繊細でセクシーな男たち

11月27日 「繊細でセクシーな男たち」 (パルテノン多摩小ホール)

●Time Table●
11:00−13:04
13:50−16:01
16:20−18:05
真夜中の弥次さん喜多さん
メゾン・ド・ヒミコ
バッド・エデュケーション(R15)

真夜中の弥次さん喜多さん
2005年/アスミック・エース エンタテインメント製作・配給/2時間4分
 
監督・脚本=宮藤官九郎
原作=しりあがり寿
撮影=山中敏康
美術=中澤克己
音楽=ZAZEN BOYS
出演=長瀬智也、中村七之助、小池栄子、阿部サダヲ、柄本佑
 
[ストーリー]
 江戸時代。熱血漢の弥次郎兵衛(長瀬)とヤク中の喜多八(中村)は恋人同士。2人は現実感のないぺらぺらな江戸での生活に別れを告げ、ダイレクトメールをたよりにお伊勢参りの旅に出る。
 笑いに厳しい関所の番人、日本髪の女子高生、アーサー王といったヘンな人たちが次々現れる旅の末、弥次さんと喜多さんは現実(リヤル)を見つけられるのか……?
 
[コメント]
 あのクドカンが映画を撮った! つまりクド監!! しかも原作は、映像化不可能といわれたしりあがり寿の超人気マンガ「弥次・喜多」シリーズ、と聞いて心躍らせた人も多いはず。そしてできあがった映画はというと、ーーやっぱりトンデモない映画だった!!
 小池栄子、板尾創路、中村勘三郎といった豪華出演陣が全力でくりだす奇想天外でバカバカしいシーンの数々や、時代考証まったくムシのサイケデリックな東海道の宿場町に目を奪われるうち、くらくらするような不思議世界にひきずりこまれてしまいます。そして若者のあいだでコアな人気をほこるロックバンド、ZAZEN BOYSの楽曲が映画全編にわたってハードにそして切なく響き渡り、ストーリーにさらに複雑な魅力を加えています。
 混沌として且つクールともいえるほどの徹底したくだらなさのなかに、意外と熱いメッセージが見え隠れする、宮藤監督の独自のスタイルが感じられる作品です。だれも見たことのない新たな時代劇をお見逃しなく。 (加)

メゾン・ド・ヒミコ
2005年/『メゾン・ド・ヒミコ』製作委員会製作/アスミック・エース エンタテインメント配給/2時間11分
 
監督=犬童一心
脚本=渡辺あや
撮影=蔦井孝洋
音楽=細野晴臣
美術=磯田典宏
出演=オダギリジョー、柴咲コウ、田中泯、西島秀俊
 
メゾン・ド・ヒミコ
 
[ストーリー]
 ゲイである父を嫌い、その存在さえも否定して生きてきた沙織(柴咲)。ある雨の日、彼女のもとに春彦(オダギリ)という男が訪ねてくる。彼は、沙織の父・卑弥呼(田中)が癌で死期が近いと言い、父の営むホームを手伝わないかと誘う。“メゾン・ド・ヒミコ”ーーゲイのための老人ホーム。彼らはここで出会い、いつしか微妙で不思議な関係が芽生えていく……。
 
[コメント]
 犬童一心という監督はツボを心得た人だ。毎回選ぶ題材・キャスティングがとても魅力的で、チラシを見るだけでどんな映画になるかわくわくします。オダギリジョーさんと柴咲コウさんが主演で、ゲイの老人ホームが舞台だなんて聞いたら、誰だって見たい!と思ってしまうでしょう。
 メインの3人はそれぞれいつものイメージとは異なる役柄を演じているため、最初は「えっ、これがあの人?」と驚くが、次第に「この役にはこの人以外考えられない!」というくらいはまって見えてしまうから不思議。犬童監督には役者さんが持つ潜在的な力を見抜く能力があるのかもしれない。特に印象的だったのが、春彦が瀕死の卑弥呼の部屋で「欲望が欲しいんだよ」とつぶやくシーン。某トーク番組でオダギリさんが「仕事が重なって疲れが最高潮の時にあのシーンを撮ったが、それによっていい効果が出ている」と話しているのを聞いたが、見て納得! 凄みがありました。 (黒)

バッド・エデュケーション
Bad Education
2004年/スペイン/ギャガ・コミュニケーションズ配給/1時間45分
 
監督・脚本=ペドロ・アルモドバル
撮影=ホセ・ルイス・アルカイネ
音楽=アルベルト・イグレシアス
出演=ガエル・ガルシア・ベルナル、フェレ・マルチネス、レオノール・ワトリング、ダニエル・ヒメネス・カチョ
 
バッド・エデュケーション
 
[ストーリー]
 スペイン映画界どころかいまや世界を代表する監督となったペドロ・アルモドバルの最新作。舞台は少し前のマドリード。主人公は結構売れっ子の映画監督エンリケ(F・マルチネス)。その彼の前にイグナシオと名乗る青年(G・G・ベルナル)が訪ねてくる。エンリケの作品の出演を熱望するイグナシオ。二人の少年時の神学校の寄宿舎時代には悲しい過去が……。本当に彼は少年時代のイグナシオなのか? 二転三転するストーリーは衝撃のラストへ。そこにある真実とは……?
 
[コメント]
 相変わらず彼の作品は映像の色彩、特に赤が印象的。劇中歌の「ケサス・ケサス」「ムーン・リバー」、「帰れソレントへ」の替え歌など美しい歌に心が洗われました。
 また切ないラストも勿論ですが、二人の俳優、ガエルとフェレ・マルチネスの美しさが物語を引き立てます。特にフェレの肌の綺麗さにはどきどきしてしまいました。
 今回『オール・アバウト・マイ・マザー』の時のやさしい視線とは変わり、監督は人間のエゴと向き合っています。でもすべてを乗り越えて最後に作品を撮り続けることを選んだエンリケは監督自身の姿なのかも。が、ガエルが女装する劇中劇でのサハラは美しいのですが、友人のオカマ友達がいかにもオカマと言った感じで描かれ、物語を盛り上げてくれていて笑ってしまいました。こっちもアルモドバルの分身?と思ってしまいました。 (関)