戦争を生きた人たちから学ぶ

11月26日 「戦争を生きた人たちから学ぶ」 (ベルブホール)

●Time Table●
12:00−14:40
15:00−16:47
17:00−18:41
18:50−19:30
日本鬼子 リーベンクイズ
あんにょん・サヨナラ
蟻の兵隊
トーク 池谷薫監督ほか

日本鬼子 リーベンクイズ
2001年/『日本鬼子』製作委員会製作/『日本鬼子』製作委員会、イメージフォーラム配給/2時間40分
 
製作・監督=松井稔
製作・撮影=小栗謙一
ナレーション=久野綾希子
音楽=佐藤良介
 
日本鬼子 リーベンクイズ
 
[コメント]
 日中15年戦争・元皇軍兵士の告白
 実に憎むべき、わたくしであります。戦争を知らない世代がほとんどを占めるようになった日本。そんな日本の日常の中で、14人の老人が半世紀以上昔のことをたんたんと語っている。1939年9月の満州事変に始まり、日本のポツダム宣言受諾で幕を閉じた太平洋戦争終結まで、15年もの日本による武力侵略が続いた日中15年戦争。彼らが語るのは、中国大陸での元皇軍兵士だった自身が行った加虐行為の数々だった。思い出したくない、しかし決して忘れることができない、まして、なかったことになどできない残虐な加虐行為の数々。狂気のような非日常な行為が如何に当時の日常となっていったのか、組織の中での個の弱さをまざまざと見せつけられる。
 映画を通して戦争の実像を伝えたいという痛切な思いで行われた告白、証言を、真摯に受け止め、彼らが背負ってきた加害の記憶をより多くの方の胸に刻んで欲しいと思います。 (早)

あんにょん・サヨナラ
2005年/日本・韓国/『あんにょん・サヨナラ』製作委員会製作/『あんにょん・サヨナラ』上映委員会配給/1時間47分
 
監督=キム・テイル
共同監督=加藤久美子
撮影=ジ・ヘ、高部優子
音楽=チョン・ヘウォン
出演=イ・ヒジャ、古川まさき
 
あんにょん・サヨナラ
 
[コメント]
 中国・韓国との国際関係のなかで、負の課題とされる「靖国問題」が、A級戦犯の合祀にとどまらないことを問いかける、日韓共同のドキュメンタリー。
 太平洋戦争下に徴用され、大日本帝国の陸軍軍属として靖国神社に祀られた父親を取り戻すため、「靖国合祀取消訴訟」の原告となった女性の活動を主に、追った映像記録である。
 靖国神社側の対応と周辺の状況、また、判明した戦没地である中国現地の人々、あるいは太平洋戦争の激戦地・沖縄に建てられている朝鮮人軍人の碑、これらにまつわる人々の証言の数々が重くのしかかってくる。
 靖国神社の合祀が取り消されない限り、「望郷の丘(海外で死を遂げた、韓国人墓地)」に父の名を刻めないという、原告女性イ・ヒジャの叫びは、観る者に迫り、鋭く突きつけてくる。 (きよか)

蟻の兵隊
2005年/『蟻の兵隊』製作委員会/蓮ユニバース配給/1時間41分
 
監督=池谷薫
出演=奥村和一、金子博、村山隼人、藤田博、百々和、森原一、宮崎舜市
 
蟻の兵隊
 
[コメント]
 『延安の娘』(2003年)の池谷薫監督による、「日本軍山西省残留問題」を題材に撮りあげた『蟻の兵隊』。主人公は、軍籍が抹消されたことを知らされず、日本軍の命令で、第二次世界大戦後も中国の内戦に参加した元残留日本兵・奥村和一氏。本作品は、彼の今現在の闘いと、「残留問題」の真実を知るための旅を追ったドキュメンタリー作品である。
 体内に残る、中国内戦時に負った無数の砲弾破片に今なお苦しみながらも、日本政府が黙殺する“日本軍山西省残留兵問題”の真相を解明しようと中国へ渡る奥村氏。そこで彼は長年心に仕舞い込んできた、自らの加害経験とも向き合うことになります。戦争の被害者でもあり加害者でもある奥村氏が、長年連れ添った奥さんに自らの加害体験を語れずにいる姿に戦争の残した根の深さを感じました。「このままでは死んでも死に切れない!」という奥村さんの叫びが今も頭から離れません。 (早)

●ゲストの紹介
池谷 薫(いけや かおる)監督

 1958年、東京生まれ。同志社大学文学部を卒業後、テレビ・ドキュメンタリーのディレクターとして創作活動を開始する。89年の天安門事件以降、中国での取材活動を積極的に展開。NHKなどで多数のドキュメンタリーを製作。97年、製作会社・蓮ユニバースを設立。構想から7年、製作に3年を費やした初の長編ドキュメンタリー映画『延安の娘』は、世界の映画祭で絶賛され、数々の賞を受賞。『蟻の兵隊』は長編ドキュメンタリー2作目となる。