九州博多の夏、祇園山笠。15歳の六平(光石)は足を怪我した父(小池)に代わって初めて山笠を担いだ。転んで隣に住む憧れの青葉さん(立花)に助けられるサエない場面もあったが、山笠を担いで男になるという博多っ子の伝統を守ったわけだ。
六平は級友の阿佐道雄(小屋町)、黒木真澄(横山)と集っては、女性の神秘について話していた。ある夜、中洲で飲んでいる父に忘れた財布を届け、初めて酒を飲まされる。その帰り道、同じクラスの小柳類子(松本)と会った。
ある日、五中の生徒の万引きを咎めたことから報復を受けた六平は仲間とともに決闘に挑む……。
1976年から1983年まで「漫画アクション」(双葉社)に連載され、第26回小学館漫画賞を受賞した長谷川法世の人気シリーズ初期の同名作の映画化作品。主演3人が公募され、西日本新聞に募集記事が載ったときは大騒ぎだったそうだ。相手役は資生堂CM初代バスボンガールとしてブレイクし、ヒット曲「恋人試験」が話題の松本ちえこ。多数の応募者から主役に抜擢されたのが、当時北九州の高校2年生だった光石研。先生やクラスの友達のものまねをして笑わせてきたという光石少年の演技は素晴らしく、手足のバランスが良く映えが抜群。
本作はDVD化されておらず、VHSも廃盤になっている。映画館でも特集上映の機会でしか観られない。曽根中生監督も今年8月の湯布院映画祭に参加するまで、20数年の間、公の場で語ったことはなかった。
まぶしいエピソードだらけで作品自体がよく見えなくなりそうだが、700年以上の伝統がある博多祇園山笠と中学生の心情を描く本作は、故郷の方には特になつかしく微笑ましいものではないかなと思う。(芹)
50歳になった配送業の宮田淳一(光石)には、浪人中の俊也(森岡)と高校3年生の桃子(吉永)という2人の子どもがいる。妻は39歳で他界した。子どもたちは父親とはほとんど口をきかず、いつも会話はかみ合わない。仕事を終えると毎日のように友人の真田(田口)と居酒屋で酒を酌み交わす宮田だが、ある日、胃に不調を覚え、亡き妻と同じく自分も胃ガンなのだと思い悩む……。
歌って、踊って、走って、泣いて、怒る……。さまざまな表情を観せる俳優・光石研の魅力がたっぷり詰まった33年ぶりの主演作は、ドタバタした展開や絶妙な間合い・演出で、笑いはもちろん、じんわり涙を誘う場面も。
けっして弱音を吐かず、“カッコいい男”であろうとするダンディズム。北関東の地方都市を舞台に、家族と友情、中年男性へのエールがつづられていく。オヤジは周囲から少し浮いてしまう、でも心から家族を想っているのだ。
この極上のヒューマン・コメディを公開初日に映画館で大勢と観たときの一体感を、私は忘れられない。駆けつけた多くの光石ファンの温かさでいっぱいの劇場内は、舞台あいさつで石井裕也監督が「この映画は光石さんあっての映画であり、光石さんのための映画」と語ったとき、大きな拍手に包まれた。(渉)
1961年生まれ、福岡県出身。『博多っ子純情』(78年、曽根中生監督)の主役に抜擢されて俳優デビュー。以後、映画、ドラマ、舞台などで幅広く活躍している。なかでも映画出演は150本以上を数え、日本映画界に欠かせない存在となっている。『EUREKA / ユリイカ』(2000年、青山真治監督)で高崎映画祭最優秀助演男優賞を受賞。本年は、33年ぶりに主演した『あぜ道のダンディ』のほか、『太平洋の奇跡―フォックスと呼ばれた男―』(平山秀幸監督)、『毎日かあさん』(小林聖太郎監督)などに出演。