河瀬直美を育んだドキュメンタリーの世界

11月22日 「河瀬直美を育んだドキュメンタリーの世界」 (ヴィータホール)

●Time Table●
13:00−13:40
13:55−14:45
15:00−15:43
16:00−16:40
16:55−17:45
18:00−18:43
につつまれて
きゃからばあ
垂乳女 Tarachime
につつまれて
きゃからばあ
垂乳女 Tarachime

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につつまれて
1992年/組画製作/ビターズ・エンド配給/40分
 
監督、撮影、編集=河瀬直美
出演=河瀬宇乃、河瀬直美
 
につつまれて
© 組画
 
[ストーリー]
 河瀬監督が、20年以上会っていない父親を探し求めながら、自らの出自を問うドキュメンタリー。写真や戸籍の記録を頼りに、父親を探し続ける。そして父に近づくにつれて、再開への畏れを抱きつつもカメラを、回し続ける……。
 
[コメント]
 本作品は1992年に製作され、95年度山形国際ドキュメンタリー映画祭国際映画批評家連盟特別賞受賞した。
 この『につつまれて』は河瀬監督が自分のアイデンティティを模索し、自分と向き合う自省録的作品である。静かで内省的な映像、無音、光と影、寂しげな静物画と自身のスチル写真。淡々と進むなかで家族を求めつつも、それが正しいのか自問する自分をさらけ出したドキュメンタリーである。
 ときおり作品中に登場する監督自身の笑顔の映像、それを通して彼女は自分の辛さを吐露していく。そして、最後に一瞬だけ映し出される父親と思われる恥ずかしげに笑う男性。彼女の辛さが少しは軽くなったのであろうか。 (河)

きゃからばあ
2001年/遷都、組画製作/組画配給/50分
 
監督・撮影・編集=河瀬直美
撮影=猪本雅三
録音=菊池信之
仏プロデューサー=ルチアーノ・リゴリー二
出演=河瀬宇乃、彫武、河瀬直美
 
きゃからばあ
© 組画
 
[ストーリー]
 カメラを手に、幼い頃に自分のもとを去った父親を探し出した『につつまれて』から9年の時を経て、河瀬監督は再び家族と向き合うことになった。
 
[コメント]
 「突き詰めていけば、表現の世界に他者は必要ない」 本作の中盤、こんな言葉が河瀬監督の口から零れた。実父の訃報を受け止め、新しい家庭でも一つの別れを迎えた河瀬監督。不安定さを抱えたまま、自分を生んだ実母と大切に育ててくれた養母に、自分はどうして生まれてきたのかと問い掛ける。
 形は違えども、私たちは誰しも自分の奥底にある孤独を抱えながら生きている。愛情を求めるばかりでは埋まらないこの孤独は、他者の孤独に寄り添う強さと優しさを持ってでしか埋まらないものではないか。カメラを通じて静かに家族を、そして自分を見つめ続けてきた河瀬監督。仏教用語で空、風、火、水、土を意味し、転じてこの世に存在するすべてのもの、という意味を持つ本作を撮り終え、一体どんな思いを抱いたのだろう。 (早)

垂乳女 Tarachime
2006年/遷都、組画製作/組画配給/43分
 
監督=河瀬直美
出演=河瀬宇乃、光祈、河瀬直美
 
垂乳女 Tarachime
© 組画
 
[ストーリー]
 これまで家族、生と死などをテーマに作品を作り続けてきた河瀬直美が、自身の出産と老いていく養母との関係を通して“いのち”の繋がりを描いた作品。
 
[コメント]
 力強いまでの優しさがスクリーンから溢れてくる。目に見えない、だがはっきりとした一つ一つの“いのち”への溢れんばかりの“愛しさ”。これは、自身と家族にカメラを向け続けてきた、河瀬監督のこれまでの作品からは感じられなかったものだ。相手の弱さをも包み込むような愛しいものへの眼差しは、途中口論となる年老いた養母へも向けられている。自分自身と、家族と向き合い続けた河瀬監督が手にした“強さ”は、一人の女性として、母として、また表現者としての彼女に何をもたらすのだろうか。
 「命を授かるということは、命を分かつということ。」監督が言うように、この作品を通して身近な“いのち”への愛しさを、改めて噛み締める人が一人でも増えてくれれば、と強く思う。 (早)

●監督紹介
河瀬 直美 監督(Kawase Naomi)

 1969年生まれ、奈良市出身。映画作家。『につつまれて』(92年)、『かたつもり』(94年)が、国内外で注目を集める。劇場映画デビュー作『萌の朱雀』(96年)は、97年カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を史上最年少受賞。2007年には、『殯の森』で第60回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した。最新作に今秋公開したばかりの『七夜待』がある。現在は、2010年よりスタートする「なら国際映画祭」を準備中。

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