄やその他すべての『帝国』に押しつぶされている人々に正義をもたらせない理由はない」と。
 彼らの姿に続こうと、日本の、そして世界の人々がこの映画によって勇気づけられることを願っています。
 希望と敬意を込めて

第2部 未来はどこだ? 出口はあるのか?

イエローキッド
2009年/東京藝術大学大学院映像研究科製作・提供/1時間46分
 
監督・脚本=真利子哲也
プロデューサー=原尭志
撮影=青木譲
美術=保泉綾子
音楽=鈴木広志、大口俊輔
出演=遠藤要、岩瀬亮、浜岡一喜、町田マリー、玉井英棋、三浦力、でんでん
 
イエローキッド
 
[ストーリー]
 都会の片隅の木造アパートで、痴呆症を患った祖母とともに夢も希望もない質素な生活を送るボクサー志望の青年・田村(遠藤)は、自分が通うボクシングジムで、気鋭の漫画家・服部(岩瀬)と出会う。二人は意気投合し、服部は新作漫画「イエローキッド」のモデルを田村に決めて描き始めるが、やがて「田村の生きる現実の世界」と「服部の描く漫画の世界」が交錯し始める。
 
[コメント]
 ヒーロー(正義)が、ヒール(悪)と戦い、ヒロインを救う。はたしてこのような筋書きが現代ではどこまでリアリティを持つのでしょうか。それに対し真利子哲也監督は、現実と妄想、主観と客観、理性と欲望、リアルとバーチャル、自己と他者、倫理と背徳、本物と偽者、金持と貧乏、社会と個人、メインストリームとインディーズ、常人と狂人、あらゆる二項対立をすり抜けて「不愉快なわかりやすさ」に戦いを挑みます。それは私たちの周りを取り巻く硬直した既成概念に揺さぶりをかけ、もう一つの(あるいは二つ以上の)視点を映画のなかに作り出します。
 世界は単純でもなければ平板でもないという確固とした叫びは全編を通して通奏低音のように流れており、当初考えられていた『コンプレックス』という題名のごとくまさに複合体のような傑作がまるで「漫画」のように製作費200万円で「現実」に生まれました。(半)

ケンタとジュンとカヨちゃんの国
2010年/「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」製作委員会/リトルモア配給/2時間11分
 
監督・脚本=大森立嗣
撮影=大塚亮
衣裳=伊賀大介
音楽=大友良英
編集=普島信一
出演=松田翔太、高良健吾、安藤サクラ、柄本佑、新井浩文、宮崎将、美保純、柄本明
 
ケンタとジュンとカヨちゃんの国
© 「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」製作委員会
 
[ストーリー]
 ケンタ(松田)とジュン(高良)は同じ施設で育った幼なじみ。ふたりは工事現場で壁を壊す「はつり」を生業としていた。低賃金、過酷な労働環境、先輩(新井)の執拗ないじめ……そんな日々が続くある日、ふたりはナンパで出会ったカヨちゃん(安藤)とともに、盗んだ車で旅に出るーー。
 
[コメント]
 ケンタやジュンぐらいの甥っ子がいてもおかしくない年齢の私にはとても辛い場面がたくさん。(ごめんね、若い人たちをこんなふうにしてしまったのは私たち大人の責任だよね)と思いながら観ていくうちに彼らの旅は若い人に限らずさまざまな世代の旅なのだと気づきました。壁また壁、行き止まり。出口なし、未来なし、展望なし、希望なし。出口の探し方も希望の持ち方もわからない、未来のありかさえ知らないそんな旅。けれどその刹那には幸せがあり充足感があり安心もある。その刹那はほんとに一瞬、浅い呼吸をするだけの時間かも知れないのだけれど……と、たくさんの連想をさせてくれたこの作品。前作『ゲルマニウムの夜』から4年、大森立嗣監督の新作はやっぱり待ってた甲斐があったなぁと思っていたところに流れたエンディング曲。これに改めてガツンとやられました。
 ところでケンタとジュンが壊していた壁。あなたにとっての「壁」は何ですか?(越)

●ゲストの紹介
大森 立嗣監督(Omori Tatsushi)

 1970年東京生まれ。プロデュース作品『波』(2001年、奥原浩志監督作品)が第31回ロッテルダム映画祭に出品、NETPAC賞を受賞。05年、花村萬月原作『ゲルマニウムの夜』で初監督。国内外の数々の映画祭に出品され高い評価を受ける。本作は待望の第2作目。第60回ベルリン国際映画祭フォーラム部門、第34回香港国際映画祭正式出品、第10回東京フィルメックス特別招待作品である。10年夏、町田市などで撮影が行われた『まほろ駅前多田便利軒』を現在製作中で、11年GW公開予定。

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