福井晴敏特集

11月19日 「福井晴敏特集 -戒厳下の男たちの挽歌-」 (やまばとホール)

●Time Table●
10:30−10:45
10:45−12:53
13:40−15:47
16:05−16:45

17:00−18:59
オープニング
ローレライ
亡国のイージス
トーク ゲスト:福井晴敏氏、阪本順治監督(予定)
    聞き手:宇田川清一氏(映画評論家)
戦国自衛隊1549

ローレライ
2005年/フジテレビジョン・東宝・関西テレビ放送・キングレコード製作/東宝配給/2時間8分
 
監督=樋口真嗣
原作=福井晴敏
脚本=鈴木智
撮影=佐光朗
音楽=佐藤直紀
出演=役所広司、妻夫木聡、柳葉敏郎、香椎由宇、石黒賢、國村隼、堤真一
 
ローレライ
© 2004 フジテレビジョン・東宝・関西テレビ放送・キングレコード
 
[ストーリー]
 1945年8月、日本軍は広島に続く原爆投下を阻止するため、<伊号第五〇七潜水艦>を出撃させる。激しい戦闘のなか、折笠(妻夫木)は艦内で特殊兵器を起動できる唯一の人物パウラ(香椎)を発見する。パウラは折笠の優しさに触れて人間らしさを取り戻していくが、彼らは艦と共に過酷な運命に巻き込まれていく。
 
[コメント]
 「亡国のイージス」で各界から絶賛されている人気作家、福井晴敏と平成「ガメラ」シリーズで高い評価を得た樋口真嗣監督が、共同でオリジナルストーリーとして考案した夢のコラボレーション作品と言われているのが、この「ローレライ」である。
 この映画ではパウラ以外の女性が登場しない。その意味では役所広司、妻夫木聡をはじめとした豪華キャストの男の色気(?)が全体を覆っている作品とも言うことができ、女性ファンにとって必見かもしれない。
 この作品にとって欠かせないのがCGの駆使であろう。特に海洋シーンは、実写では描ききれないスケールである。潜水艦の内部も実によく描かれていたし、アメリカ戦艦との戦いのシーンなどもかなり大仕掛けである。この作品は知恵とお金をかければ日本でも見応えのある大作が作れることを証明してくれた。このような作品が全世界で上映されれば、日本映画界も更に活性化してくると期待させる作品である。 (則)

亡国のイージス
2005年/日本ヘラルド映画・松竹・電通・バンダイビジュアル・ジュネオン エンタテインメント・IMAGICA・TOKYO FM・産経新聞社・デスティニー製作/日本ヘラルド映画・松竹配給/2時間7分
 
監督=阪本順治
原作=福井晴敏
脚本=長谷川康夫、飯田健三郎
撮影=笠松則通
音楽=トレヴァー・ジョーンズ
出演=真田広之、寺尾聰、佐藤浩市、中井貴一、勝地涼、チェ・ミンソ、原田芳雄
 
亡国のイージス
© 2005「亡国のイージス」associates
 
[ストーリー]
 イージス護衛艦「いそかぜ」がテロリストに奪取された。その首謀者たちは、ミサイル弾頭に搭載した特殊兵器GUSOHを盾に日本政府を脅迫する。ミサイル発射の期限が迫るなか、「いそかぜ」の先任伍長・仙石(真田)はたった1人、密かに艦に舞い戻る……。
 
[コメント]
 「イージス」の語源は、ギリシャ神話の「無敵の盾」に由来する。同時に、最新鋭の防空システムを搭載した海上自衛隊の護衛艦を指し示し、イージス艦はいわば艦隊の盾となる役割を担っている。そのイージス艦がテロリストに奪取されたら……?
 寺尾聰、中井貴一、佐藤浩市、そして真田広之演じる4人の登場人物が、イージス艦を舞台に熱き闘いを繰り広げる。そこには各々の、国家への、仲間へのそして愛する家族への強い思いがある。
 一方、防衛庁、海上自衛隊、航空自衛隊の全面協力による、本物の護衛艦や戦闘機を使った迫力ある映像が、その場の緊張感を高めていく。さらに、多用なカメラアングルを実現するため、イージス艦の3分2の大きさ(長さ77m、高さ27m、幅21m)のオープンセットを建造して撮影を行ったというのだから、その映像には今までにないリアリティーとスケールの大きさが感じられる。
 尚、ラストは映画版オリジナルとのことなので、原作と比べてみるのもいいだろう。 (く)

戦国自衛隊1549
2005年/『戦国自衛隊1549』製作委員会製作/東宝配給/1時間59分
 
監督=手塚昌明
原案=半村良
原作=福井晴敏
脚本=竹内清人・松浦靖
撮影=藤石修
音楽=shezoo
出演=江口洋介、鈴木京香、鹿賀丈史、北村一輝、綾瀬はるか、宅麻伸、伊武雅刀
 
戦国自衛隊1549
© 2005「戦国自衛隊1549」製作委員会
 
[ストーリー]
 自衛隊の人工磁場発生器の実験中に事故が起こり、的場1佐(鹿賀)率いる部隊が460年前の戦国時代にタイムスリップしてしまった。同時に過去への干渉が原因で虚数空間ホールが出現して日本を侵蝕し始める。的場の元部下の鹿島(江口)と事故を引き起こしてしまった神崎(鈴木)は、侵蝕を止めるために編成されたロメオ隊と共に的場たちの救出を図る。
 
[コメント]
 福井晴敏氏の小説は、いずれも読者に映像を明確にイメージさせ、且つエンタテイメント性に溢れている。本年相次いで映画化が行われたのも当然と思われるが、逆に映画化を行う監督側から見ると、読者が小説を読んだときに思い描いた映像をいかに上回るかというのが大きなハードルとしてのしかかってくるのではないだろうか。
 本作品では、天母城の実物さながらの巨大なセットや自衛隊の全面的協力によって登場する150両以上の戦車や装甲車と最新鋭の攻撃型ヘリコプターなどで破天荒のドラマを圧倒的なスケールで描いており、映画としての存在感を十二分発揮している。
 そう言えば以前、「映画は原作を越えられるか」という角川映画のキャッチフレーズがあったが、本作品は越えた、越えられないは別として、映画としてのポジションを明確に誇示できていると思う。 (淳)

●ゲストの紹介
福井 晴敏(ふくい はるとし)氏

 1968年東京生まれ。私立千葉商科大学中退。97年、警備会社に勤務する傍ら初めて応募した作品「川の深さは」が、第43回江戸川乱歩賞選考会で大きな話題になり、翌98年「Twelve Y.O.」で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。99年、「亡国のイージス」で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞をトリプル受賞。2002年には「終戦のローレライ」で吉川英治文学新人賞、日本冒険小説協会大賞を受賞し、こちらも05年『ローレライ』(監督:樋口真嗣)として映画化され公開。同年公開の『戦国自衛隊1549』(監督:手塚昌明)の原作も手がけるなど、出版界のみならず映画界からも注目される作家である。

[著作]
1998年 Twelve Y.O.
1999年 亡国のイージス
2000年 川の深さは
     月に繭 地には果実(「ターンエーガンダム」改題)
2002年 終戦のローレライ
2004年 6ステイン
2005年 戦国自衛隊1549
 
阪本 順治(さかもと じゅんじ)監督(予定)

 1958年大阪府出身。生家の向かいが映画館だったことから幼少時より映画に親しむ。大学在学中から石井聰互、川島透等の監督の現場にスタッフとして参加。89年、初監督作品『どついたるねん』で芸術選奨文部大臣新人賞を始め数々の賞を受賞し、鮮烈なデビューを飾る。その後もコンスタントに作品を撮り続け、2000年『顔』では日本アカデミー賞最優秀監督賞ほか多くの賞を受賞する。同年の『新・仁義なき戦い』、02年『KT』、03年『ぼくんち』、04年『この世の外へ/クラブ進駐軍』など、さまざまなジャンルに絶えず挑戦している。
 
司会:宇田川 清一(うだがわ せいいち)氏

 1959年生まれ。映画評論家。「キネマ旬報」「読売新聞」「DVD&ビデオで〜た」などに執筆。