第1部 問われ続ける人権
第2部 旅とロック

11月22日 (パルテノン多摩小ホール)

●Time Table●
第1部
10:30−12:14
12:35−14:43
第2部
15:40−17:45
18:00−19:54
19:54−20:20

扉をたたく人
ミルク(PG12)

少年メリケンサック
色即ぜねれいしょん
トーク ゲスト:渡辺大知氏、司会:森直人氏

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扉をたたく人
The Visitor
2007年/アメリカ/ロングライド配給/1時間44分
 
監督・脚本=トム・マッカーシー
撮影=オリヴァー・ボーケルバーグ
音楽=ヤン・A・P・カチュマレク
作曲=A・R・ラフマーン
出演=リチャード・ジェンキンス、ヒアム・アッバス、ハーズ・スレイマン、ダナイ・グリラ、マリアン・セルデス
 
扉をたたく人
© 2007 Visitor Holdings, LLC All Rights Reserved
 
[ストーリー]
 愛する妻がこの世を去って以来、すべてに心を閉ざし、孤独に生きていた大学教授ウォルター・ヴェイル(R・ジェンキンス)。学会に出席するため、久しぶりにニューヨークにある別宅のアパートを訪れると、そこには見ず知らずの若いカップル、移民青年タレク(H・スレイマン)とセネガル出身の恋人ゼイナブ(D・グリラ)がいたーー。
 
[コメント]
 無気力な毎日を送っていた主人公が移民青年と出会い、友情、ジャンベ(アフリカン・ドラム)、ロマンスを通して心の扉を開いていく姿を描いたのは、自身が俳優として『父親たちの星条旗』など多くの出演作を持つトム・マッカーシー監督。長年尊敬していたリチャード・ジェンキンスのためにウォルターという人物を書き上げたという。ジェンキンスは俳優生活40年で初めての主役ながら、本年度アカデミー賞主演男優賞ノミネートと見事に監督の期待に応えた。
 「9.11」のテロ以降、アメリカは移民政策を大幅に変更、閉ざされてしまった扉の前で途方にくれる移民希望者・不法滞在者のリアルな姿は現代アメリカの影の部分でもある。
 また、ジャンベに代表されるアフリカン・ドラムの躍動感溢れる音楽が、この作品のもうひとつのの魅力だ。
 アメリカでの封切り時、上映館はわずか4館。やがてその感動が人から人へと伝わり、全米興行収入トップ10にランクインした上質の作品を楽しんでもらいたい。(い)

ミルク
MILK
2008年/アメリカ/ピックス配給/2時間8分
 
監督=ガス・ヴァン・サント
脚本・製作総指揮=ダスティン・ランス・ブラック
撮影=ハリス・サヴィデス
音楽=ダニー・エルフマン
出演=ショーン・ペン、エミール・ハーシュ、ジョシュ・ブローリン、ディエゴ・ルナ、ジェームズ・フランコ
 
ミルク
© 2008 FOCUS FEATURES LLC, 2009 PiX Inc. / MILK for Japan
 
[ストーリー]
 1970年代のサンフランシスコ。生来の人柄で同性愛者やヒッピーたちに慕われるミルク(S・ペン)は、マイノリティに対する権利と機会の平等を求め、世間の差別や偏見と戦いながら市政執行委員の選挙に立候補するーー。
 同性愛者であることを公表した上で、米国史上初めて公職に就いた政治家ハーヴィー・ミルクの半生。
 
[コメント]
 最初にお断りしておくが、『ミルク』=「牛乳」の話ではない。というのは、日本ではこのハーヴィー・ミルクという人物は、あまり知られていないと思うからだ。私自身もこの映画を知るまでは彼の存在を知らなかった。
 同性愛者というだけで警察に逮捕されていた時代に、ミルクは同性愛者を公表した上で初めて公職に就いた。本作は彼の人生最後の8年間に焦点を当て、その人間関係など、人間ハーヴィー・ミルクの実像に迫っている。
 自身も同性愛者であることを公表しているガス・ヴァン・サント監督は、過去に『マラノーチェ』『マイ・プライベート・アイダホ』といった作品で、社会の枠組みからはみ出し、性別を超えた愛にさまよう若者たちを描いている。本作にもそういった要素が表れているが異なるのは、ミルクが40歳のサラリーマンであったことだ。それもまた見所ではないだろうか。監督は、この映画をただの英雄の伝記ではなく、ドキュメンタリー・タッチでありながら壮大な人生ドラマに仕上げている。(林)

少年メリケンサック
2009年/「少年メリケンサック」製作委員会製作/東映配給/2時間5分
 
監督・脚本=宮藤官九郎
撮影=田中一成
音楽=向井秀徳
メインテーマ=銀杏BOYZ
衣装=伊賀大介
アニメーション監督=西見祥示郎
出演=宮崎あおい、佐藤浩市、木村祐一、田口トモロヲ、三宅弘城、ユースケ・サンタマリア、勝地涼、ピエール瀧
 
少年メリケンサック
© 2009「少年メリケンサック」製作委員会
 
[ストーリー]
 レコード会社に勤めるかんな(宮崎)は、ネット上でイケメン4人組パンクバンド・少年メリケンサックを発見する。早速、契約のためメンバーを訪ねると、そこには50歳過ぎの酔っぱらいが……。すでにバンドは25年前に解散していたのだ。愕然とするかんなだが、ネット上でのバンド人気は高まるばかり。かんなは復活をかけた彼らの全国ツアーに同行するはめになる。
 
[コメント]
 宮藤官九郎初監督作品から4年ぶりとなる本作。前作は、舞台から飛び出たような映画だったが、本作はその舞台のテンポの良さを活かしつつも、現実に生きるダメオヤジとそれに翻弄されるかんなとの様子を描いたハチャメチャパンク映画だ。
 くだらないギャグに笑わされるのはもちろんだが、若いかんなと子供のままオヤジになったような彼らとの、世代を超えたやりとりにも注目だ。特に良いのは、どうでもいいことでムキになる車中での言い争いの場面だ。
 このオヤジ集団には常識も無ければ、協調性も無い。だが、音楽に関しては「笑われても、やりたいからやる」という魂を持っている。がむしゃらに叫び続ける彼らがいつしかカッコ良く見えるのだ。ダメオヤジなのには変わらないが、楽しければ良いじゃないか、と思えてくる。
 彼らに本気で怒るかんなと反省しないオヤジたちは、手に負えない息子とそれを叱る母親のような関係だ。そんなオヤジたちを思うと切なくなるが、この関係は続いてほしい。(由)

色即ぜねれいしょん
2009年/『色即ぜねれいしょん』フィルムパートナーズ製作/スタイルジャム配給/1時間54分
 
監督=田口トモロヲ
原作=みうらじゅん
脚本=向井康介
撮影=柴主高秀
音楽=大友良英
主題歌=渡辺大知、峯田和伸、岸田繁
出演=渡辺大知、峯田和伸、岸田繁、堀ちえみ、リリー・フランキー、臼田あさ美
 
色即ぜねれいしょん
© 2009『色即ぜねれいしょんズ』
 
[ストーリー]
 僕の名前は乾純(渡辺)。京都の仏教系男子高に通う高校生。友達には「イヌ」って呼ばれている。ロックな生き方をしたいけど、気持ちとは裏腹に、変わらない毎日。あの夏休みが来るまでは……。「フリーセックスの島行かへん?」友達の一言から、世界が変わり始める。しまえないほどのドキドキを胸に。
 
[コメント]
 6年振りに、盟友みうらじゅん(原作)×田口トモロヲ(監督)復活!! 前作『アイデン&ティティ』では、ロックバンドを通して、描かれていたが、今作では、旅を通して冴えない文科系男子の青春奮闘記を、繊細にも滑稽に演出している。主人公、純を演じる渡辺大知(黒猫チェルシー)は役者デビューとなるが、思春期の初期衝動を自身のバンドと同様、純粋に表現している。その演技は、青春時代の不器用さとうまく溶け込んでいる。
 旅のなかで、出会い・恋愛・別れを経験し、世界が変わり始める。自分を曝け出している人に嘘はなく格好悪さを感じるが、それこそが格好よく、ロックを感じる瞬間であり、面白い。そこに文科系と体育会系の境界線はない。年代も性別も関係ない。借り物のコピーではなく、自分らしく生きる純の姿に共感を覚え、人生の旅と重ね合わせる。
 それにしてもみうらじゅんは憧れを見せるのではなく、共感を見せることに秀逸だ。(高)

●ゲストの紹介
渡辺 大知氏(Watanabe Daichi)

 渡辺大知氏のプロフィールは、「こちら」をご覧ください。
 
司会:森 直人氏(Mori Naoto)

 1971年生まれ、和歌山市出身。映画批評、その他雑文業。「キネマ旬報」「朝日新聞」「この映画がすごい!」「映画秘宝」「クイック・ジャパン」「テレビブロス」「メンズノンノ」「ハリウッドチャンネル(Web)」などに執筆中。著書に「シネマ・ガレージ〜廃墟のなかの子供たち〜」(フィルムアート社)、編著に「21世紀/シネマX」「日本発映画ゼロ世代」(フィルムアート社)などがある。

◆主催・お問合せ◆

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