インディーズ映画のミューズ 唯野未歩子特集

12月2日 「インディーズ映画のミューズ 唯野未歩子特集」 (ベルブホール)

●Time Table●
12:00−13:14

13:45−15:20
15:35−16:31
16:45−18:11
18:25−19:05

18:57−19:30
COZY GARDEN
殺人者
大いなる幻影
クルシメさん
サンデイ ドライブ
トーク ゲスト:唯野未歩子氏、斉藤久志監督、井口昇監督
    聞き手:鈴木卓爾氏
SWEET

COZY GARDEN
1998年/VTR/30分
 
監督・脚本=斎藤久志
出演=唯野未歩子、田中要次、日野明子
 
COZY GARDEN

殺人者
1997年/VTR/44分
 
監督・脚本=斎藤久志
出演=唯野未歩子、寺十吾、吉見拓真
 
殺人者

クルシメさん
1997年/VTR/1時間
 
製作・監督=園子温
出演=鈴木卓爾、澤田由紀子、荒木経椎、麿赤児、シンイチロウアラカワ
 
クルシメさん
 
[コメント]
 大切な人が出来るとその人が傷つくことをしたくなる女ユキと、奇形の舌を持っていることがコンプレックスの女カズミは、カズミが自分の体の秘密を打ち明けるようになってから、お互いほのかな愛情を抱き始める。しかし、ユキのカズミへの想いが強くなればなるほど、カズミを傷つけたいという欲望が湧いてくる。これ以上カズミを傷つけたくないと思ったユキは、カズミから離れようとするが、カズミはそれを許さない。その後ユキはカズミのデートを台無しにしたり、カズミはユキの喜ぶようなことをしたいと想い、ユキが憎んでいる人に仕返しをする。お互い愛するが故に悲劇へと転がっていく様がリアルに描写され、面白いと同時に恐ろしくもある作品。
 人を傷つける時のユキの表情とセリフ、最後のカズミの舌には圧倒される。普段身の回りで起こるような出来事が描かれているわけではないが、ちょっとしたイジメの部分などは人間の潜在的に持っているネガティブな部分が凝縮されていて、心の底の部分を観ている間ちくちくと針を刺されているような感じがした。予想のできない展開に面白がっている一方で、次第に心がそわそわしてくる。 (朋)

大いなる幻影
1999年/ユーロスペース・映画美学校製作/35mm/1時間35分
 
監督=黒沢清
出演=唯野未歩子、武田真治
 
大いなる幻影
 
[コメント]
 この映画を、唯野未歩子主演映画、それも共演が武田真治と単なるミーハーな心持ちで観に行ったことがまったくの誤りであったと気付いたのは、ミチとハルという恋人同士のふたりがあまり言葉を交わさないからであった。だから、話を理解するためにスクリーンのなかで行なわれる出演者たちの一挙手一投足や彼らの住む世界を必死になって理解しなければならず、唯野未歩子ばかりを観ているわけにはいかなったのである。
 結局、この映画のことはほとんど理解できなかったのだけれど、ただ一つ、郵便局を襲撃する場面で、うずくまるハルにミチが手を差し伸べてその場をあとにした後、次の場面でミチとハルが笑顔を見せたとき、いい映画だったと素直に思えたのである。その笑顔を見てふたりはもう決して離れることはないだろうと心のどこかで感じていたことが、そのように思わせたのかもしれない。 (大)

サンディ ドライブ
1998年/塚本晋也製作/16mm/1時間26分
 
監督・脚本=斎藤久志
出演=唯野未歩子、塚本晋也、田中要次、鈴木卓爾
 
サンディ ドライブ
 
[コメント]
 カメラが映す映像はほとんどのシーンで、動くことがない。その映された枠の中で、役者たちは他愛もない会話をするだけである。そこで起こることは、たとえばそれが殺人のような普通に考えると大変な出来事ですら、あまりに淡々と過ぎ去ってしまう。
 だが、役者の感情はどうだろう。もちろん出演者に力量があるからなのだが、そんな役者が見せるなにげない仕種や会話のなかに、それは思いのほど豊かに感じることができる。
 そしてカメラは、それを映像に焼き付けようと必死になってその場面を見つめるから、動きようがなくなる。だからそんなカメラの残した映像は、一つ一つのシーンにとても緊張感があり、目が離せなくなってくるのである。
 だからといってそんなことは、観ている間に考える必要などまったくない。気が付くと、いつのまにかむこうの世界に引き込まれているのだから。 (大)

SWEET
1998年/塚本晋也製作/16mm/1時間26分
 
監督=唯野未歩子
 
[ストーリー]
 とある夏の昼下がり、不思議な録音技師二人が、人生の節目節目で戸惑い、悩み、悲しむ女たちの声をやさしく拾い集めてゆく。

●ゲストの紹介
唯野 未歩子(ただの みあこ)氏

 東京都出身。『ワンピース』(鈴木卓爾・矢口史靖監督)などの自主映画に多数出演後、映画を中心に活躍し、はかなげな存在感を示す希有な女優。自身でも映画製作を積極的に行っている。
 ○主な出演作品
  『フレンチドレッシング』(斎藤久志監督)
  『サンディドライブ』(斎藤久志監督)
  『大いなる幻影』(黒沢清監督)
  『東京フィスト』(塚本晋也監督)
  『BULLET BALLET/バレット・バレエ』(塚本晋也監督)
  『金髪の草原』(犬童一心監督)
  『ざわざわ下北沢』(市川準監督)ほか。
 
斎藤 久志(さいとう ひさし)監督

 1959年、東京生まれ。高校時代より8mm映画を撮り始める。85年、PFFに入選しスカラシップを獲得。『はいかぶり姫物語』を監督する。97年、『フレンチドレッシング』で劇場監督デビュー。他に脚本、舞台演出も手がける。
 
井口 昇(いぐち のぼる)監督

 1969年、東京生まれ。AV監督。その特異な風貌で平野勝之や矢口史靖監督らの作品にも出演。強烈な印象を残す。劇団「大人計画」の役者でもある。監督作品は『クルシメさん』の他に『わびしゃび』(88年)がある。
 
鈴木 卓爾(すずき たくじ)氏

 1967年静岡県生まれ。高校時代より映画制作に興味を持つ。85年、東京造形大学入学後、自主映画製作開始。87年『にじ』(8mm・PFF88審査員特別賞受賞)、96年『おっけっ毛ビビロボス』(16mm)、94年〜現在継続中『ワンピース・プロジェクト』(共同・矢口史靖監督)などの作品を監督しながら脚本家、俳優として多方面に活躍中。
 ○主な出演作品
  『トキワ荘の青春』(市川準監督)
  『ひみつの花園』(矢口史靖監督)
  『雷魚』(瀬々敬久監督)
  『東京夜曲』(市川準監督)
  『アドレナリンドライブ』(矢口史靖監督)
  『サンディドライブ』(斎藤久志監督)
  『ざわざわ下北沢』(市川準監督)
  『忘れられぬ人々』(篠崎誠監督)など多数。