ありがとう、相米監督。 Vol.2

11月24日 「ありがとう、相米監督。 Vol.2」 (ベルブホール)

●Time Table●
13:00−14:52
15:10−17:08
17:20−18:56
セーラー服と機関銃
ションベン・ライダー
台風クラブ

セーラー服と機関銃
1981年/角川春樹事務所、キティ・フィルム製作/東映配給/1時間52分
 
監督=相米慎二
原作=赤川次郎
脚本=田中陽造
撮影=仙元誠三
音楽=星勝
美術=横尾嘉良
編集=鈴木晄
出演=薬師丸ひろ子、渡瀬恒彦、風祭ゆき、酒井敏也、柳沢慎吾、柄本明、寺田農、三國連太郎
 
セーラー服と機関銃
 
[コメント]
 冒頭、死んでしまう組長が藤原釜足(俳優名)。組の名前が目高組(めだかぐみ)。そして観客は、小さく丸い鼻の穴を下から見るというシーンでヒロインと対面する。彼女がブリッジをしながら「カスバの女」を歌っているから。場所は彼女の父親が事故死して、その斎場でだ。ブリッジ! なんで? とナンシー関風につっこみたくなる。
 それにしても薬師丸ひろ子はかわいい。同世代の女の子だったら、どんなに性格の良い子でも「なにさっ」と言いたくなるだろう。TV放映で観流した時には感じなかったのだけれど、今回スクリーンで観ていくうち、どうにもお尻がむずむずするような、こっぱずかしさを感じだした。
 少女からおとなの女性に成長する過程にある存在、に対して、男性が抱いているイメージ……夢や理想が、全編に濃くたちこめているので。無垢、純真、健気、勝気、お転婆、保護本能をくすぐるはかなさ、聖母の如き母性などなど。それらを一身に体現する”白雪姫”ひろ子ちゃん。7人の小人ならぬ3人のクラスメートの男子と4人の組員にとりまかれ、固めの杯で二日酔いになっちゃうひろ子ちゃん。悪代官ならぬ悪者やくざのボスたちにいたぶられるひろ子ちゃん。
 そこへ駆けつける組頭の渡瀬恒彦。渡瀬はおいしい役どころを軽やかに演じている。”太っちょ”役の三國連太郎は、『ホワイトアウト』の佐藤浩市をもっと漫画にしたようで笑える。相米監督のユーモアセンスなかなかです。
 でもねえ、半世紀生きちゃった女には、つっこみどころの多い作品でありました。 (穂)

ションベン・ライダー
1983年/キティ・フィルム製作/東宝配給/1時間58分
 
監督=相米慎二
脚本=西岡琢也、チエコ・シュレイダー
撮影=田村正毅、伊藤昭裕
音楽=星勝
美術=横尾嘉良
編集=鈴木晄
出演=藤竜也、河合美智子、永瀬正敏、鈴木吉和、桑野将大、坂上忍、倍賞美津子、財津一郎
 
ションベン・ライダー
 
[コメント]
 ある種の違和感。「なんだろう、これは」と思いつつ観進めていくも、全編終わっても答えは出ないんだなあ……。こんな相米作品独特の心地よさに満ちみちている作品。なんにも知らないから何かを知ろうとしているコドモたちと、なんでも知っているはずだけど何にもできないオトナたち。両者はお互いのかかわりを通じて次第に気づいていく。「知らないことなんて大したことはないのだ。」この作品のオトナたちはみんな悉くしょうもない。何かになりきれず日々を過ごしている。まさに'−クズれ'という呼称がよく似合う。「そんなことで、たまるか!」コドモたちの、彼らなりの反撃は始まったのだ。そして夏が終わるころ、それぞれの何かが動き出す。♪BANZA〜I、BANZA〜I・・・♪
 今となっては、豪華すぎるキャスト・スタッフ陣。改めて観るとひたすら驚いてしまう。いやいや、これがあって今の邦画界なのだ。キャスト(特にコドモたち)に関しては、ほとんど顔なんかわかりませんけどね、画面を観る限りでは。それにしても、いわゆる相米手法・炸裂の1本。
 ーー『手柄立てたなんて思うなよな!』 (塚)

台風クラブ
1985年/ディレクターズ・カンパニー製作/東宝、ATG配給/1時間36分
 
監督=相米慎二
脚本=加藤裕司
撮影=伊藤昭裕
音楽=三枝成章
美術=池谷仙克
編集=冨田功
出演=三上祐一、紅林茂、松永敏行、工藤夕貴、大西結花、三浦友和、尾美としのり、寺田農
 
台風クラブ
 
[コメント]
 記念すべき第1回映画祭に自分で選んだ作品がこうしてまた上映されるとは、長く生きてるといろいろあると言うか何と言うか嬉しい。
 で、この作品はいわゆる相米イズムの代表的な作品で(他に『お引越し』など)人間の感情が次第にブレーキが利かずに変わってゆく様子が、台風にダブらせて描かれていて、そのアナーキーと言うかあまりにも鋭い監督の目線が作品の隅々にまで感じられて凄い。当時中学生を扱ったものと言えば、テレビの金八先生とか新八先生とかそんなのばっかりだったから、当時は映画とテレビとでは明らかに差があったのだと思う。
 また今思い返せば工藤夕貴の初主演作だったなとかいろいろあるが、自分にとっては音楽をバービーボーイズがやっていたのが印象深い。まだデビュー直前だったと思うが、割と暗い青春映画であるこの映画に、彼らの暗いロックはよく似合っていた。
 それはともかく、この作品は監督の“らしさ”がつまった80年代を代表する傑作である。(パンフの表紙を和田誠さんがやっていたのも懐かしい) (舟)

●相米慎二監督プロフィール
相米慎二監督  1948年1月13日岩手県盛岡市生まれ。中大法学部中退。72年契約助監督で日活入社。80年薬師丸ひろ子主演『翔んだカップル』で監督デビュー。同じく薬師丸ひろ子主演の第2作『セーラー服と機関銃』が大ヒット。少年少女の揺れる心をテーマにした『台風クラブ』(85年)で東京国際映画祭ヤング・シネマ大賞、家族の再生をテーマにした『お引越し』(93年)で芸術選奨文部大臣賞、『あ、春』(99年)でベルリン映画祭国際批評家連盟賞、と精力的に話題作を生み出した。
 ワンシーン・ワンショットの長まわしなど独特の演出法を用い、薬師丸ひろ子をはじめ、永瀬正敏、工藤夕貴、牧瀬里穂など若手俳優を育てることにも定評があった。
 2001年9月9日午後4時10分、肺がんのため死去。享年53歳。『風花』(01年)が遺作となった。
 
●フィルモグラフィ
 1980年 翔んだカップル
 1981年 セーラー服と機関銃
 1983年 ションベン・ライダー
     魚影の群れ
 1985年 ラブホテル
     台風クラブ
     雪の断章 情熱
 1987年 光る女
 1990年 東京上空いらっしゃいませ
 1993年 お引越し
 1994年 夏の庭 The Friends
 1998年 あ、春
 2001年 風花