RESPECT 佐々木昭一郎

11月25日 「RESPECT 佐々木昭一郎」 (ベルブホール)

●Time Table●
13:00−14:15
14:30−16:00
16:20−18:50
夢の島少女
四季・ユートピアノ
トーク(途中参考上映あり) ゲスト:佐々木昭一郎ディレクター、中尾幸世氏
              聞き手:是枝裕和監督

夢の島少女
1974年/1時間15分
 
制作=藤村恵
撮影=葛城哲郎
録音=太田進ー、長谷川忠昭
編集=松本哲夫
音楽=池辺晋一郎
作・演出=佐々木昭一郎
出演=中尾幸世、横倉健児、若林彰
 
夢の島少女
 
[コメント]
 私は記者嫌いだ。取材は作品完成後に限る。作品以外の取材は一切応じない。下の写真は「毎日」の脇地炯という記者が取材嫌いの私を察し、広報(番宣)に盗撮させたロケ風景。私はスチールは自分で撮ることにしているが『夢の島少女』では撮り忘れ、下の一枚は今では貴重品だ。同記者は著作「文学という内服薬」(砂子屋書房)「違和という自然」(思潮社)で拙作を論じている。『夢の島少女』は長嶋茂雄引退、オイルショックの10月に放映された。やがて「日曜日にはTVを消せ!」と題す手書きのミニコミ誌が届く。北大の池田博明君、愛知学院大の藤田真男君が発刊。全国に回覧し『夢の島少女』を広め、各紙は二人を称えた。池田さんは今では高校の理科の先生、藤田さんはライターである。『夢の島少女』は今年、NHKアーカイブスで27年ぶりに放映。インターネットのあるサイトでは掲示板の書き込みが一夜で数千を数えたそうだ。(佐々木昭一郎)

四季・ユートピアノ
1978年/国内版1時間30分
 
制作=小林猛
撮影=吉田秀夫
録音=長谷川忠昭
編集=松本哲夫
作・演出=佐々木昭一郎
出演=中尾幸世、堀口礼世、横倉健児、宇都宮信一
 
四季・ユートピアノ
 
[コメント]
 『夢の島少女』の後、演出助手をしながら『四季』にかかった。TBS「調査情報」編集長の村上紀史郎氏が創作ノートを2年書かせてくれた。『四季』は実際に見た夢がもとだ。終戦から数年後、近くの少年が母にピアノを習いにやって来た。私の家は大通りを隔て焼け残ったが、少年には何もなかった。彼の名は伊東克彦といい『四季』を書き始めてから、度々夢に現れた。ある日、大人になった伊東少年が母を訪ねて来た。重い鞄からAの音叉を取り出しカワイの古いピアノを調律し始めた。音を聞いた瞬間『四季』の台本は前進し、没になっていた7冊を私は捨てた。主役の名前はAの音叉と母の名からとり、企画が通った時、私はイタリア賞を確信した。「白テンを抱く貴婦人」に負けない美を今度も中尾さんから引き出す!……海から来る馬車に突っ走る栄子を手持ちで追う吉田秀夫の撮影は映像の歴史を変革する大仕事だ。『四季』、『紅い花』は全米ネットや英国BBCネットにのった日本のテレビドラマとしては今のところ最初で最後。(元放送文化基金事務局長・清水真一氏)賞は私にとって次回作への「旅券」そのものであったが、85年の「毎日芸術賞」を期にどんな賞も断ることにした。(例外は90年バンフ特別賞と革命後初のチェコ放送文化賞)そして90年代半ばまで、殆どの作品を海外との低予算合作で創った。全作品中、最も好きなフィルムは『夏のアルバム』と『東京・オン・ザ・シティー』である。撮影の秀さんもこの2本で、音の岩崎進さんは『夢の島少女』と『紅い花』。拙作の賞の真価は何か? それは超少人数式の個々のクルー・出演者の、並外れた才能で大交響楽団の個々の才能より偉大だ。『四季』の台本は「月刊ドラマ」(映人社)と「創るということ」(宝島出版)に載った。放送直後「東京新聞」に寄せてくださった清岡卓行さんの「四季・ユートピアノ」は永久の宝だ。(佐々木昭一郎)

●ゲストの紹介
佐々木 昭一郎(ささき しょういちろう)氏(テレビマンユニオン/文教大学教授/映像作家/演出家)

 1936年東京生まれ。立教大経済卒。63年よりラジオドラマの演出。『都会の二つの顔』、『おはよう、インディア』。66年『コメット・イケヤ』でイタリア賞グランプリ(賞金1200万リラ)。脚本の寺山修司、作曲家の湯浅譲二と共に国際的注目を得る。同年TVドキュメンタリー、劇映画に歩み助監督となる。71年処女作『マザー』で日本初のモンテカルロ国際TV祭の金賞・創作シナリオ賞受賞。80年『四季・ユートピアノ』で世界最大級の規模と伝統を誇るイタリア賞グランプリを受賞。ラジオとあわせ世界初のダブル受賞者となる。95年から文教大学情報学部教授となりオーディオと映像制作が担当。「10年後に本物のジャーナリストと映像作家が世に出るでしょう」と若者に夢を託す。作品数より賞の数の方が多い。「作品性と賞はなんら関係ない。賞は作品性を疎外する。『夢の島少女』は何も受賞していない」
 
中尾 幸世(なかお さちよ)氏

 1973年、東京キッドブラザーズに参加し『シティー』(74年)に出演。74〜84年、『夢の島少女』、『四季・ユートピアノ』、『川の流れはヴァイオリンの音』などNHK‐TVの5作品に主演する。81年、テレビ大賞新人女優賞受賞。84年よりラジオドラマに出演。『赤糸で縫いとじられた物語』、『DQ』(NHK‐FM)『夜明けのショパン‐甦る天才ピアニスト田中希代子』(TBSラジオ)他。89年より朗読活動を行っている。多摩美術大学デザイン学科卒業。
 
是枝 裕和(これえだ ひろかず)氏(映画監督・テレビディレクター)

 1962年、東京生まれ。87年に早稲田大学第一文学部文芸学科卒業後、テレビマンユニオンに参加。主にドキュメンタリー番組を演出。『もう一つの教育〜伊那小学校春組の記録〜』(91年)、『彼のいない八月が』(94年)、『記憶が失われた時…』(96年)等。
 95年、初監督した映画『幻の光』が第52回ヴェネチア国際映画祭で金のオゼッラ賞等を受賞。2作目の『ワンダフルライフ』(98年)は、フランスのナント三大陸映画祭でグランプリ受賞など、各国で高い評価を受け、世界30カ国、全米200館での公開と日本のインディペンデント映画としては異例のヒットとなった。3作目の『ディスタンス』(2001年)は、第54回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に招待された。