11月21日(水)ベルブホール第1部

日本のヌーベルバーグの作家たち―Vol.1―
―吉田喜重・篠田正浩の名を世に知らしめた代表的傑作―

  • チケット料金
  • 当日のみ800円

秋津温泉

1962年/松竹製作/松竹配給/1時間52分
  • 監督・脚本=吉田喜重
  • 原作=藤原審爾
  • 企画=岡田茉莉子
  • 撮影=成島東一郎
  • 音楽=林光

  • 美術=浜田辰雄

  • 出演=岡田茉莉子、長門裕之、日高澄子、殿山泰司、中村雅子
秋津温泉

コメント

 直木賞作家・藤原審爾の岡山県の秋津温泉を舞台にした小説に惚れ込んだ吉田監督の妻でもあり女優の岡田茉莉子が企画だけでなく、衣装と主演を務める作品である。

 1945年終戦間近の秋津温泉に結核で肺を病んでいる1人の作家志望の青年・周作(長門)がやってくる。そこで甲斐甲斐しく看病してくれる17歳の娘・新子(岡田)の姿に生きる勇気を見いだすが、やがて数年たち再び秋津温泉を訪れた周作は、人生に落胆し、新子に「一緒に死んでくれ」と言う。そして、新子は一緒に死ぬ決意をするのだが……。

 みずみずしい秋津の四季、情感あふれる音楽。弾けるような笑顔で饒舌に喋り、感情にまかせて動き回る岡田茉莉子。メロドラマと悲劇の両要素を併せ持った物語は濃厚である。

 男性と女性は互いに非常に短い時間しか純粋に愛せないから、ロマンチックな恋はいつも映画に裏切られてしまう。時間に耐えられない愛が、どのように男性と女性の間にズレを起こすのか。吉田監督独自の恋愛観、女性観もこの作品から感じることができるだろう。1962年キネマ旬報ベストテン 日本映画部門第10位(岸)

心中天網島

1969年/表現社=ATG製作/表現社=ATG配給/1時間48分
  • 監督・脚本=篠田正浩
  • 原作=近松門左衛門
  • 脚本=富岡多恵子、武満徹
  • 撮影=成島東一郎
  • 美術=栗津潔

  • 出演=岩下志麻、中村吉右衛門、左時枝、小松方正、滝田裕介、藤原釜足
心中天網島

コメント

 人形の体や頭が散らばる人形浄瑠璃の楽屋をカメラが捉え、篠田監督が脚本の富岡多恵子氏に、ロケ地について電話をかけている早口の声がかぶさって物語は始まる。妻のおさんと子供がいながら遊女の小春と深いなじみになり、それに愛想をつかし父親がおさんを実家に連れ戻したのをきっかけに、追い詰められた治兵衞は小春と道行きの果てに心中する……言わずと知れた近松門左衛門の原作で特に浄瑠璃台本を基にした作品である。

 おさんと小春は篠田監督の妻でもあり女優の岩下志麻が1人2役で演じている。家庭を守ろうとするおさんと、生きたいと思いながら愛する男を独占するために死へと追い詰められていく小春の気持ちが交錯し、ひとりの女のなかに、おさんと小春の両方の存在があることを感じることができる。

 篠田監督が少年時代に初めて見た歌舞伎は『心中天網島』だそうだ。その後も大学では中世・現代演劇を専攻し、浄瑠璃や歌舞伎に造詣が深い篠田監督ならではのこだわりをそのモダンで広がりのある映像美からも見ることができる。1969年度キネマ旬報ベストテン 日本映画部門第1位。(岸)

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