日本映画をどうするのか‘00

11月23日 「日本映画をどうするのか‘00」 (やまばとホール)

●Time Table●
10:50−11:00
11:00−12:51
13:30−15:48
16:10−17:41
18:00−19:00



19:20−21:00
オープニング
どら平太
梟の城
雨あがる
シンポジウム「生き続ける黒澤イズムと時代劇の魅力」
 ゲスト:小泉堯史監督、野上照代氏、寺尾聰氏、宮崎美子氏、
 聞き手:北川れい子氏(映画評論家)
御法度

どら平太
2000年/『どら平太』製作委員会、日活、毎日放送、読売広告社製作/東宝配給/1時間51分
 
監督=市川崑
原作=山本周五郎
脚本=黒澤明、木下恵介、市川崑、小林正樹 撮影=五十畑幸勇
音楽=谷川賢作
美術=西岡善信
編集=長田千鶴子
出演=役所公司、浅野ゆう子、宇崎竜童、片岡鶴太郎、石倉三郎、石橋連司、菅原文太
 
[ストーリー]
 とある小藩の壕外(ほりそと)と呼ばれる一画で、不正が横行していた。その不正を一掃せよとの役目を仰せつかった新任の町奉行、望月小平太(役所)。振る舞いは豪放、不埒を極め、通称“どら平太”の異名をもつ彼だが、独自の捜査で事件を解決していく。
 
[コメント]
 「今日も町奉行は出仕することなし」ーー。町奉行所、書役の言葉なのだが、何とも言えない“遊び心”を感じずにはいられない。この作品は「痛快」「愉快」「豪快」と謳われているように、痛快娯楽時代劇である。その通り、観ていて気分のいい映画である。ストーリーは時代劇の定番である、一癖ある主人公が悪を懲らしめる、いわゆる勧善懲悪ものなのだが、近年、このジャンルの主流となっているTVの時代劇では観ることの出来ない、映画ならではこだわり(遊び心)が随所にみられ、セリフの面白さ、そしてストーリーの明快さやテンポの良さがあいまって、映画ならではの醍醐味を存分に味わうことができる作品である。特に50人以上もの敵を倒す、みね打ちの立ち回りの爽快さと最後のオチの部分は見逃せない。キャストも豪華、役所広司はまさにハマリ役、脇を固める俳優陣もそれぞれのキャラクターが見事に生かされている。城代家老役の大滝秀冶のコミカルさは、なんともいえない味わいがあり、菅原文太演じる悪役も従来のイメージとは異なった独特の面白さがある。近年『帰ってきた木枯らし紋次郎』、『四十七人の刺客』と、シリアスな時代劇が多かった市川崑監督だが、このような痛快娯楽時代劇というのは久々の快挙である。1969年に結成された、四騎の会(黒澤明、木下惠介、市川崑、小林正樹)の幻の企画が30年を経て実現。これぞ、時代劇! ぜひ、ご覧あれ! (守)

梟の城(ふくろうのしろ)
1999年/表現社、映画『梟の城』製作委員会/東宝配給/2時間18分
 
監督・脚本=篠田正浩
原作=司馬遼太郎
脚本=成瀬活雄
撮影=鈴木達夫
音楽=湯浅譲二
美術=西岡善信
編集=吉田博
衣装=朝倉摂
出演=中井貴一、鶴田真由、葉月里緒菜、上川隆也、マコ・イワマツ、山本學、小沢昭一、岩下志麻、中村敦夫(ナレーション)
 
[ストーリー]
 天正九年(1581年)時の権力者織田信長は、天下統一の総仕上げとしてかねてからの懸案だった伊賀忍者を根絶やしにするため彼らの里に攻め入り、伊賀忍者は滅亡したかにみえた……。時は流れて天正十九年(1591年)、人里離れた草庵でひっそりと暮らす伊賀忍者の葛籠重蔵(中井)のもとに重蔵の師匠(山本)が、境の豪商・今井宗久(小沢)の意を受けひょこり現れ信長の後継者である太閤秀吉(M・イワマツ)の暗殺計画を持ちかける。重蔵は早速宗久のもとに赴くが道中、小萩(鶴田)と名乗る謎の美女と出会う……。
 
[コメント]
 本作は、故司馬遼太郎氏の代表作である同名小説を氏の作品を過去数多く手掛け、氏とも個人的にも親交が深かった名匠・篠田正浩監督が完全映画化した。この映画にはこれまでの日本映画の時代劇の常識を打ち破る様々な仕掛けが施されているが、その一つが歴史的な建造物や景観の再現シーンである。今回、篠田監督は実際に秀吉が晩年を過ごし、作中彼の暗殺を謀る葛籠重蔵と上川隆也扮する下呂正平こと風間五平が幾度となく出会う伏見城と聚楽第や文禄および慶長の役のためだけに秀吉が築城させた筑前国(今の福岡県)の名護屋城および京都や奈良の市街地などを現存する遺構や史料、そして最新の研究成果をもとに現在活用できる様々な最新デジタル合成技術を駆使して忠実に映像化しているが、そのリアルさは見事というほかはない。また篠田監督の夫人である女優の岩下志麻(今回秀吉の正室・北政所役として出演)が見守るなか、観世流の家元であり本作の能監修も手がけた人間国宝の観世榮夫氏が秀吉として能を舞うシーンも見逃せない。日本映画のなかで時代劇は、製作費をかけた割に当たり外れの多いジャンルだと言われるが、この『梟の城』はそうしたジンクスを打ち破り、今後の時代劇のあり方に一石を投じた秀作だと言える。 (鴨)

雨あがる
2000年/『雨あがる』製作委員会、アスミック・エースエンタテインメント製作/東宝配給/1時間31分
 
監督=小泉堯史
原作=山本周五郎
脚本=黒澤明
監督補=野上照代
撮影=上田正治
音楽=佐藤勝
美術=村木与三郎
編集=阿賀英登
衣装=黒澤和子
出演=寺尾聰、宮崎美子、三船史郎、檀ふみ、吉岡秀隆、井川比佐志、仲代達矢
 
[ストーリー]
 雨が続き、大井川を渡れない旅人たちがたまる安宿。浪人・三沢伊兵衛(寺尾)、たよ(宮崎)夫婦と同宿の夜鷹のおきん(原田)、説教節の爺がもめごとを起こす。続く長雨に誰もがいらついているのだ。伊兵衛が雨のなかを出ていったかと思うと、米、味噌、酒、魚などを大量に持ち帰り宴の準備をはじめた。それを見て悲しそうに目を伏せ部屋にこもった妻たよを除いて宿の旅人たちの宴会がはじまり、今まで長雨にふさいでいた人々が活気を取り戻し、歌い踊り心から喜び、おきんと爺も仲直りする。しかし、この宴の準備のお金は、伊兵衛がたよに決してしないと約束していた賭け試合によるものだった。たよに謝る伊兵衛だが……。
 
[コメント]
 長雨のシーンから、雨上がりの爽やかさ、そして川の水が引き渡ることが出来るようになって活気づく大井川周辺。雨や、雨上がりの木々や緑の匂いが感じられるようだ。伊兵衛、たよ夫婦の思いやりの深さ、誰も彼もが「キレる」今日この頃、決して「キレない」この夫婦の姿が、なんと人の心を温かくすることだろう。宮崎美子が控えめだが気持の強い女性をとても魅力的に演じているし、嫌味なくらい謙遜な、少し困ったような顔の寺尾聰も良い。また、「誰だ? シロートくさい……」と思った永井和泉守役だが、見ているうちに、なるほどこの役はこの人だ! と納得させられた。素のままののびのびとした育ちの良さ、人間の大きさがにじみ出ていて、おぼっちゃまが美点をそのままに成長したかの様だ。どこの御子息か? その名も三船史郎、お父上は三船敏郎である。70年代大学在学中に3本の映画に出演して以来この作品が28年ぶりの出演となる。この殿様は思ったことは率直に口に出さずにはいられないが、実際の三船氏はとても礼儀正しく気遣いなさる方だそうである。映画を観た後、こんな爽やかな気持になるのは久しぶりだった。外に出たら、貴方もきっと空を見上げるはず。 (kame)

御法度
1999年/大島渚プロダクション、松竹製作/松竹配給/1時間40分
 
監督・脚本=大島渚
原作=司馬遼太郎
撮影=栗田豊通
音楽=坂本龍一
美術=西岡善信
衣装=ワダエミ
出演=ビートたけし、松田龍平、武田真治、浅野忠信、崔洋一、坂上二郎、トミーズ雅、田口トモロヲ
 
[ストーリー]
 1865年・夏、京都。西本願寺にある新選組道場では、近藤(崔)、土方(たけし)ら幹部立会いのもと、新隊士を選抜する試合が行なわれていた。志願者のなかに息を飲むような色気を放つ美貌の青年・加納(松田)がいた。彼が入隊したことにより、男だけの世界・新選組に波紋が起きる。
 
[コメント]
 江戸時代、ホモセクシャルを<衆道>といった。何とも武張った響きである。そして舞台となるのが、あの新選組だという。ある映画評論家は「剣道の稽古シーンがセックスの相性を試しているようで、激しくセクシーだ」と書いていて、なるほどそうかと思い当たった。『戦場のメリークリスマス』にも剣道の朝稽古のシーンがあり、なぜかとても色っぽく思ったのだった。封切り前の宣伝キャンペーンで大島監督がいっていた。「16歳の女の子の感覚を意識した」と。そう聞くと『御法度』は、竹宮恵子や萩尾望都が漫画で描いた世界を、時代劇のスタイルで描き出したと言えるのかも。映画では珍しいなと思ったことが一つ。画面に時々、芝居のト書のような文字が入るのだ。なんともポップな印象でおもしろかった。さて豪華キャストはというと、まず近藤勇の崔洋一。美少年惣三郎と相対した時の、やたらに揺れ動く瞳の怪しさったら!(妖しさではない)そして坂上二郎、トミーズ雅、藤原善明までがユーモアを添える。武田真治の沖田総司はあまりに好青年で美しさが健康的すぎると感じたが、惣三郎の隠微な妖しさとのコントラストを意図したのかもしれない。ビートたけし、浅野忠信(原作では醜男だが)、田口トモロヲ、的場浩司、それに鼻豆鉄砲の梅垣義明も? はまり役である。テーマがテーマだけに女っ気は花魁の神田うのぐらいで、とにかく男ばっかり! 音楽は『戦メリ』に続いて坂本龍一。端正且つミステリアス。さすがです。ともあれ、とかく男くささの極みにあるような集団で薔薇が妖しく咲き乱れるという……大島監督、100分を楽しませてくれます。 (苅)