日本映画どうするのか‘04

11月20日 「日本映画どうするのか‘04」 (やまばとホール)

●Time Table●
10:30−10:45
10:45−12:46

12:46−13:20

14:10−16:03
16:25−18:43
オープニング
-- オープニング特別先行プレビュー --
レディ・ジョーカー
トーク ゲスト:平山秀幸監督、徳重聡氏
    聞き手:北川れい子氏(映画評論家)
69 sixty nine
世界の中心で、愛をさけぶ

——オープニング特別先行プレビュー——
レディ・ジョーカー
2004年/「レディ・ジョーカー」製作委員会/東映配給/2時間1分
 
監督=平山秀幸
原作=高村薫
脚本=鄭義信
撮影=柴崎幸三
出演=渡哲也、長塚京三、徳重聡、吉川晃司、加藤晴彦、菅野美穂、岸部一徳
 
レディ・ジョーカー
 
[ストーリー]
 川崎競馬場で知り合った年齢も職業も異なる5人の男たちによって業界最大手日之出ビール社長の城山恭介(長塚)が誘拐された。山梨県本栖湖畔のプレハブ小屋に監禁されたあと2日後に解放されたが、その犯人グループの真意は何か——。すべては50数年前に日之出麦酒神奈川工場を解雇された一人の男が書いた会社宛の批判文から始まるが……。
 
[コメント]
 社会派文学の旗手高村薫原作の映画化である。この映画の見どころは何と言ってもキャストだろう。犯行グループ首班に渡哲也、大企業社長に長塚京三、捜査陣の主軸に「21世紀の裕次郎を探せ!」でグランプリに選ばれた徳重聡を配し、それぞれには岸部一徳をはじめとした個性派俳優がしっかりとした持ち味を十二分に発揮している。競馬場で知り合った5人の名もなき男たちが何故に大企業の社長の誘拐を実行するに及んだのか。その1人の男には重度の障害を持った12歳の娘がいる。それぞれに異なる理由で犯行に加わるが、境遇的には決して恵まれてはいない。被害者である企業内部も混乱し、捜査側にも組織的な矛盾を抱え込んでいる。その三者三様の人間模様を絡み合わせながら社会的強者と弱者の葛藤、理不尽な差別問題、裏社会の不気味な問題などさまざまな社会の歪みを上手く描き出している。注目はやはり徳重聡であろう。これがデビュー作であるが、執念深い若手刑事の役を見事にこなしている。 (和)

69 sixty nine
2004年/「69 sixty nine」製作委員会/東映配給/1時間53分
 
監督=李相日
原作=村上龍
脚本=宮藤官九郎
撮影=柴崎幸三
音楽=中シゲヲ、The Surf Coasters、藤原いくろう、鎌田ジョージ
出演=妻夫木聡、安藤政信、柴田恭兵、金井勇太、水川あさみ、太田莉菜
 
69 sixty nine
 
[ストーリー]
 高校生のケン(妻夫木)はいつも掃除をサボり、仲間たちと馬鹿話をしている。ある日、ケンは憧れの女の子にモテたいがために学校で映画やロックのフェスティバルの開催を目論む。その計画は「学校の屋上でバリケード封鎖をする」という思いつきの作戦にまで膨れ上がり、ついに仲間たちと決行してしまう……。
 
[コメント]
 原作はタイトルと同じ村上龍の小説「69 sixty nine」。1969年はまだ僕が生まれていないし、すごく昔のように感じてしまう年です。しかし、この映画を観ると確かに古くさいが、馬鹿やり放題の楽しい時代じゃないですか! 今真面目に生きている自分があほらしく感じてきます。しかも、こんなに面白いのは作り物だからじゃん!と思ったら、確かに作ってる部分はあるが、キャラクターたちにはちゃんとモデルがいるとのこと。驚きです。ますますこの時代に生きたかったと思いました。
 この映画を面白くさせているスパイスは個性的すぎる脇役たちと曲です。不意打ちで笑わせてくれます。「笑うと恥ずかしい」なんて思わないで下さい。多分周りも笑っているはず。豪快に笑っちゃいましょう!
 1969年を過ごしてきた方々には実際とはちょっと違う、と思われますが、堅いこと言わずに楽しんで御覧下さい。 (瑞)

世界の中心で、愛をさけぶ
2004年/「世界の中心で、愛をさけぶ」製作委員会/東宝配給/2時間18分
 
監督・脚本=行定勲
原作=片山恭一
脚本=坂本裕二、伊藤ちひろ
撮影=篠田昇
音楽=めいなCo.
出演=大沢たかお、柴崎コウ、長澤まさみ、森山未来、山崎努、宮藤官九郎
 
世界の中心で、愛をさけぶ
 
[ストーリー]
 朔太郎(大沢)の婚約者律子(柴崎)が失踪する。律子の行き先が四国だと知り、あとを追う朔太郎。そこは亜紀(長澤)との思い出の場所、朔太郎は思い出のなかに迷い込んでしまう。朔(森山)と亜紀の初恋は甘く淡いものだった。亜紀が白血病であることが発覚し、運命が急転する。朔は亜紀のあこがれだったオーストラリアの神聖な土地ウルルに亜紀をつれていく計画をする。しかし、病院を抜け出した二人が飛行機に乗ることはなかった。そして、伝えられることのなかった亜紀のメッセージが十数年を超えて朔のもとへ届くこととなる……。
 
[コメント]
 朔と亜紀の純愛はその時永遠のものと二人は信じていたに違いない。しかし人の死は突然にもくることがある。愛する人が亡くなった後、残された人はどれだけ心に空白の時間を持たなければならないのか。そこを助けることは誰にも出来ないのでは……考えさせられます。物語は回想と現在とを織り込みながら進むのですが、斬新な演出がこの映画を何倍も感動させてくれた気がします。行定監督の力量に拍手を送りたい。朔太郎を演じた大沢たかおさんと高校生を演じた森山未來さんが、同じ俳優さんかしらと見紛うほど素晴らしかった。高校生の純愛物語に涙などは出るはずはないと思った私ですが、3度も大粒の涙がこぼれてしまいました。人の死、悲恋、私のは何の涙だったのでしょうか……。 (紀)

●ゲストの紹介
平山 秀幸(ひらやま ひでゆき)監督

 1950年福岡県北九州市生まれ。73年に日本大学芸術学部放送学科を卒業。長谷川和彦、加藤泰、藤田敏八監督らの助監督を務める。90年に『マリアの胃袋』で監督デビュー。92年に『ザ・中学教師』で日本映画監督協会新人賞を受賞。94年には>J・MOVIE・WARS<の『よい子と遊ぼう』で民間放送連盟優秀賞を受賞。そして、95年に手掛けた『学校の怪談』が大ヒットとなり人気シリーズへと発展、続編と4作目を担当した。98年には『愛を乞うひと』で国内の映画賞を総なめにし、モントリオール世界映画祭では国際批評家連盟賞を獲得した。 『ターン』ではプチョン国際ファンタスティック映画祭 最優秀監督賞を受賞。ほかに『笑う蛙』『OUT』(いずれも02年)『魔界転生』(03年)など。
 
徳重 聡(とくしげ さとし)氏

 1978年、静岡県生まれ。2000年「21世紀の裕次郎を探せ!」で応募総数52005人のなかからグランプリに選ばれる。02年「オロナミンC」のCMで芸能界デビュー。11月にANB系列の「弟」で若かりし頃の石原裕次郎を演じる。本作が映画デビューとなる。
 
司会:北川 れい子(きたがわ れいこ)氏

 東京中野生まれ。映画評論家。1970年代初め、「映画芸術」の小川徹編集長に知遇を得たのをきっかけに映画批評を書き始め、各誌紙に精力的に執筆。国家公務員を85年に退職し文筆業専業に。「週刊漫画ゴラク」誌の日本映画評が足掛け22年を迎え、連載1100回を超えるほか、ミステリー評なども。猫5匹が同居。