映画の誕生

11月29日 「映画の誕生」 (やまばとホール)

国民の創生
THE BIRTH OF A NATI0N
1915年/アメリカ
 
監督=デイヴィッド・ウォーク・グリフイス
脚本=デイヴィッド・ウォーク・グリフイス、フランク・ウッズ
撮影=ジョージ・W・“ビリー”ビッツアー
出演=リリアン・ギッシュ、メイ・マーシュ、ヘンリー・B・ウォルソール
 
[コメント]
 アメリカ映画の父と呼ばれるグリフイスが創りあげた映画史上に輝く名篇。原作はトーマン・ディクスンの『クランズマン』当時1、2巻ものの短篇が多いなかで、この映画は空前の長篇として仕上げられ、原作者の要請もあって「国民の創生」と改題された。南北戦争の中で、北軍と南軍に引きさかれてゆくキャメロン家とストウンマン家の人々の運命を描いた壮大な叙事詩。南北戦争をこれほど恐ろしく見せた映画はいまだ生れていないと言われる一面、黒人が悪であり、K・K・K団が正義の士であるような設定はごうごうたる非難を浴びた。この非難を受け入れたとしても、「国民の創生」は映画が単なる見せ物ではなく芸術作品であることを実証してみせた、映画の新しい時代の創生でもあった。今回上映されるものはレイモンド・ローハウアー氏によって蒐集・復元されたサウンド版である。

雄呂血(おろち)
1925年/阪妻プロ
 
監督=二川文太郎
脚本=寿々喜多呂九平
撮影=石野誠三
出演=阪東妻三郎、関操、環歌子
 
[コメント]
 独立プロをおこした阪妻プロの第1回作品。初めこの映画は「無頼漢(ならずもの)」という題であったが、検閲で反逆思想が匂うのは好ましくないとされ「雄呂血」と改めた。オロチのように忌み嫌われる男という意味らしい。完成後も虚無的という理由で1200フィート検閲でカットされた。阪妻が登場する前の時代劇は一般に旧劇と呼ばれ、その立ち回りでは、一人斬るごとに目玉をグリグリさせ見得をきる冗長なものであった。それから一歩出て剣の構えに人生態度を象徴するポーズと激しい立ち回りを持ちこんでチャンバラを作り出した阪東妻三郎のサイレント時代の代表作がこの作品である。「雄呂皿」に盛られたものは、終始一貫弱者の憤りの爆発である。暴虐な強者の権力に反逆した若侍が不幸な運命にあやつられて転落し、善良でありながら世に容れられず、無頼漢と誤解され、没落していく悲劇である。この映画が今日見られるのは、持ち主を見つけだすまで、長年月かけて探された無声映画鑑賞会の松田春翠氏(故人)のおかげである。