第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM

プログラム紹介

【C-3】異形の饗宴‐ベルトラン・マンディコ監督特集 ―日仏映画交流―

11/18[日] ベルブホール

チケット料金

一般
前売:1,200円 / 当日:1,400円
子ども(4歳~小学生)
前売:800円 / 当日:900円

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ホルモン

  • Hormones
  • 2013-2015年/フランス/Ecce Films製作/カラー/51分
  • 監督・脚本=ベルトラン・マンディコ
  • 出演=エリナ・レーヴェンソン、ナタリー・リシャール

作品紹介

『先史時代のキャバレー』、『処女はまだ生きているのか?』、『ホルモンの聖母様』の3本の短編集。

コメント

エロスとタナトスがないまぜの生の根源に迫るような濃密な短編集。性器、肛門、乳首といった性的器官をモチーフに、日常の世界では抑圧された深層心理をひっくり返したかのような面妖なドラマが展開される。デジタル・トリックを用いない「不純な」造形美について、多かれ少なかれルッジェロ・デオダート(『食人族』)やジャン・コクトー、ケネス・アンガー、塚本晋也らの影響を指摘する評論が既にあるが、そこに付け加えるなら過激な芸術家のオットー・ミュールだろうか。スタティックでマテリアルな身体を融解させる、倒錯的なダイナミズムが漲る。(佐)

処女はまだ生きているのか?

  • Y a-t-il une vierge encore vivante?
  • 2015年/9分

ストーリー

ある伝説によると、ジャンヌ=ダルクは火刑で死んではいない。彼女の眼は焼かれ、イギリスの好色男に処女を奪われたのだそうだ。そして彼女はいまだ生存する処女たちを探しに、戦場を彷徨うことを余儀なくされた。

ホルモンの聖母様

  • Notre-Dame des Hormones
  • 2014年/30分

ストーリー

週末にふたりの女優が別荘で舞台の戯曲を練習している。森を散策中、ひとりの女優が不思議なものを見つける。肛門も生殖器官も付いていないこの不思議な生き物は、女たちにとって強烈な欲望の対象となり、ふたりはなんとしてもそれを自分のものにしたいと望む。

先史時代のキャバレー

  • Prehistoric Cabaret
  • 2013年/10分

ストーリー

アイスランドのキャバレーで、女主人が不思議な内視鏡カメラを使って、結腸鏡検査を行っている。本源的存在、欲望の源を探すべく、器官の中へと旅に出る。

アポカリプス・アフター

  • ULTRA PULPE (APOCALYPSE AFTER)
  • 2017年/フランス/Ecce Films製作/カラー/37分
  • 監督・脚本=ベルトラン・マンディコ
  • 撮影=シルヴァン・ヴェルデ
  • 編集=ジョルジュ・クラッグ
  • 音楽=ピエール・デスプラ
  • 出演=ローラ・クレトン、ポーリーヌ・ジャガード、ポーリーヌ・ロラール、エリナ・レーヴェンソン

ストーリー

見捨てられた海辺のリゾート。時代の終焉を描いたファンタジー映画の撮影が終了した。映画撮影のクルーである2人の女性―女優のアポカリプス(黙示録)と監督のジョイ(喜び)の関係は今にも終わろうとしていた。アポカリプスとの最後の親密な時間を過ごすため、年上のジョイは、日没にまつわる5つの物語を朗読する。歳を取りたくない女性たちの物語、5つの空想科学、俗悪、屍姦趣味と詩的表現に関する冒険談――。5つのシーンはファンタジー映画のメイキングを通して、一つの時代の終わりを表現している。

コメント

近未来風の光沢あるコスチュームや派手なメイク、ドラッギーな色彩に彩られたマンディコ監督最新作。エリナ・レーヴェンソンが演じる映画監督「ジョイ・ダマト」は、イタリアで70年代から低予算エログロ映画を量産したカルト映画監督「ジョー・ダマト」へのオマージュである。

徹底した人工的な異空間のなかで、生/死、聖/俗、人間/動物、撮る/撮られるといったさまざまな境界を(劇中の窓ガラスや薄布のように)透明にして両者を転倒させながら、時空間を超越した悪夢的なポエジーが描出されていく。「黙示録の後」におけるSF、エロス、モンスター、ホラーといった諸ジャンルが混然一体となった異世界の寓話的傑作。(佐)

ワイルド・ボーイズ

  • Les Garcons Sauvages 
  • 2017年/フランス/Ecce Films製作/カラー&モノクロ/110分
  • 監督・脚本=ベルトラン・マンディコ
  • 撮影=パスカル・グラネル
  • 編集=ローラ・サンマルク
  • 音楽=ピエール・デスプラ
  • 出演=ヴィマラ・ポンス、ポリーヌ・ロリラール、ディアンヌ・ルクセル、アナエル・スノーク、マチルド・ワルニエ、サム・ルーウィック、エリナ・レーヴェンソン

ストーリー

良家出身の5人の少年が、ある日、解放的な気分に魔が差して、卑劣な罪を犯してしまう。罪を償うため謎の船長に預けられた少年たちは、過酷な航海の旅へと連行される。そこで密かに反乱を企てる5人だが、ある無人島に座礁すると、そこには快楽を与えてくれる幻想的な植物が生い茂り、いつの間にか欲望に溺れていく。すると、少年たちの身体は次第に変異していき、ゆるやかにジェンダーの境界線が溶けていく……。2017年ボルドー国際インディペンデント映画祭長編部門グランプリ受賞。

コメント

マンディコ監督の初長編作品は、これまでの短編の奇抜な色彩とは打って変わって、ゴシックなモノクロ画面で幕を開ける。海辺に立ち上がる炎と煙、水夫たちに囲まれて露になる少年の裸。四元素と性的な要素が混ざり合い、一気に異形の物語世界が立ち上がる。ジェンダーや人間/自然の境界が溶け合う怪奇と官能に彩られた幻惑的な世界観は圧倒的。

少年たちが犯罪やアンモラルな行為を尽くすウィリアム・S.・バロウズの小説「ワイルド・ボーイズ」をタイトルに冠し、ファスビンダーの『ケレル』やケネス・アンガー、若松孝二の作品などの影響を強く感じさせる本作は、少年たちと共にする、現実と超現実が融解し合う美しい幻覚への映画の新たな冒険である。(佐)

ゲスト紹介

ベルトラン・マンディコ 監督

Bertrand Mandico

1971年生まれ。ヨーロッパにあるいくつかの芸術機関に従事し、監督として多くの短編を制作。短編のうち『Boro in the box』『Living still life』はカンヌ国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭に招待されるなど、多くの賞を受賞している。21年間で21本の短編を女優エリナ・レーヴェンソンと共に制作しつつ、2017年『ワイルド・ボーイズ』にて長編デビューを果たす。

  • フィルモグラフィー
  • ・ULTRA PULPE (APOCALYPSE AFTER)(37’ – 2017)『アポカリプス・アフター』
  • ・Les Garçons sauvages (110’ – 2017)『ワイルド・ボーイズ』
  • ・Depressive Cop (12’ – 2016)
  • ・Souvenirs d'un montreur de seins (10'- 2016)
  • ・Y’a-t-il une vierge encore vivante ? (9’ – 2015) 『処女はまだ生きているのか?』
  • ・Notre Dame des Hormones (30', 2014) 『ホルモンの聖母様』
  • ・Prehistoric Cabaret (10', 2013) 『先史時代のキャバレー』
  • ・S... Sa... SAlam... Salammbô (11'- 2012)
  • ・Boro in the box (42', 2011)
  • ・Living still life(17' - 2012)
  • ・Lif Og Daudi Henry Darger (12' - 2011)
  • ・Sa Majesté petites barbes (10' -2010)
  • ・Mie, l'enfant descend du songe (11'- 2009)
  • ・Il dit qu'il est mort ( 18'- 2008)
  • ・Essai 135 ( 5' -2007)
  • ・Tout ce que vous avez vu est vrai ( 5' - 2006)
  • ・Le Cavalier bleu ( 11'- 1998)

エリナ・レーヴェンソン 氏

Elina Lowensohn

1966年生まれ、ルーマニア・ブカレスト出身。主な出演作品は、ハル・ハートリー監督『シンプルメン』(1992年)や『愛・アマチュア』(94年)、『シンドラーのリスト』(93年/スティーヴン・スピルバーグ監督)など。現在公開中の映画『デス・バレット』(2017年)、『エンジェル、見えない恋人』(16年)にも出演している。

五所 純子 氏

Gosho Junko

1979年生まれ。文筆家。映画や文芸を中心に執筆。著書に『スカトロジー・フルーツ』(天然文庫)。「ドラッグ・フェミニズム」(「月刊サイゾー」)、「映画の平行線」(i-D JAPAN Web)など連載中。

関連企画

■交差する視点 – 日仏インディペンデント映画特集 ベルトラン・マンディコ × 鈴木卓爾

  • 日程:2018.11.17(土)14:00~
  • 会場:東京藝術大学(横浜・馬車道校舎)大視聴覚室
  • 上映作品:『ジョギング渡り鳥』(2015)、『ワイルド・ボーイズ』(2017)
  • ★『ワイルド・ボーイズ』上映後、ベルトラン・マンディコ監督、鈴木卓爾監督、俳優のエリナ・レーヴェンソンによるアフタートークを予定しています。(司会:坂本安美/アンスティチュ・フランセ日本映画プログラム主任)

■交差する視点 – 日仏インディペンデント映画特集

  • 開催日程:2018.10.29(月)〜12/9(日)
  • 会場:アンスティチュ・フランセ東京、東京藝術大学(横浜・馬車道校舎)

■広島国際映画祭2018

  • 開催日程:2018.11.23(金・祝)-11.25(日)
  • 会場:NTTクレドホール、広島市映像文化ライブラリー、横川シネマ

プログラム一覧

今泉力哉監督、三宅唱監督
東出昌大氏、金原由佳氏(映画ジャーナリスト)
望月衣塑子氏(東京新聞社会部記者)
大九明子監督、菊地健雄監督、白石裕菜企画プロデューサー、八尾香澄プロデューサー
伊藤沙莉氏、渋川清彦氏、飯塚健監督
高橋隆大氏、長尾理世氏、石丸将吾氏、唐鎌将仁氏、飯野舞耶氏、律子氏(以上出演者)、石川貴雄氏(助監督)
清原惟監督、佐々木敦氏(批評家/HEADZ)、長尾理世氏(『ゾンからのメッセージ』出演)、律子氏(『ゾンからのメッセージ』、『わたしたちの家』出演)
ベルトラン・マンディコ監督、エリナ・レーヴェンソン氏(女優)、五所純子氏(文筆家)
有坂塁氏(移動映画館「キノ・イグルー」代表)
原一男監督
遠藤麻衣子監督、夏目深雪氏(批評家、編集者)
村川透監督
団地団
(大山顕氏、佐藤大氏、速水健朗氏、稲田豊史氏、山内マリコ氏)
細川徹監督、三宅弘城氏
菊地健雄監督、片桐はいり氏
カメ止めチーム
中野ダンキチ氏(サメンテイター)、藤田みさ氏(ラジオパーソナリティ)、中野将樹氏(芸術家)ほか
深川麻衣氏、志田彩良氏
枝優花監督、穂志もえか(保紫 萌香)氏、金原由佳氏(映画ジャーナリスト)