監督・竹中直人特集

11月27日 「監督・竹中直人特集 -映画と監督の素敵な恋愛関係-」 (やまばとホール)

●Time Table●
10:30−12:14
13:00−15:01
15:20−15:34

15:35−16:20
16:40−18:39
連弾
東京日和
-- 特別プレビュー --
U2
トーク 竹中直人監督、田中要次氏、スペシャルゲスト(予定)
サヨナラCOLOR

連弾
2000年/松竹製作・配給/1時間44分
 
監督=竹中直人
脚本=経塚丸雄
撮影=佐々木原保志
照明=安河内央之
音楽=竹中直人
美術=斉藤岩男
出演=竹中直人、天海祐希、冨貴塚桂香、蓑輪裕太、北村一輝、及川光博、松尾れい子
 
連弾
 
[ストーリー]
 8軒の借家を持つ佐々木正太郎(竹中)は、専業主夫として家事全般をこなし、妻の美奈子(天海)はゼネコンの設計課長。そんな逆転夫婦だが、ある日美奈子の不倫が発覚する。徹(簔輪)は母親への不信感でいっぱいだが、娘の真理(冨貴塚)は間近に迫るピアノ発表会で、母親と「ハンガリー舞曲」を連弾で弾くことで頭がいっぱいだった。
 
[コメント]
 『連弾』は竹中直人の4本目の監督・主演作品である。これまで『無能の人』『119』『東京日和』と、家族や仲間同士の絆を描き続けてきたが、この作品は前3作品とは少し違ったところに焦点を当てているようだ。それは、妻の不倫をきっかけに一つの家族が崩壊するという現代ならではの設定のなかに、たとえ家族がばらばらに暮らすことになっても心はいつまでも一緒であることを示唆している点であろう。そのキーとなるのが、妻と娘がピアノ発表会で「ハンガリー舞曲」を連弾で弾くことである。決して一人では奏でられないメロディー……いつしか家族のひとり一人がピアノ曲の連弾を通して家族の絆を考え直していくことがテーマとなっている。天海祐希はこの作品が初の母親役だそうだが、母親ならではの繊細さとキャリアウーマンとしての闊達さを見事に演じている。子役の二人も両親の離婚騒動でゆれ動く子供心を上手く表現しているのには感心した。 (則)

東京日和
1997年/東宝製作・配給/1時間44分
 
監督=竹中直人
原作=荒木陽子、荒木経惟
脚本=岩松了
撮影=佐々木原保志
照明=安河内央之
音楽=大貫妙子
美術=中澤克巳
出演=竹中直人、中山美穂、松たか子、三浦友和、鈴木砂羽、類家大地、浅野忠信、塚本晋也、周防正行、森田芳光、中島みゆき
 
東京日和
 
[ストーリー]
 脱サラした写真家、島津(竹中)の妻、ヨーコ(中山)の様子が、このごろ少しおかしい。サラリーマン時代の同僚を自宅に招いたところ、水谷(松)を「谷口」と間違って呼んだことを気に病んで、台所から出てこようとしない。同じマンションに住む男の子に女の子の服を着せようとする。そんな妻を、島津は優しく見つめる。「見ないでほしいのよ、私のこと…」とヨーコに言われても。
 
[コメント]
 夫婦ってムズカシイ。多くの時間を一緒に過ごしているけど、すべてを理解しているかというと怪しいものだ。なのにわかったような気になって日々を過ごしているから、ちょっとのスキマを気付かないうちにどんどん広げてしまう…。
 この映画の夫婦も思いが行き交わないもどかしさを時に感じながら、それでも寄り添って生きていたいと願っている。街中で偶然妻を見つけた夫が、そっと後をつけて自分が知らない妻の時間を見ようとするシーンが印象的だ。近付きすぎると見えないことってたくさんある。
 全体に漂う空気が悲しさと美しさに満ちているのは、主人公の届かない想いを通してヨーコを見つめている気分になるからだろう。 (黒)

特別プレビュー
U2
2005年/アキルフィルム製作/9分
 
監督・脚本=竹中直人
撮影=佐々木原保志
録音=北村峰晴
音楽=安川午朗
美術・照明・製作=安河内央之
出演=佐藤江梨子、忌野清志郎、竹中直人
 
[解説]
 構想10年!!
 撮影1日!!
 舞台は日の出町!!

 異例のショートムービーが完成した。

 竹中監督の最新作は何と1日で撮った短編映画。この作品は竹中作品には欠かせない照明スタッフ、安河内央之氏が運営する35ミリフィルム専門の自主映画撮影所「アキルフィルム」の企画として製作された。竹中氏と安河内氏の呼びかけにより、短編映画とは思えない豪華な出演者とスタッフが集結。そして1日で撮ったとは思えないバラエティーに富んだシーンの数々。すべて日の出町の撮影所内の手作り喫茶店セットとその周辺で撮影された。
 この作品のちょっと変わったところはそれだけでなく、限られたシチュエーションのなかで多くのエキストラを使っていること。事前にオーディションによって集められた個性的なエキストラたちが随所に出演し、シュールな世界を展開している。
 気になるタイトル『U2』の意味についてはぜひ、当日会場でお確かめください。 (黒)

サヨナラCOLOR
2004年/近代映画社、NIKKEN INC、衛星劇場製作/ザジフィルムズ配給/1時間59分
 
監督・脚本=竹中直人
脚本=馬場当
撮影=佐々木原保志
照明=安河内央之
音楽=ハナレグミ、クラムボン、ナタリー・ワイズ
美術=斉藤岩男
出演=竹中直人、原田知世、段田安則、雅子、中島唱子、水田芙美子、内村光良、中島みゆき
 
サヨナラCOLOR
 
[ストーリー]
 海を臨む病院に勤める医者・正平(竹中)の前に、高校時代の同級生・未知子(原田)が子宮ガンを患い入院してきた。偶然にも、未知子は正平が思い焦がれた初恋の人であった。気楽に独り身を謳歌しているかに見えた正平だが、実は二十数年間もの間、未知子を一途に思い続けていたのだ。
 すっかり自分のことを忘れている未知子の素振りに傷つきながらも献身的な治療を施す正平に、次第に心を開いていく未知子だったが……。
 
[コメント]
 竹中監督の第5作目『サヨナラCOLOR』は今どき珍しいくらいのストレートなラブストーリーだ。悲しいのに、清々しい気持ちになれる。
 この作品を見ていると、竹中監督が映画に対して「好きだー、大好きだーーっ!!」と叫んでいる声が聞こえてくるようだ。
 二十年以上の片想いの相手を演じる原田知世はまるで映画の女神様のよう。
 最後の正平のセリフ、「僕は、ずっとずっとあなたにこだわるんだ」を聞いて、思わず微笑んでしまった。竹中監督、これからもずっと好きなものにこだわり続けてください! (黒)

●ゲストの紹介
竹中 直人(たけなか なおと)氏

 1956年3月20日生まれ。横浜市出身。多摩美術大学卒。大学時代、映像演出研究会で自主映画を製作。その後、劇団青年座に入団。その頃から松田優作等の顔面・形態模写でコメディアンとしての頭角を現す。
 監督としての劇場映画デビューは、つげ義春原作の『無能の人('91)』。第48回ヴェネチア国際映画祭に出品され、国際批評家連盟賞を受賞、その他日本国内でも数々の賞を受賞し、国内外で高く評価された。
 また、映画・テレビでの活動に留まらず、“竹中直人の匙かげん”(旧・“竹中直人の会”)を主宰し、舞台公演も活発にこなす。音楽への造詣も深く、自身でもアルバムをリリース、エッセイストとしても「少々おむずがりのご様子」他、3冊の著作がある。06年には絵本作家としてのデビューも予定されており、活動のフィールドを広げ続けている。