第1部 朝鮮半島の家族の絆
第2部 大人の恋の秘密と嘘

11月28日 (パルテノン多摩小ホール)

●Time Table●
第1部
10:15−12:02
12:20−14:30
第2部
15:00−16:40
16:55−18:52
18:52−19:30

クロッシング
息もできない(R15+)

パーマネント野ばら
スイートリトルライズ
トーク ゲスト:矢崎仁司監督、狗飼恭子氏

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第1部 朝鮮半島の家族の絆

クロッシング
Crossing
2008年/韓国/太秦配給/1時間47分
 
監督=キム・テギュン
脚本=イ・ユジン
撮影=チョン・ハンチョル
音楽=キム・テソン
出演=チャ・インピョ、シン・ミョンチョル、チョ・ダヨン、ソ・ヨンファ、チョン・インギ
 
クロッシング
© 2008 BIG HOUSE / VANTAGE HOLDINGS. All Rights Reserved.
 
[ストーリー]
 北朝鮮の炭鉱で働くヨンス(チャ・インピョ)は、病気の妻ヨンファ(ソ・ヨンファ)の薬を手に入れようと息子のジュニ(シン・ミョンチョル)を残し、身の危険を冒して中国に渡る。お金を得るために不法労働に就くが、摘発を逃れるために息を潜めて暮らす。その後、支援者の手によって韓国に渡ったヨンスは、妻と息子の元に戻ろうとするが……。
 
[コメント]
 映画『クロッシング』は、ささやかな幸福を願う家族が、飢餓に苦しむ北朝鮮で必死に生き抜こうとする姿を描いています。悲劇に見舞われた父と母、息子が、強く結び付いた親子の物語です。
 この映画の制作に際して、北朝鮮の人々の生活を再現するため、膨大な量の資料の調査と、インタビューが行われました。スタッフのなかには、実際の脱北者もいて、彼らの意見を聞いて内容が修正されることもありました。さらに、中国、韓国、モンゴル3カ国に渡る撮影、収容所のセットの組み立て、韓国映画初のゴビ砂漠での撮影と、厳しい条件での制作が続きました。そのうえ、当時の韓国政府は北朝鮮に融和的な政策をとっていたので、政府の方針に合わないこの映画は、秘密裏に撮影されました。
 この映画を観た人は、北朝鮮の過酷な現実を知ることになります。そして同時に、自分の周りの大切な人々について、改めて考え直す機会を与えてくれるでしょう。(彰)

息もできない
Breathless
2008年/韓国/ビターズ・エンド、スターサンズ配給/2時間10分
 
監督・脚本・編集=ヤン・イクチュン
撮影=ユン・チョンホ
編集=イ・ヨンジュン
音楽=インビジブル・フィッシュ
出演=ヤン・イクチュン、キム・コッピ、イ・ファン
 
息もできない
© 2008 MOLE FILM ALL Rights Reserved
 
[ストーリー]
 韓国社会で「家族」という逃れられないしがらみのなかで生きる男女の物語。父への激しい怒りと憎しみを抱き社会の底辺でチンピラとして生きるサンフン(ヤン・イクチュン)はある日、心の傷を抱えながらも勝気に生きる女子高生ヨニ(キム・コッピ)と出会う。理由もなく強烈に惹かれ合った2人は今まで経験したことのない幸せな時を過ごす、やがて運命の歯車が狂いだすまではーー。
 
[コメント]
 韓国語の「シバラマ」という、日本語で言ったら「くそ野郎」、英語で言ったら「Fuck You」のような卑語が口癖のサンフンは、劇中でひとことしゃべるたびに「シバラマ」と付け加えます。その数はおそらく100を超えている印象を受けました。
 しかしヨニと出会ってから、サンフンの「シバラマ」という言葉は、ただの罵声だけではない色々な意味を帯び、時によっては愛情表現での「シバラマ」さえあるように変わってゆきます。その変化が結実する漢江の岸辺のシーンは、街の灯りが川面に反射し水の音が2人を包み込み、傷ついた心が寄り添い2人の魂が邂逅する、まさに息もできないほど美しい光景です。
 製作・監督・脚本・編集・主演のヤン・イクチュンの全身全霊をこめた初長編映画で、途中で製作資金が足りなくなった時は、監督自身の家を売り払ってまで完成にこぎつけたという渾身の作です。(半)

第2部 大人の恋の秘密と嘘

パーマネント野ばら
2010年/『パーマネント野ばら』製作委員会製作/ショウゲート配給/1時間40分
 
監督=吉田大八
原作=西原理恵子
脚本=奥寺佐渡子
撮影=近藤龍人
音楽=福原まり
出演=菅野美穂、江口洋介、小池栄子、池脇千鶴、宇崎竜童、夏木マリ
 
パーマネント野ばら
© 2010 映画「パーマネント野ばら」製作委員会
 
[ストーリー]
 なおこ(菅野)は娘を連れて実家に出戻り、母親(夏木)が営む美容室"パーマネント野ばら"を手伝っていた。そこは町の女が集まっては互いの恋を打ち明ける憩いの場となっていた。一方、なおこも高校教師のカシマ(江口)と恋をしていたが、そこにはある秘密が隠されていた……。
 
[コメント]
 原作は次々と作品が映画化されている西原理恵子の同名漫画。本作は原作が持つ魅力、切なさを丁寧にすくい取り、幾つになっても恋する心を忘れない女たちのたくましさ、純粋さ、愛らしさを優しい目線で描いた傑作だ。
 男に弱く、情にもろいフィリピンパブのママ・みっちゃん(小池)、すさまじく男運が悪いともちゃん(池脇)、夫に逃げられた"お母ちゃん"(夏木)。個性的で魅力的な女たちに起こる出来事を、菅野美穂演じるなおこはただ静かに見守っている。
 だが、恋人のカシマと会っている時のなおこは別人のように生き生きとしている。
 初々しい、可憐な少女に戻る。その恋心に説得力があるのは、江口洋介が"いい男"の象徴のようなカシマを見事に演じているからこそであろう。この二人のシーンが鮮やかだからこそ、ラストで見せるなおこの表情は切なく、美しい。
 それにしても吉田大八監督は男性なのになぜここまで女性のことを上手く描けるのだろうか。ますます今後の活躍が楽しみである。(よ)

スイートリトルライズ
2009年/「スイートリトルライズ」製作委員会製作/ブロードメディア・スタジオ配給/1時間57分
 
監督=矢崎仁司
原作=江國香織
脚本=狗飼恭子
撮影=石井勲
音楽=妹尾武
出演=中谷美紀、大森南朋、池脇千鶴、小林十市、大島優子、安藤サクラ、黒川芽以
 
スイートリトルライズ
© 2009「スイートリトルライズ」製作委員会
 
[ストーリー]
 人気テディベア作家の瑠璃子(中谷)は、聡(大森)と結婚して3年になる。誰からみても理想の夫婦だが、すれ違う心をどう埋めたらいいのかわからない。
 やがて、それぞれ別な相手と恋を始めるふたり。ただ真摯に、貪欲に恋をする瑠璃子と聡。同じ屋根の下で暮らす夫婦の間に、甘い嘘が静かに積み重なってゆく……。
 
[コメント]
 矢崎仁司監督の映画はいつも、日常生活の向こう側に横たわる暗い影のようなものを映し出す。触れたら壊れてしまうものをそっとすくい上げるように。
 皆本当は気付いている(けれど、見ないようにしている)ことーー例えば。結婚しても、誰かと一緒にいても孤独からは逃れられないということ、生と死は隣り合わせであることーーを暗闇の中で思い出す。
 印象的なセリフがいくつもある。
 「この家には恋が足りないと思う」とか「これ以上望んだらあなたを失うかもしれないと思う恐怖なんて、あなたにわかるはずがない」とか。
 日常生活に似つかわしくない、こんな言葉があまりに率直に発せられるシーンにはどきりとした。
 恋の喜びと愛し続けることの孤独をくっきりと描き出したこの作品は、スイートなだけでない人生の奥深さを味わわせてくれる。抱きしめてはくれないけれど、腕の中に入れてくれる夫のように。(黒)

●ゲストの紹介
矢崎 仁司(Yazaki Hitoshi)

 山梨県生まれ。1980年『風たちの午後』を製作。ヨコハマ映画祭自主制作映画賞ほか多数受賞。91年には『三月のライオン』を発表。ベルギー王室主催ルイスブニュエル「黄金時代」賞受賞。95年に渡英し、2000年、ロンドンを舞台に『花を摘む少女と虫を殺す少女』を発表。前作は魚喃キリコ原作、池脇千鶴主演『ストロベリーショートケイクス』(06年)。海外の映画祭で高い評価を受け続け、1作ごとに国内外で注目を集める稀有な監督。
 
狗飼 恭子氏(Inukai Kyoko)

 作家・脚本家。1992年、TOKYO FM「LOVE STATION」のショート・ストーリー・グランプリに入賞し、高校時代から雑誌等に作品を発表する。95年、処女小説「冷蔵庫を壊す」を発表。以降、小説・脚本・エッセイなど、多方面に活躍。主な作品として「あいたい気持ち」、「低温火傷」、「国境/太陽」、エッセイ集「ロビンソン病」など。脚本作品に『天国の本屋〜恋火』(04年、篠原哲雄監督)、『七夜待』(08年、河瀬直美監督)など。矢崎監督とは『ストロベリーショートケイクス』に続いてのコンビとなる。

◆主催・お問合せ◆

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