大人の恋はやっぱりフランス映画

11月29日 「大人の恋はやっぱりフランス映画」 (やまばとホール)

●Time Table●
12:30−12:40
12:40−14:41
15:00−17:35
17:55−19:47
オープニング
アメリ
恋ごころ
ムッシュ・カステラの恋

アメリ
Le FABULEUX DESTIN D’ AMELIE POULAIN
2001年/フランス/アルバトロス・フィルム配給/2時間1分
 
監督・脚本=ジャン=ピエール・ジュネ
脚本=ギョーム・ローラン
撮影=ブリュノ・デルボネル
音楽=ヤン・ティルセン
美術=アリーヌ・ボネット
出演=オドレイ・トトゥ、マチュー・カソヴィッツ、リュフュス、クレール・モーリエ、セルジュ・メルラン、ドミニク・ピノン
 
[ストーリー]
 空想に浸ることが大好きな22歳の女の子アメリ(O・トトゥ)の趣味は、クレーム・ブリュレのカリカリの焼き目を壊すこと、サンマルタン運河で水切りすること。ある事件をきっかけに彼女は、周りの誰かを今よりちょっぴり幸せにすることの喜びを見つける。そしてある日、不思議な青年ニノ(M・カソヴィッツ)に出会い……。
 
[コメント]
 「しあわせのにおい」がしている。この映画のすみずみから。登場する個性的な人物は、決して「しあわせ」な境遇にいるとは言い難い。しかし彼らはアメリによって、「しあわせ」になるきっかけを与えられるのだ。その後のことは彼ら次第で、新しい問題を抱えることもあれば、未知の冒険が待っているかもしれないけれど。アメリ自身、なかなか現実に立ち向かえないでいる弱い女の子だ。けれどまた彼女も他者からぽんと背中を押され、自分の手でドアを開ける。もしかしたら、ただ待っているだけでもドアは開いたのかもしれないが、その意味とそこから先に生まれるものは全く違ってくるだろう。
 そう、この映画は「しあわせ」を与えてくれる映画ではない。「しあわせ」になるには自分で一歩を踏み出さねばいけないよと、教えてくれている映画なのだ。そういうわけでこの映画からは、正確に言えば「しあわせになれそうなにおい」がしている。この映画を観たひとびとは皆、<ああ私も「しあわせ」になれそうだ>と思いながら帰っていく。 (ル)

恋ごころ
VA SAVOIR
2001年/フランス/フランス映画社配給/2時間35分
 
監督・脚本=ジャック・リヴェット
撮影=ウィリアム・リュプチャンスキー
音楽=フォーレ
出演=ジャンヌ・バリバール、セルジオ・カステリット、ジャック・ボナフェ、マリアンヌ・バスレール、エレーヌ・ド・フージュロル
 
[ストーリー]
 カミーユ(J・バリバール)は二度と戻らないと決心して3年前に去ったパリに戻った。イタリアから、劇団の主演女優として。愛人で劇団の主催者ウーゴ(S・カステリット)とともに。しかし、かつての恋人ピエール(J・ボナフェ)のことを思うとカミーユは落ち着かない。意を決してピエールを訪ねるが、迎えたのは美しい女性ソニアだった。大人の男女のおかしくてせつない恋ごころのロンドが始まる。
 
[コメント]
 現在も活躍するヌーヴェル・ヴァーグの監督たちの1人、ジャック・リヴェット。作品の瑞々しさで言ったら文句なしに彼が一番でしょう。何せこの作品を完成させた時の年齢が73歳なのですから驚き!
 また、台本が無いというのも彼の映画の特徴です。作品は役者と一緒に作っていくもの、というのがリヴェット式。そういった映画、最近は邦画でも見られるようになりましたが、こちらは40年以上前から実践しているのですから! ちなみに劇中で上演される舞台「あなたのお望みのまま」はウーゴ役のセルジオ・カステリットが演出、1粒で2度おいしい?
 しかも、今回の映画の一味違うところは、入り組んだ話ながらわかりやすく誰にでも楽しめる仕上がりになっていること。原題『VA SAVOIR』(その時にならないとわからない)がぴったりくるこの映画を観て、まだまだリヴェットは撮り続けてくれると確信しました。 (黒)

ムッシュ・カステラの恋
LE GOUT DES AUTRES
2000年/フランス/セテラ・インターナショナル配給/1時間52分
 
監督・脚本=アニエス・ジャウイ
脚本・出演=ジャン=ピエール・バクリ
撮影=ロラン・ダイヤン
美術=フランソワ・エマニュエル
音楽=ジャン=シャルル・ジャレル
出演=アンヌ・アルヴァロ、アニエス・ジャウイ、ジェラール・ランヴァン
 
[ストーリー]
 中堅会社の社長ムッシュ・カステラ(J=P・バクリ)がいやいや受講した英語の授業。その講師クララ(A・アルヴァロ)が舞台女優であることを知り、思いがけず彼女に恋してしまう。かくして、趣味趣向の全く異なる彼女に、涙ぐましいアタックを開始。彼女が出入りするバーに足を運び、彼女の仲間にバカにされても気付かない。そんな彼に対しクララは……。
 
[コメント]
 芸術オンチのカステラが、周囲にバカにされながら、不器用だけど直球勝負でクララにアタックする姿は、滑稽で切なくていじらしい。でもこの年になって、他人の価値観を受け入れたり、自分を変えたりすることはとても難しいこと。
 登場人物すべてが、個々の生き方・異なった考えを持った人間。それが、他人との関わり(殊に恋愛関係)において、自分以外の価値観とどう折り合いをつけていくか。マニーは? フランクは? そしてクララは……?
 カステラが恋に落ちたとき、彼は本当に芝居に感動し、絵に興味を持ち、愛の詩さえ綴ってしまうのです。そんな彼の繊細で柔らかな内面に、クララは気付いてくれるでしょうか。ラストにご期待ください。 (明)