プログラムレポート

役者・樹木希林

11月28日(土)パルテノン多摩 小ホール
  • 10:30-12:06
    神宮希林 わたしの神様
  • 12:30-14:23
    あん
  • 14:35-15:15
    トーク ゲスト:樹木希林氏、阿武野勝彦プロデューサー

第7回TAMA映画賞の最優秀女優賞を受賞された樹木希林さん。授賞式当日はアメリカ宗教学会へ行かれていてご欠席だったのですが、この日にご登壇いただけることになりました。

朝からホールは満席に。2作品ご鑑賞いただいた後、希林さん、阿武野さんがご登壇。「2本観て、疲れたでしょう。私だったら……ヤだなぁ。」と登場されるなり笑いを交えてお客様をねぎらわれつつご挨拶された希林さん。『神宮希林 わたしの神様』の東海テレビプロデューサー・阿武野さんは「本日は(希林さんの)付き人としてやってまいりました」と、同じく笑いをまじえながらご挨拶され、朗らかで和やかな雰囲気の中トークがスタート。

『約束~名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(2013年)から東海テレビ作品にご出演の希林さんが『神宮希林』に出られた理由、『あん』のことも少しお聞きしつつ、今年、希林さんが出演された東海テレビの「戦後70年 樹木希林ドキュメンタリーの旅」という6本のシリーズへ、お話は移っていきました。

「戦争とはよその国とのことだと思っていたけれど」実は自分の周囲との関わりも戦争なのだと、このシリーズに出演されて希林さんはお思いになったようで、「人間とはこういうことかと思いました。私は(このシリーズを)やって得した」とおっしゃっていました。

その後、阿武野さんたちとの旅の中で『あん』の主人公のモデルとなった方のところへ希林さんが急きょ訪問された時の映像を阿武野さんからお借りし、皆様にご覧いただくことに。その元患者の上野さんは、75年前に他県から鹿児島の施設に連れてこられたとのこと。希林さんと上野さんのほのぼのとしたやりとりに会場は笑いに包まれながらも「75年間鹿児島にいるけれど、鹿児島の言葉がわからないんです」という上野さんの言葉には多くの方が心を打たれたようで、観終えてから「上野さんの明るさと哀しさを感じた。上野さんの苦しみがわかるなんておこがましい」と希林さんはおっしゃっていました。

お客様からは「なぜ演じることを職業とされたのですか?」という質問をいただきました。それに対して「行きがかり上だったのよ」とまず笑いをまじえお返事をされた希林さんでしたが、故・森繁久彌さんの物まねをしつつ、実は森繁さんとの出会いが、人間を見る、人間を描く面白さを感じるきっかけだったと話されました。「知らないうちに影響されてたんですね。知らないうちに、出会いをいただいていた。偶然も必然だったのかなぁ」と。役者というのは、人間を映す鏡、自分の身体をもって世の中の人を映し出していくという職業なのだと、お伊勢さんにお参りし、そのご神体が鏡であるということもまじえつつ、「今頃になっていい仕事についたなぁって思います」とおっしゃり、「皺になってたるんで、それで商売になるんですから(笑)。皆さんよく修正されるけれど、役はなくなっちゃうわねぇ」とお客様をまたもや笑わせて下さいました。

トーク後には授賞セレモニーを行いました。受賞コメントで希林さんは「今年は女優さんたちが皆、良い芝居をしていて甲乙つけがたく、こちらを立てればあちらが立たずで、いろいろやりくりしているうちに、私が穴場だったのでは」と最後まで、お客様を笑いで包んで下さった希林さんでした。

なお、映画祭後に発表された希林さんの最新作はこちらです。『海よりもまだ深く』

また、会場でも阿武野さんにご案内いただきましたが、東海テレビのドキュメンタリー作品の『ヤクザと憲法』『ふたりの死刑囚』が年明けから公開中。お二人の今後のご活躍もとても楽しみです。

希林さん、阿武野さん、そしてご来場の皆様、どうもありがとうございました。