魅惑のバレエ映画

11月30日 「魅惑のバレエ映画」 (パルテノン多摩小ホール)

●Time Table●
11:00−12:46
13:20−14:49
15:10−17:00
エトワール
センター・ステージ
ヌレエフ/I AM DANCER

エトワール
Tout pres des etoiles
2000年/フランス/キネティック配給/1時間40分
 
監督・撮影=ニルス・タヴェルニエ
撮影=ドミニク=ル・リゴレー
モノクロスチール写真=ヴァンサン・テシエ
編集=フローレンス・リカール
出演=マニュエル・ルグリ、ニコラ・ル・リッシュ、ローラン・イレール、アニエス・ルテステュ、オーレリ・デュポン
 
[ストーリー]
 300年以上の歴史を持つパリ・オペラ座は完璧な階級社会と生存競争の過酷な世界。その頂点を表わす最高位をエトワール(星)と呼ぶ。「第九交響曲」、「優しい嘘」、「白鳥の湖」「ラ・シルフィード」など実際のステージと練習風景やゲネプロを巧みに織り交えて、ダンサーたちの真実を映し出したドキュメンタリー・バレエ映画。
 
[コメント]
 バレエほど人間の体をスミからスミまでつかうものは他にはないのではないだろうか。筋肉は跳躍や回転をこなし、神経を全身に通わせるのだから。舞台袖で、汗だくで肩で息をしている姿は目に迫る。その運動量は並ならぬものだ。
 インタビューと、練習風景、公演風景を交互に映したスナップのような場面場面によって、ダンサーの日常と内面がくっきりと浮かび上がってくる。規律正しい禁欲的な生活。弱者の居場所のない競争社会。超人的な努力。絶え間なく自己と向き合うこと。鍛錬。悩みと喜び。我々が見る華麗な肉体と空間の芸術の裏には、このような過酷な世界があるのだと知る。カメラの前でダンサーたちは淡々と語るが、その言葉は我々の心臓をぎゅっと掴む。根底に流れるバレエへの情熱には圧倒され敬服する。厳しくとも人生をかけるものに出会えたことをうらやましく思う。まさにバレエを生きているのだ。この映画を観終わった後、生の舞台を見に行きたくなった。 (柴)

センターステージ
Center Stage
2000年/アメリカ/ソニー・ピクチャーズ配給/1時間55分
 
監督=ニコラス・ハイトナー
脚本=キャロル・ハイキネン
撮影=ジェフリー・シンプソン
音楽=ジョージ・フェントン
出演=アマンダ・シェル、ゾーイ・サルダナ、スーザン・メイ・プラット、イーサン・スティーフェル、サシャ・ラデッキー
 
[ストーリー]
 ジョディ・ソーヤー(A・シェル)はオーディションに合格して晴れて名門バレエ団のアカデミー練習生となり、NYにやってきた。しかし、練習早々クラスのメンバーは見事なテクニックを披露し、自分がクラスの下位にいることに気づき落ち込む。「団員に採用されるのは男女3人ずつ」という厳しい現実が告げられて……。
 
[コメント]
 ジョディは足の骨格が悪く、足の開きを何度も注意される。体型はバレリーナの重要なファクターであり、それだけで一段下にいることになってしまうのだ。それぞれに悩みを抱えながらも、バレエを志す者たちが成功を目指して夢に賭ける姿が描き出されている。
 魅力的なのはダンスシーンだ。街のダンススタジオでのダンスシーンは、わくわくして一緒に踊りたくなる(そう簡単には出来ないが)。卒業公演のダンスもドラマチックで胸が踊る。カンパニーのスター、クーパーを演じるアメリカン・バレエ・シアターのプリンシパルであるイーサン・スティーフェルを始め、出演者はプロのバレエダンサーやダンス経験者、バックダンサーもブロードウェイで活躍している者たちであるから、その華麗な技は見事。また、ロシアからの留学生セルゲイ役として、長野オリンピック男子フィギュア・スケートで金メダルを獲得したイリヤ・クーリックが俳優デビューしていることにも注目。 (柴)

ヌレエフ/I AM A DANCER
I Am A Dancer
1972年/フランス、英国合作/ケーブルホーク配給/1時間32分
 
監督=ピエール・ジュルダン
ナレーション台本=ジョン・パーシヴァル
ナレーション=ブライアン・フォーブス
製作総指揮=ジョン・L.ハーグリーヴス
音楽監督=エヴドロス・デメトリウ
撮影=ミシェル・ケルベール(収録)、トニー・イーミ(記録)
出演=ルドルフ・ヌレエフ、マーゴ・フォンテイン、カルラ・フラッチ、ディアン・バーグスマ、リン・シーモア
 
[ストーリー]
 天才バレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフの最盛期である1972年頃の活動を追ったドキュメンタリー。共演はマーゴ・フォンテインをはじめ、世界に名立たるプリマドンナたち。当時の代表作から名場面を紹介するとともに、ヌレエフの精力的な活躍や、素顔の魅力をとらえた貴重な作品。
 
[コメント]
 本作はニジンスキーと並んで、20世紀最高のバレエダンサーと称されたルドルフ・ヌレエフの活動を貴重な映像で綴ったドキュメンタリーである。普段のトレーニング風景から始まり、クラシックの「ラ・シルフィード」、前衛モダンの「フィールド・フィギュア」、至高のパートナー、マーゴ・フォンテインとの共演作「椿姫」、そして「眠れる森の美女」と、ヌレエフの魅力的なバレエ・パフォーマンスを堪能でき、バレエファンなら必見の作品だ。92分という短い時間でありながらもリハーサル風景や楽屋でのインタビューなど、素顔のヌレエフも見ることができる。“野獣”と表現されたヌレエフのバレエはパワフルでありながら繊細であり、見る者を魅了する。たとえ今までバレエを見たことがない人でもその超人的で完璧な踊りに釘付けになるはずだ。 (有)