生命の尊さとは

11月20日 「生命の尊さとは」 (やまばとホール)

●Time Table●
11:00−13:18
14:00−15:57
16:20−18:25
ミリオンダラー・ベイビー
マラソン
海を飛ぶ夢

ミリオンダラー・ベイビー
Million Dollar Baby
2004年/アメリカ/ムービー・アイ、松竹配給/2時間13分
 
監督・音楽=クリント・イーストウッド
原作=F・X・トゥール
脚本=ポール・ハギス
撮影=トム・スターン
出演=クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン、アンソニー・マッキー
 
ミリオンダラー・ベイビー
© 2004 Lakeshore International, All Rights Reserved.
 
[ストーリー]
 かつて優秀なカットマンであったフランキー(C・イーストウッド)は、小さなボクシングジムを経営していた。ある日、彼のところへ貧しい女性マギー(H・スワンク)が現れ、ジムへの入門を願う。最初は断るフランキーであったが、ジムで働くスクラップ(M・フリーマン)のとりなしで、トレーナーを引き受けることなる。
 マギーはボクサーとしての才能を開花させるが……。
 
[コメント]
 ハリウッドで製作される映画のほとんどはハッピーエンドのアメリカンドリームを肯定した作品が多い。観客の多くもそんな作品を好むのであろう。
 しかし、現実には成功の影には数多くの陽の当たらない敗者たちが存在している。そして、イーストウッドはそうした彼らに目を向けている。貧しい生活を送っていたマギーは、ボクサーとしてうたかたの夢を見るが、結局は家族とも分かり合えず、バッドエンドを迎えることになる。それでも最後の最後でフランキーとの心の交流を得たことは、誤解を恐れずに言えば、彼女にとってはハッピーエンドだったのではないだろうか。
 イーストウッドもフリーマンも円熟した演技を見せるが、何と言っても意志の強さを見せるスワンクが素晴らしい。まさに魂の演技である。 (治)

マラソン
Marathon
2005年/韓国/シネカノン、松竹配給/1時間57分
 
監督=チョン・ユンチョル
脚本=ユン・ジノ、ソン・イェジン、チョン・ユンチョル
撮影=クォン・ヒョクジュン
音楽=キム・ジュンソン
出演=チョ・スンウ、キム・ミスク、イ・ギヨン、ペク・ソンヒョン、アン・ネサン
 
マラソン
© 2005 Showbox/ Mediaplex, Inc-dist. by Cine Qua Non
 
[ストーリー]
 チョウォン(チョ・スンウ)は、自閉症のため5歳児並みの知能しかない20歳の青年。感情がコントロールできず、いつも周囲に騒動を巻き起こしてしまうが、走りの才能だけはピカイチ。母のキョンスク(キム・ミスク)は何とか長所を伸ばしたいと願い、今や飲んだくれとなった元有名ランナーにコーチを依頼するが……。
 
[コメント]
 実話に基づく感動のヒューマン・ストーリー。監督は本作が長編デビュー作となるチョン・ユンチョル。本作は韓国で500万人以上を動員するなど一躍社会現象を巻き起こし、今年最大の話題作になるとともに、第42回大鐘賞(韓国のアカデミー賞)で作品賞や主演男優賞をはじめ最多の7部門を受賞している。
 テーマが「マラソン」という個人種目のため、孤独なスポ根ものを想像しがちだが、この映画は“泣ける”というよりはむしろ“笑い”“勇気づけられる”映画です。共感を得にくいはずの自閉症が驚くほどとても身近に感じられます。本作に近い内容として『僕はラジオ』(2003年)という映画がありますが、これも結構オススメです。
 主演のチョ・スンウは本作で一気にブレイクし、現在CM出演や次回作のオファーが殺到しているとか。“同世代最高の俳優”と謳われるスンウの才能をぜひこの作品でお確かめください。 (藤)

海を飛ぶ夢
The Sea Inside
2004年/スペイン、フランス/東宝東和配給/2時間5分
 
監督・脚本・音楽=アレハンドロ・アメナーバル
脚本=マテオ・ヒル
撮影=ハビエル・アギーレサロベ
出演=ハビエル・バルデム、ベレン・ルエダ、ロラ・ドゥエニャス、マベル・リベラ、セルソ・ブガーリョ
 
海を飛ぶ夢
 
[ストーリー]
 ラモン・サンペドロ(H・バルデム)は、25歳の時、海で起きた事故により首から下が麻痺状態になり、肉体の自由を完全に奪い取られてしまった。以来、ベットで寝たきりの生活を送る彼は、28年目にひとつの決断を下す。それは、自ら死を選びとることによって、生の自由を獲得するという決断だった……。
 
[コメント]
 『アザーズ』のアレハンドロ・アメナーバル監督が映画化した作品。全身麻痺の障害を負った主人公に、『夜になるまえに』のハビエル・バルデムが特殊メイクでリアルに演じる。
 本作は、一生の半分をベッドの上で過ごし、自ら死を望んだ実在の人物、ラモン・サンペドロの手記「レターズ・フロム・ヘル」をもとに描く真実のドラマ。今もなお、スペインでは法律で認められていない「尊厳死」をめぐり、生と死の意味を問いかける作品だ。顔以外に動かすことが出来ないうえ、実年齢より20歳以上も年上のラモンを演じることになったハビエル・バルデムは、その強い瞳と豊かな表情でラモンを演じきり、ゴヤ賞主演男優賞に輝いた。
 尊厳死や安楽死。劇中でのラモンのセリフ「生きることは世間一般でいえば“権利”だが今の僕には“義務”だ。だから死を望む。」死=恐怖と決め付けることなく、ラモンはそれをいかに望んでいるかがひしひしと伝わってきます。
 想像の世界ではラモンは足で歩き、空を飛び回ることも出来る。中盤に出てくる“海を飛ぶ夢”の映像はまさに鮮烈! (修)