心とカラダの恋愛模様

11月28日 「心とカラダの恋愛模様」 (ベルブホール)

●Time Table●
12:00ー13:18
14:00ー15:35
15:50ー17:57
18:10ー18:40
くりいむレモン
ヴァイブレータ (R15)
TOKYO NOIR トーキョーノワール (R15)
トーク 石岡正人監督×中村愛美氏

くりいむレモン
2004年/「くりいむレモン」製作委員会/バイオタイド配給/1時間18分
 
監督・脚本=山下敦弘
脚本=向井康介
撮影=近藤龍人
音楽=赤犬
編集=元木隆史
出演=村石千春、水橋研二、根岸季衣、大鷹明良、勝俣幸子、三浦哲郁、山本浩司、小沢和義
 
くりいむレモン
 
[ストーリー]
 高校に通う17歳の亜美(村石)には、2歳年上のお兄ちゃん・ヒロシ(水橋)がいる。血のつながっていない二人。その間には誰にもいえない感情が芽生え始めていた。
 ある日、両親が海外出張に出かけてしまい、二人きりで家に残されてしまう。やがて亜美は風邪で寝込み、お兄ちゃんに付っきりで看病されるのだが……。
 
[コメント]
 ダメ男を描かせたら右に出る者はいない! 山下敦弘監督が描くのは80年代に一世風靡した美少女アニメが原作の『くりいむれもん』。
 ダメ兄に扮するのは水橋研二くん! 悶々とした様子で妹を見つめる目や目線のはずし方など、「妹萌え(?)」している兄に、観客は同性異性関わらず息もできずに一緒にドキドキしちゃいます。妹もまた悩ましげな態度で「お兄ちゃん……」と甘ったるい唇でささやく。そんな妹に男どもはきっと「あんな妹が欲しい!」と羨むことでしょう。
 血のつながっていない兄弟が一線を越えるというストーリーを、オリジナルを意識せず自由に遊んじゃいました感がする。それがかえって漫画ファンにもそうでない観客にも、切なくてちょっぴりのエッチな恋物語を心地よく届けてくれる。
 山下作品にはお馴染み、怪優:山本浩司などがちらりと現れ、ファンはたまらずニヤリとする見所もあり! 随所に見逃せない笑いが詰まった作品でもあるのです。 (おざ)

ヴァイブレータ VIBRATOR
2003年/ヴァイブレータ製作委員会/ステューディオスリー、シネカノン配給/1時間35分
 
監督=廣木隆一
原作=赤坂真理
脚本=荒井晴彦
撮影=鈴木一博
音楽=石川光
出演=寺島しのぶ、大森南朋、田口トモロヲ、戸田昌宏、高柳絵理子、牧瀬里穂、坂上みき、村上淳、野村祐人
 
ヴァイブレータ
 
[ストーリー]
 フリールポライターの玲(寺島)は、言葉を扱う職業柄ゆえか、いつからか自分の頭のなかでざわめく「声」に悩まされる毎日を送っている。ある夜立ち寄ったコンビニエンスストアですれ違った長距離トラック運転手・岡部(大森)に、彼女の“ヴァイブレータ”が大きく振れた……。
 
[コメント]
 みたされないみたされないみたされないつれだしてつれだしてつれだしてーーあなたはココロの叫びが、喉の奥から転げ落ちそうになった経験はありませんか?
 vibrator<英>:振動する(させる)もの。
 この作品はほんとうに気持ちのいい映画です。「気持ちのいい」は、爽快であるとか清潔であるとかそういった意味のものではなく、まるで身体の芯をしめつけていたそれはもう厚い帯のようなものがふわっと昇華していくような。
 特別なことは何もありません。ある日偶然にもめぐり合ったふたりの、共に過ごしたわずか数日を見つめ続けたロードムービーです。敢えて普通でないことを挙げるなら、心を覗きたい・覗かれたいと密かに願う主人公玲の、手段を選ばない(いや選べない)気持ちの伝え方くらい。そんな登場人物を支えるのは、作品の大部分を占める舞台となるトラックの、フロントに据えられたキャメラからの映像と、対照的に時折挟まれる俯瞰の映像です。作品が淡々としていないのは、どきっと胸をつかれる、すばらしい台詞に溢れているからです。
 「ちょっといいもの」になりたい。ーーこの社会で生きる、すべての女性に贈ります。 (脇)

TOKYO NOIR トーキョーノワール
2004年/TOKYO NOIR製作委員会/ケイエスエス、日本出版販売配給/2時間7分
 
監督=石岡正人、熊澤尚人
撮影=鍋島淳裕
音楽=遠藤浩二
監修=酒井あゆみ
出演=吉本多香美、中村愛美、吉野きみか、関彩、利重剛、光石研、和田聡宏、塩谷瞬、温水洋一、水橋研二、遠藤憲一、峰岸徹
 
TOKYO NOIR トーキョーノワール
 
[ストーリー]
 BIRTHDAY:
 35歳を迎えるキャリアウーマンの真理は、仕事に追われ、疲れ切っていた。ある夜、彼女は美容院のドアを開き、新しい自分を発見する……。

 GIRL'S LIFE:
 友人に彼氏を奪われて以来、夜は風俗嬢として働く女子大生の美由紀。ある日、彼女の前に元カレが客として現われる。10代の女の子を等身大で描いた青春物語。

 NIGHT LOVERS:
 20代OLの奈緒はインターネットで同姓同名の「愛人・ナオの独り言」というサイトをみつけ、さまざまなタイプの愛人を演じるもうひとりの“ナオ”の人生に興味を持つが……。
 
[コメント]
 東京で生きる「昼」と「夜」の顔を持つ女性たちの物語。何ゆえ彼女らはその生き方を選んだのだろうーー。
 どの女性も恋愛が上手くいっていないが、それはもう一つの顔を持つきっかけにすぎない。ふたつの世界を持つことでようやくバランスを保っているように見える。何食わぬ顔をしておくる日常と、「女」としての価値のみで存在する闇の時間と……。
 誰でも(行動に移すかは別として)見知らぬ誰かに自分の身体を投げ出したい衝動にかられることはあるのでは?  それは心とカラダが密着しすぎて苦しいからなのかも。開放されたい、別な世界に逃げ込みたい。そんな複雑で危うい心の内がどのヒロインからも痛いほど伝わってくる。
 トウキョーという都市のなかで漂う女のカラダはとてもたよりないものに思えた。心を捕えて離さないものがみつかれば、身体も漂うことをやめるのだろうか。 (黒)

●ゲストの紹介
石岡 正人(いしおか まさと)監督

 1960年生まれ。明治大学政治経済学部卒。映像の現場で助監督、制作を経て富岡忠文と廣木隆一と共に製作会社ヘブン設立。その後独立し、96年に自身の会社ゴールドビューを設立。ビデオ制作や日本映画の海外販売を主におこなっていたが、2000年に初の自社制作による初劇場用映画作品『PAIN/ペイン』(脚本、プロデュース、監督)を発表。ヴェネチア映画祭他の映画祭で批評家の絶賛を浴びる。2001年度日本映画監督協会の新人監督賞受賞。
 
●監督からのメッセージ

 『トーキョーノワール』を作るにあたって、二つの顔を持つ何人もの女性たちを取材しました。なぜ? どうして風俗をやっているのか? 理由はさまざまでしたが、その裏に隠された気分が東京のリアリティーなのかとも思います。底に流れている言葉にならない瞬間を映画から感じ取って頂けると嬉しいです。
 
中村 愛美(なかむら あいみ)氏

 1983年、東京生まれ。98年反町隆史主演ドラマ「GTP」の女子高校生役で脚光を浴びる。「リップスティック」「ガラスの仮面」などで活躍。映画では2001年佐々木浩久監督の異色のカルトホラームービー『血を吸う宇宙』で主演として、死刑執行を待つ薄幸の美少女を好演し話題を呼ぶ。02年リュック・ベッソン、プロデュースの『WASABI』ではジャン・レノと共演。03年『SEMIー鳴かない蝉ー』、『ストロベリー☆フィールド』、今年は『集団殺人クラブ最後の殺戮』、『運命人間』など出演作多数。
 今後さらなる躍進が期待されている。

●監督紹介
熊澤 尚人(くまざわ なおと)監督

 1967年生まれ。大学時代より自主映画制作を始め、ゆうばり映画祭オフシアター部門などに入賞。92年(株)ポニーキャニオンに入社。映画のプロデュース業務に携わる傍ら、休日を使って自主映画を監督し続け、94年8mm作品『リベラル』がPFFに入選。97年『HOBOS』が中野武蔵野ホールにて公開される。99年退社後、映像演出を精力的に初め、ミュージック・クリップ、オリジナルビデオシネマなど数多くの作品を監督。2001年監督したVシネ『肉体警備員』が、その年のビデオオリジナル人気投票(ザ・ニューリリース)で第7位にランクインし、2003年ゆうばり映画祭・招待作品に選ばれる。
 
●監督からのメッセージ

 1話と3話の半分を監督した熊澤です。
 ダブルフェース……という難しいテーマの映画でしたが、現代の女性が、日本、東京で暮らすことって……?等々、何か少しでも感じ取って頂ければ幸いです。
 吉本さんら、女優陣の体当たりの熱演をご覧下さい。