児童文学に親しもう

11月25日 「児童文学に親しもう」 (やまばとホール)

●Time Table●
11:00−11:10
11:10−12:36
13:10−14:40
15:00−16:00
16:20−17:38
18:00−19:26
オープニング
ロッタちゃん はじめてのおつかい
やかまし村のこどもたち
講演 赤木かん子氏(児童文学評論家)
ロッタちゃんと赤いじてんしゃ
やかまし村の春・夏・秋・冬

ロッタちゃん はじめてのおつかい
LOTTA LEAVES HOME(LOTTA FLYTTAR HEMIFRAN)
1993年/スウェーデン/ABスヴェンスク・フィルムインドゥストリィ、アストリッド・リンドグレーン・ヴェールド、SVTカナール1・ドラマ製作/エデン、ミラクル・ヴォイス配給/1時間26分
 
監督・脚本=ヨハンナ・ハルド
原作=アストリッド・リンドグレーン
撮影=オーロフ・ヨンソン
美術=ラッセ・ヴェストフェルト
音楽=ステファン・ニルソン
編集=ヤン・ペルション、クリステル・フールブラント
出演=グレテ・ハヴネショルド、リン・グロッペスタード、マルティン・アンデション、ベアトリース・イェールオース、クラース・マルムベリィ、マルグレット・ヴェイヴェルス
 
[ストーリー]
 ロッタちゃん(G・ハヴネショルド)は、5才。スウェーデンのヴィンメルビーという小さな町に、両親・お兄ちゃん・お姉ちゃんと住んでいます。何でもできると思っているけど、苦手なこともあるの。ある朝、夢見の悪かったロッタちゃんを待っていたのはチクチクのセーターで、ふくれっ面になった彼女は、セーターをハサミで刻んだ上に、お隣の屋根裏部屋に家出してしまいます。でも、夜心細くなった時、パパが迎えに来てくれて……。それから、クリスマスには大好きなぶたのぬいぐるみの<バムセ>とパンの入った袋を、ゴミと間違えて出しちゃったり。パパがクリスマス・ツリーを買い損ねたけど、絶対ゲットするぞ!と頑張ったり。イースターの日にも色々ガッカリすることもあったけど、ロッタちゃんの名案で素敵な奇跡が起こります……。
 
[コメント]
 スウェーデンの国民的童話作家で『長くつ下のピッピ』で有名な、アストリッド・リンドグレーン原作の映画化。奈良美智さん描くキュートなふくれっ面の絵と共に、この春、オシャレな女性たちの間で一大ブームとなった作品だ。ロッタちゃんはたった5才なのに、とても頑固! こうと思ったら、絶対にやり抜く。その辺の映画の、ただ可愛くて大人に翻弄されている子どもと違い、しっかりした意志と主義主張を持っている。実は、これは当たり前のことなのです。日本の普通の子どもたちも、その言動には立派な理由があるのです。間違ったり未熟だったりしても、大人はちゃんと理解した上で訂正してあげなくてはいけない。ロッタちゃんの両親と共に、そのことを微笑ましく教えてくれる映画だ。そして、ロッタちゃんは小憎らしいけど、お菓子屋さんのバシリスさんの言うとおり<楽しい子>だ。夢や理想に飛躍しなくても、現実が十分に輝かしいのを知っている子。ロッタちゃんファミリーのように、プンプン怒っても楽しい大人や子どもで溢れた世界になりますように!! (夏)

やかまし村の子どもたち
ALL A VI BARN I BULLERBYN
1986年/スウェーデン/アスミック・エース配給/1時間30分
 
監督=ラッセ・ハルストレム
原作・脚本=アストリッド・リンドグレーン
撮影=イエンス・フィッシェル、ロルナ・リンドストレム
音楽=イェオルグ・リーデル
出演=リンダ・ベリーストレム、アンナ・サリーン、エレン・デメリュース
 
[ストーリー]
 やかまし村は赤い屋根の家が3軒だけの小さな村。リサ、その兄のラッセ、ボッセ、隣のオッレ、その隣のブリッタとアンナの姉妹6人の子どもたちは、兄弟みたいにいつも仲良し。ボートをこいで島へ宝捜しにいったり、干し草のなかで眠ってみたり。短い北欧の夏を、子どもたちは数え切れないほどの思い出を作っていく。
 
[コメント]
 とあるうららかな休日の午後。玉子とハムのサンドイッチをつくり、魔法瓶に紅茶を入れ、読みかけの、か、またはその日の気分で選んだ本を携え、幾つかあるお気に入りの公園のひとつに出かける。芝生にて寝っ転がりながらしばし読書に勤しむものの、気怠い午後の暖かな日差しに眠気を誘われ、須臾まどろんでしまう。少し肌寒い微風に目が覚め、うたた空を見上げると、ゆるやかに雲が流れているのに気付く。暫時ボーっと眺めていると、幼少の砌、今と同じような情況で、仰向けに寝転びながら空を眺めていた時のことをふと思い出した。その頃は何故だか雲は動かないものだと思い込んでいたので、風にゆられて流れゆく雲の動きにいたく驚き、ただ純粋に感動したものだった。常に変化する空の景色は、眺めていて決して飽きることがなく、雲の形を何かに連想したり、ガリバー旅行記に出てくる空飛ぶ島(ラピュータ)のエピソードではないけれど、あの雲のなかには何か不思議な世界があるんじゃないかと夢想したり、楽しみながらいつまでも見続けていられた……。やかまし村の子どもたちも、大自然のなかで知恵を働かせ、自分たちで遊びを作って日々楽しく過ごしている。その想像力の豊かなこと。今のように何でも揃い与えられる環境のなかで暮らしている子どもたちにはできないであろう自由闊達な発想は、純粋で瑞々しい感性に溢れている。こんな素敵な村で、こんな素敵な子どもたちと、自分も少年時代を共に過ごせたなら、どんなに素敵だったろうか。晩年は是非やかまし村で静かに余生をおくりたい。 (齋)

ロッタちゃんと赤いじてんしゃ
A CLEVER GIRL LIKE LOTTA(LOTTA PA BRAKMAKARGATAN)
1992年/スウェーデン/ABスヴェンスク・フィルムインドゥストリィ、アストリッド・リンドグレーン・ヴェールド、SVTカナール1・ドラマ製作/エデン、ミラクル・ヴォイス配給/1時間18分
 
監督・脚本=ヨハンナ・ハルド
原作=アストリッド・リンドグレーン
撮影=オーロフ・ヨンソン
美術=ラッセ・ヴェストフェルト
音楽=ステファン・ニルソン
編集=ヤン・ペルション
出演=グレテ・ハヴネショルド、リン・グロッペスタード、マルティン・アンデション、ベアトリース・イェールオース、クラース・マルムベリィ、マルグレット・ヴェイヴェルス
 
[ストーリー]
 『ロッタちゃん はじめてのおつかい』の姉妹篇。スウェーデンの春から夏の風景と、かわいい音楽、もちろんCUTEなファッションも要注目の作品です。春のある日、ロッタちゃん(G・ハヴネショルド)は家族のみんなとピクニックに出掛けます。釣りをしたり、鳥の巣を見つけたりと自然を満喫しますが、大切なブタのぬいぐるみ<バムセ>がいなくなるわ、お兄ちゃんのヨナスが湖で溺れるわと家族は大騒ぎ。でもロッタちゃんはご機嫌なのでした……。
 
[コメント]
 <それでもあなたはロッタちゃんを好きですか?> その昔、「ロンパールーム」という幼児番組があって、このなかに「ニコちゃん」と「コマッタちゃん」という蜂の子どものキャラクターがいたのですが(覚えている方いますか?)、この映画のロッタちゃんはまさにこの「コマッタちゃん」なのです。人の家の自転車は盗むは、食べ物の好き嫌いは言うは、湖で溺れてる兄ちゃんを見て「面白〜い」だし、あげくの果ては牛のウンチの山に乗っかって「大きくなりた〜い!!」ですから。これにはさすがに「コマッタ」を通り越して「バッカじゃねぇ〜!」ですよ。でも、子どもって時には残酷な一面もあるのではないでしょうか? いつも品行方正な子どもなんて逆に気持ち悪いし……。いたずらもわがままも、ある意味子どもの特権かもしれません。別に悪いことを奨励しているのではなく、いい面と悪い面を持ち合わせてこそ子どもだし人間なのです。そして子どもは常に大人に「認められたい」と思っているのです。だからこそ子どもって面白い生き物だし、子育ても面白いのでしょう。『おつかい』篇とこの作品で初めて彼女の人格は成立します。それでも彼女が好きかどうか、この映画は私たちに問いかける言わば「踏み絵」のような作品です。ちなみに私はこれを観て「来世はこの子の人格を持った女の子で決まり!」と勝手に決めました。それから、「カーッ!」って効果音もかなりイケてます。CHECKですよ! (亜)

やかまし村の春・夏・秋・冬
MER OM OSS BARN I BULLERBYN
1986年/スウェーデン/アスミック・エース配給/1時間26分
 
監督=ラッセ・ハルストレム
原作・脚本=アストリッド・リンドグレーン
撮影=イエンス・フィッシェル
音楽=イェオルグ・リーデル
出演=リンダ・ベリーストレム、アンナ・サリーン、エレン・デメリュース、ハーランド・レンブルー、ヘンリク・ラーセン
 
[ストーリー]
 クリスマス・イブの日の午後には、やかまし村の子どもたちは、まい年、かならずかごをもって、森のわきのクリスティンをたずねます。かごには、おかあさんたちみんながつめた、おいしいものがぎっしりはいっているんです。そして、ブリッタとアンナが、おじいさんの小さいクリスマス・ツリーをかざりつけしているのを見学します。おじいさんは、ほとんど目が見えないので、モミの木になにをつるしたかは見られません。でも、わたしたちがそのようすをはなしてあげると、おじいさんは、「ああ頭の中で、はっきりと見えるよ。」というんです。ー「やかまし村の春・夏・秋・冬」 大塚勇三訳より。
 
[コメント]
 『やかまし村の子どもたち』の続編、シリーズ第2弾。今回も原作者リンドグレーンが脚本を担当し、ハルストレム監督が映像化。それはまるで、美しい絵本を目の前で1ページずつ開いてくれるかのように。私はこれほど自然と子どもたちが美しく、やさしく描かれている映画を他に知らない。そのやさしさは、観る人をやかまし村の子どもにして、北欧の自然に触れたような気持ちにしてくれる。鮮やかな春の花、緑の夏、秋に色づく森の紅葉、まっ白いクリスマス、四季折々の色彩豊かな自然とともにのびのびと遊び、成長する子どもたち。リンドグレーンの故郷スウェーデンの四季の変化は、日本よりも著しくて、日照時間の短い冬が長く続き、白夜のような夏が短いそうだ。だから季節の移り変わりを喜び、歳時を大切にするのだろう。2つのエピソードのシーンが印象的だ。北欧はサンタクロースの故郷。クリスマス(ユールという)はやはり特別なものなのだろう。エイプリルフールは長い冬に別れを告げる重要な意味を持つ日。美しく、穏やかな色調で描かれる彩豊かな自然と、そのなかの子どもたちの姿は、季節感の変化を少なくし、色を変えない都市で生活する私にはとても貴重で、うらやましく思える。北欧、スウェーデン、やかまし村、一度暮らしてみたい。 (清)