第30回映画祭TAMA CINEMA FORUM

プログラム紹介

【B-4】鬼才の狂宴 いまおかしんじ監督×城定秀夫監督

11/22[日] ヴィータホール

チケット料金

一般
前売のみ:1,200円 /

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れいこいるか

  • 2019年/朝日映劇製作/ブロードウェイ配給/100分
  • 監督=いまおかしんじ
  • 企画=朝倉大介
  • プロデューサー=川本じゅんき、朝倉庄助
  • 脚本=佐藤稔
  • 撮影=鈴木一博
  • 音楽=下社敦郎
  • 編集=蛭田智子
  • 出演=武田暁、河屋秀俊、豊田博臣、美村多栄、時光陸、田辺泰信、上西雄大、上野伸弥、石垣登、西山真来、佐藤宏

ストーリー

1995年、伊智子(武田)と太助(河屋)は、阪神淡路大震災により一人娘のれいこを亡くす。その後二人は離婚し、それぞれの生活を始める。淡々とした日常の中、伊智子と太助は、徐々にれいこの死を受け入れていく。2018年、久しぶりに再会した二人は、れいことの思い出の水族館へ向かう。そこで偶然出会ったのは……。

コメント

劇場で7回観ましたが、涙腺崩壊するところはすべて同じシーン。ラスト近くの水族館と伊智子と太助といるかのぬいぐるみで川の字になって寝るところ。れいこの死後離婚した二人が罪悪感を抱えつつ、飄々と日常を生きていき23年が過ぎて再会したとき、れいこの喪失感は決して薄れていなかったこと、それでも明日からはまた剽軽に生きていくことを見せてくれて、これが人生だなぁとしみじみと実感。

劇場のゲストトークで印象的だったのは、本作の音楽を担当した下社敦郎氏(『東京の恋人』監督)と女優の川上奈々美さん(『東京の恋人』主演)。『たまもの』ファンだという川上さん、「めっちゃ凄まじかった。10代、20代は観たほうがいい」。本作のサントラ版を希望者に送っている下社監督、「(コロナ禍の状況だからこそ)1対1のつながりを大事にしたい」。れいこ役のテルコちゃんが登場したり、本作を絶賛している今泉力哉監督が客席からキューを出したりと奇跡のような時間でした。しかもこの日配られたカードには「ここ数年で一番泣かされた映画でした」(城定秀夫監督感想文より)と。(LS)

アルプススタンドのはしの方

  • 2020年/「アルプススタンドのはしの方」製作委員会/SPOTTED PRODUCTIONS 配給/75分
  • 監督・編集=城定秀夫
  • 企画=直井卓俊
  • プロデューサー=久保和明
  • 原作=籔博晶 兵庫県立東播磨高校演劇部
  • 脚本=奥村徹也
  • 撮影=村橋佳伸
  • サウンドデザイン=山本タカアキ
  • 主題歌=the peggies
  • 演奏協力=シエロウインドシンフォニー
  • 出演=小野莉奈、平井亜門、西本まりん、中村守里、黒木ひかり、平井珠生、山川琉華、目次立樹

ストーリー

母校の甲子園初出場を応援に来た演劇部の安田(小野)と田宮(西本)、元野球部の藤野(平井)、帰宅部の宮下(中村)の4人は、それぞれもやっとした思いを抱え、「しょうがない」という言葉を繰り返していた。戦況不利な状況がスリリングな展開へと試合が進むにつれ、4人の心も次第に変化し、いつしか腹の底から「ガンバレ」と……。

コメント

夏の甲子園が舞台となる本作だが、マウンドや高校球児たちが映ることは1度もない。カメラフレームは、終始アルプススタンドのはしの方で渋々応援に来た同級生4人をメインに捉えている。

本作は全国高等学校演劇大会で最優秀賞に輝いた戯曲を映画化したもので、舞台をそのまま映像化した手法が斬新でおもしろい。印象的なのは、何度も出てくる「しょうがない」というセリフ。「負けたってしょうがない」「応援したってしょうがない」――人は生きていくなかで経験する数々の「しょうがない」という苦しく悔しい思いや、それでも諦めずしがみついた先の奇跡に胸を震わせたことがあるだろう。そんな登場人物の思いが、今はすっかり大人になった人や、今がアオハルな若者など観ている人の心にオーバーラップし共感するのではないだろうか。「しょうがない」だけでは終わらせない。頑張った向こう側に見える景色を信じて成長していく4人には輝かしい未来が見えてくる。エンドロールで流れる主題歌の「青すぎる空」の疾走感も清々しく胸にきゅんと刺さり爽やかな気分にさせてくれた。(Co)

ゲスト紹介

いまおか しんじ 監督

Imaoka Shinji

1965年生まれ、大阪府出身。瀬々敬久、神代辰巳らの助監督を経て『彗星まち』(95年)で監督デビュー。2011年にはクリストファー・ドイルを撮影にむかえた日独合作映画『UNDERWATER LOVE おんなの河童』を発表。代表作に『たまもの』(04年)、『つぐない 新宿ゴールデン街の女』(14年)、『あなたを待っています』(16年)など。脚本家としても活動しており、『苦役列車』(12年)、『超能力研究部の3人』(14年)などがある。

城定 秀夫 監督

Jojo Hideo

1975年生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学在学中から8mm映画を制作。卒業後、フリーの助監督としてピンク映画、Vシネマでキャリアを積む。2003年『味見したい人妻たち』で映画監督デビューし、ピンク大賞新人監督賞を受賞。その後Vシネマ、ピンク映画、劇場用映画など100タイトルを超える作品を監督。16年、17年、18年、19年とピンク大賞において4年連続で作品賞を受賞した。本年は『性の劇薬』『アルプススタンドのはしの方』『花と沼』を公開。

切通 理作 氏

Kiridoshi Risaku

1964年生まれ、東京都出身。文筆家。編集者を経て93年「怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち」で著作デビュー。映画、コミック、音楽、文学、社会問題をクロスオーバーした批評活動を行う。2001年「宮崎駿の〈世界〉」でサントリー学芸賞受賞。著書に「怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影」、「本多猪四郎 無冠の巨匠」、「山田洋次の〈世界〉」、「失恋論」など多数。映画雑誌「キネマ旬報」に95年からピンク映画時評を連載中。17年、映画『青春夜話 amazing place』を監督。19年より中央線阿佐ヶ谷で古書店兼駄菓子屋「ネオ書房」を経営。

佐藤 宏 氏

Sato Hiroshi

1967年生まれ、福島県出身。俳優。主にいまおかしんじ監督作に出演。『かえるのうた』(2006年)、『UNDERWATER LOVE おんなの河童』(11年)、『川下さんは何度もやってくる』(14年)、『あなたを待っています』(16年)、『夫がツチノコに殺されました。』(17年)、『闇金ぐれんたい』(18年)など。

西山 真来 氏

Nishiyama Maki

1984年生まれ、京都府出身。女優。神戸大学在学中に劇団「象、鯨。」を主宰。解散後、木村文洋監督『へばの』(2009年)でデビュー。坂本礼監督『乃梨子の場合』(15年)、堀禎一監督『夏の娘たち ひめごと』(17年)、井樫彩監督『真っ赤な星』(18年)、濱口竜介監督『寝ても覚めても』(18年)、佐藤零郎監督『月夜釜合戦』(19年)、黒沢清監督『スパイの妻』(20年)など多数出演。

平井 珠生 氏

Hirai Tamao

1998年生まれ。兵庫県出身。ピンク・リバティ第4回公演「夕焼かれる」(2018年/演出:山西竜矢)で抜擢され、女優デビュー。その後、野外劇「吾輩は猫である」(19年/演出:ノゾエ征爾)や劇団テレワーク「迷宮クローゼット」(20年/演出:ぶんけい)などに出演。映画では『アルプススタンドのはしの方』で初出演後、『さつきのマドリ』(葛里華監督)で初主演。Youtubeチャンネル「たまちゃんねる」でパーソナリティを務め、さまざまな映画紹介も行うなど多彩に活躍中。

シエロウインドシンフォニー

Cielo Wind Symphony

2016年に神奈川県平塚市にて発足。団体名の「シエロ」はスペイン語で「空」。青空、曇り、雨、星空といったバラエティに富んだ表情を見せるこの空の下に集まった仲間たちが、音楽を通じて空のようにたくさんのことを表現し、音楽を楽しんで頂ける方々と共に成長出来る団体でありたいという思いで活動中。21年4月18日には、神奈川県伊勢原市にある伊勢原市民文化会館で、第4回定期演奏会を開催予定。

プログラム一覧

大島新監督、井手英策氏(慶應大学教授)
ふくだももこ監督(予定)、松本穂香氏、中井圭氏(映画解説者)
いまおかしんじ監督、城定秀夫監督、佐藤宏氏、西山真来氏、切通理作氏(文筆家)
シエロウインドシンフォニー、平井珠生氏
岨手由貴子監督、小川真司プロデューサー
岩井澤健治監督、森直人氏(映画評論家)
岩井俊二監督、斎藤工氏
団地団