戸田奈津子の特選映画シアター

11月25日 「戸田奈津子の特選映画シアター」 (やまばとホール)

●Time Table●
10:30−10:40
10:40−12:51
13:25−15:41
16:00−17:51
18:10−19:20
オープニング
ハンニバル
小説家を見つけたら
リトル・ダンサー
戸田奈津子のシネマレクチャー

ハンニバル
HANNIBAL
2001年/アメリカ/ギャガ・ヒューマックス共同配給/2時間11分
 
監督=リドリー・スコット
脚本=スティーブン・ザイリアン
撮影=ジョン・マシソン
音楽=ハンス・ジマー
出演=アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア、ジャンカルロ・ジャンニーニ、レイ・リオッタ
 
ハンニバル
 
[ストーリー]
 ハンニバル・レクター博士(A・ホプキンス)との面談で犯人逮捕の手柄をあげたクラリス・スターリング(J・ムーア)はFBIのベテラン捜査官となり、ヴァージニアで勤務についた。そのクラリスに目をつけた人物がいた。レクターの手によって顔を失った大富豪のメイスン。かつてレクターの患者だった彼は、飲まされた麻薬のため自らの顔の皮をはぎとられてしまう。メイスンは報復を果たすため、レクターの行方を追跡していた。レクターとクラリスの特別の関係を聞き出し、クラリスをレクター狩りの任務につける。こうしてクラリスは再びレクターを追う。
 この頃フィレンツェに潜伏していたレクターは、フェル博士と名を変え司書におさまっていた。しかし、ずっとクラリスの動向に目を光らせていた……。
 
[コメント]
 羊たちの沈黙』でのジョディ・フォスターが演じるクラリスは好きだったのだが、ジュリアン・ムーアもパーソナルトレーナーを雇って体作りをしただけに素晴らしい捜査官だったし、女っぽい魅力も充分である。
 普通の人間が二面性を持って突然殺人鬼と化す。最近、映画ではなく現実にこんな事件が立て込んで発生している。こんなストーリーは映画のなかだけでドキドキしたいものだ。ラストシーンの飛行機は「東京行」(?)とか。第3章が楽しみである。 (紀)

小説家を見つけたら
FINDING FORRESTER
2000年/アメリカ/ソニー・ピクチャーズ配給/2時間16分
 
監督=ガス・ヴァン・サンド
脚本=マイク・リッチ
撮影=ハリス・サヴィデス
音楽=マイルス・デイビス、オーネット・コールマン
出演=ショーン・コネリー、ロブ・ブラウン、F・マーリー・エイブラハム、アンナ・パキン
 
小説家を見つけたら
 
[ストーリー]
 ニューヨークの古いアパートメントの最上階に、謎の老人(S・コネリー)が住んでいる。ひょんなことから彼と知り会った高校生ジャマール(R・ブラウン)は、部屋から一歩も出ない偏屈なこの老人の、見事な蔵書・知識の深さに惹かれていく。やがてジャマールは名門私立校の特待生になり、学問でもバスケットボールの選手としても卓越した才能を発揮するが、貧しい黒人ゆえに差別を受ける。そんなとき、老人が伝説的な作家フォレスターと知り……。
 
[コメント]
 ありがちな設定のストーリーなのだが、ショーン・コネリーの存在感とはまり役とも思えるほどの演技で、味わい深い作品に仕上がっている。ショーン・コネリーが、ここまで枯れてなおカッコイイ名優になろうとは、彼が007役のアクション・スターとして一世を風靡したとき、誰が想像しただろうか? 彼を取り巻く琥珀色の空気のおかげで、ニューヨークの街並みも雰囲気たっぷりになり、新人のブラウンにも品格を感じられるようになるのが不思議だ。同系の作品『グッド・ウィル・ハンティング』より地味だが、説得力のある作品である。そして、むしろ視点は、差別を受ける天才高校生を老作家が助けるというより、頑固に心を閉ざして人間嫌いになっている巨匠が再び世界を見出すまでを、優しく描いている。だから、ラストはちょ〜〜〜っと不満。でも、秋の1日には、特にお薦めの一作である。 (夏)

リトル・ダンサー
BILLY ELLIOT
2000年/イギリス/日本ヘラルド映画配給/1時間51分
 
監督=スティーブン・ダルドリー
脚本=リー・ホール
撮影=ブライアン・トゥファーノ
音楽=スティーブン・ウォーベック
出演=ジェイミー・ベル、ジュリー・ウォルターズ、ゲアリー・ルイス、アダム・クーパー
 
リトル・ダンサー
 
[ストーリー]
 1984年、英国北東部ダーラム炭鉱。炭鉱のストライキで失業中の父さんは、ビリー(J・ベル)にはボクシングやサッカーで強い男の子になって欲しいと望む。でも11歳のビリーが夢中になったのはクラシックバレエ。どこにいても音楽が聞こえると体が動き出してしまう。そんなビリーにバレエの先生が素質を見つけ、ロイヤル・バレエ学校のオーディションの話を持ち出す。しかし、父さんはやっぱりバレエには反対で……。
 
[コメント]
 この作品に出てくるビリーのダンスはとっても印象的。喜び、悲しみ、怒りなどの少年ならではの激しい気持ちが見事にダンスで表されている。観ているだけで、子供のやりきれない気持ちなどが伝わってくる。炭鉱のストライキ中の親子の絆、親友・マイケルとの友情など見所いっぱいの映画。
 ビリー役には踊りも演技もできる北東部出身の訛がある11歳前後の少年でなければならなかった。そして2000人を超えるオーディションから選ばれたのが、13歳のジェイミー・ベル。ジェイミーは6歳の時からダンスを習い、この作品で素晴らしいダンスを披露している。
 そして、アダム・クーパーが特別出演しているのも注目すべき点といえる。彼はロイヤル・バレエ団のプリンシパルとなった世界的トップダンサーの1人であり、1999年トニー賞ミュージカル部門最優秀男優賞にノミネートされた代表作ともいえるAMPの「白鳥の湖」を本作で披露し、感動を与えた。 (福)

●ゲストの紹介
戸田 奈津子(とだ なつこ)氏

 東京都出身。字幕翻訳家。幼くして父親が戦死。映画好きの母親と勤め帰りに待ち合わせて色々な映画を観るうちに映画の日本語字幕に興味を持ち、翻訳の仕事をしたいと思うようになった。特に『第三の男』は日本語字幕をすべて覚えてしまうほど好きな映画だった。
 津田塾大学英文科に進んでから、日本語字幕の第一人者である清水俊二氏に手紙を書いたが、いい返事はない。しかし、清水氏に最初に言われた言葉で、「映画字幕は翻訳にあらず。日頃から、全ての物事に興味を持ち、雑学博士となれ」は、今でも映画字幕作業の基本としている。
 大学を卒業後、生命保険会社の秘書となるが、映画字幕の翻訳の夢が捨て切れず、1年で退社。翻訳のアルバイトを続けるうちに、清水氏の紹介で映画関係の翻訳、通訳の仕事が回ってきた。そして1970年『小さな約束』で翻訳家デビュー。以後『地獄の黙示録』『E.T.』『フィールド・オブ・ドリームズ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『A.I.』など数々のヒット映画を手がける。特選映画シアターで上映する3作品も翻訳作品である。著書に「男と女のスリリング」(集英社)「字幕の中に人生」(白水社)がある。