焼け野原から高度成長へ - Vol. 2 -

11月22日 「焼け野原から高度成長へ - Vol. 2 -」 (やまばとホール)

●Time Table●
13:00−14:41
15:00−17:50
裸の島
東京オリンピック

裸の島
1960年/近代映画協会製作・配給/1時間36分
 
監督=新藤兼人
撮影=黒田清巳
音楽=林光
出演=乙羽信子、殿山泰司、田中伸二、堀本正紀
 
裸の島
 
[ストーリー]
 瀬戸内海の小さな無人島に、一組の夫婦が渡ってきた。千太(殿山)と妻のトヨ(乙羽)は8歳になる太郎と6歳の次郎の2人の子供がいた。わずかな土地を耕し、段々畑に麦とサツマイモを植えて生活している。しかし、島には川も井戸さえもない。小船を漕いで隣の島まで水を汲みにいき、やっと運んできた水を天秤棒でかつぎながら、険しい斜面を登っていく作業は並大抵の苦労ではない。トヨは誤って手桶の水をこぼしてしまう。千太は妻の頬に平手打ちをくらわせる。
 
[コメント]
 瀬戸内海の孤島に往む夫婦と子供たちの自然との戦いを記録したもので、『第五福竜丸』に続いて新藤兼人が自らの脚本を監督したセリフなしの映画。撮影は『らくがき黒板』の黒田清巳。一言もセリフのないこの映画のなかで長男の太郎が急病になり、医者が間に合わず死んでしまう場面は、観るものに悲痛な感情をもたらす。それでも二人は黙々と働きつづけるしかないのだ。新藤兼人監督自ら出資して、わずか13人のスタッフで、現地に合宿生活をして完成させたこの作品は、近代映画協会の自主配給で公開されたが、第2回モスクワ映画祭でグランプリを獲得するにおよび、世界64カ国に輸出された。「キネマ旬報」ベストテン第6位。

東京オリンピック
1965年/東京オリンピック映画協会製作/東宝配給/2時間50分
 
総監督=市川崑
企画=オリンピック東京大会組織委員会
監督部=細江英公、安岡章太郎、谷川俊太郎ほか
撮影部=林田重男、宮川一夫、中村謹司、田中正ほか
音楽監督=黛敏郎
 
東京オリンピック
 
[ストーリー]
 ギリシャの採火式に始まり、聖火がアジアの諸国を通って日本に到着した。やがて聖火は、九州から国内四コースに別れて、東京に着き、史上最大といわれた開会式がはじまった。日本選手は重量挙げ、レスリング、バレーボールで見事な活躍を見せ、大会の花マラソンでは、アベベが史上初の二連勝を果たす。選手村では、ほほえましい各国選手の交歓風景も見られる。
 
[コメント]
 1964年10月10日から24日まで開催された第18回オリンピック東京大会には、スポーツによる国際交流の場を通して、わが国が世界にその復興を示した国家的規模の一大行事であったと言えるだろう。この作品はそのメモリアル・フィルムとして市川崑総監督以下、561人のスタッフが結集して製作され、翌年公開されるや空前の観客動員を記録し、12億を超える配給収入を上げた話題作である。また、その際に「記録か芸術か」という問題を提起し、様々な議論を巻き起こしたことも忘れられない。それは、この作品がスポーツの勝敗よりも、スポーツをする「人間」により多くの描写を費やしたためとも言えるのだが、これはこれで作家市川崑としての一貫した姿勢でもあった。結果は、カンヌ国際映画祭批評家協会賞受賞、「キネマ旬報」ベストテン第2位にも選出されている。